感情タグBEST3
Posted by ブクログ
どこから感想を書けばいいかわからないくらい強烈な一作だった。アジアを舞台にしたマルケス的マジックリアリズム小説であり、主人公が一度は捨てた故郷に戻る帰郷小説であり、台湾の政治と社会の暗部を描いた社会派小説でもある。今までの人生で、こんな小説は読んだことがない。
この小説では、人間も亡霊も一緒になって自分の人生を語りだす。すると家族の秘密、辺境の村の閉塞性、そして政治のむごさが一つ一つ明かされていく。そんな展開をすんなりと受け入れてしまえるのは、台湾の鬼月、中元節という時期の魔力だろうと思う。
唯一難点を挙げるとすれば、主人公の恋人に関する言及はやや表層的というか、もう少し掘り下げてほしいと思った。「いかにも」な社会的理由が語られるが、若干消化不良だったのは否めない。
Posted by ブクログ
ちょっとこれはヤバいやつを読んでしまったのかもしれない。台湾出身の作者の描く、日本で言えば恐らく昭和後半から現代に至る(と思われる)台湾のとある地方における五女二男の子供とその父親、母親の“家族”とその周囲の人々による数十頁のモノローグが積み重なっていく形式で物語は進んでいく。
まずとにかく誰一人として幸せな人間がいない。そして、家族というどうにもならない存在がそれぞれに秘密を抱えて、積み重なり、次第にその重みに底が抜けて、様々な真実が明らかになっていく。
その余りの重苦しさに、最初の50ページでもう読むのやめようと思ったが、いつの間にかやめられなくなってしまっていた。濃厚すぎる台湾の情景描写と、執拗なまでのディティール描写で当時の時代感が鮮明に浮かび上がり、正直、田舎から出てきて、残してきた家族の重みを知る人々ほど読むのが辛くなるかもしれない。しかし、そこは徐々に物語をシラケさせない絶妙な塩梅の謎解きの面白さをちりばめることで、読み進めやすくなってくる。
個人的にはラストが狙いすぎた感があったので星4つとしたが、小説として体内に残るヤバさとしては文句なしに5つ星だ。
Posted by ブクログ
陳家七姉弟の今。
それぞれにそれぞれの問題を抱え、そこに至る過去は腹をわって語りきれず、互いを羨み、妬み、それでいて実は相手への責任を感じながら、言葉にできない幸せを望む。
家族って切っても切れず、嫌い!と言いながらも手をさしのべあってしまうよな。
ピーピー口喧嘩を始めた姉妹をみて、
「泣かないで」
って言われたって泣いてしまうわこんなの。