平井大橋のレビュー一覧
-
匿名
ネタバレ 無料版購入済み才能と孤高
主人公の綾瀬川次郎は小学5年生の男の子。
運動神経が抜群の彼は今までいろんなスポーツの習い事をしていたがみんな長続きはしなかった。
その理由が彼がずば抜けた存在であるがゆえに他の子から嫉妬されたり絶望の末にスポーツをやめてしまうというとこが起きていたからだった。
経験年数が短い自分が特別なメンバーに選抜されて他の子がそれで泣くという事態をよく目にしてきた彼はもっとスポーツって楽しむものだと思っている節がありテニスも体操も水泳も楽しいものではなかった。
そんな次郎は初心者大歓迎という文字が書いてある硬式の少年野球チームのチラシを見てそこに入りたいと母親に言う。
その後お試しでメンバーたちと話をした次郎は「野球はここにいるみんなが味方だ」という言葉にうれしくなり入団するが……。
才能があると周りがそれを放っておかずにいられないのでその才能が本人の持ち物ではなくなってしまうようなことが多いというケースを思い出した。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ努力を惜しまない天才は、報われない努力家にとって残酷な存在だ。綾瀬川と大和は一応友達らしい。だが、大和が話したいのは本人ではなく「野球が一番上手い人としての綾瀬川」なのかもしれない。才能に恵まれたうえ、研究と練習も惜しまない綾瀬川。大和が一歩進む間に、さらに遠くへ行ってしまう。友人の迫は、センスがないと感じ続けるのが辛くなり、野球を辞めた。大和にとっては自分にも訪れるかもしれない未来だ。それでも練習を続け、ようやくコーチに認められ、出場機会も増えてきた。その時、左手の有鈎骨骨折が判明する。右バッターには引き手だ。しかも将来のスイッチヒッター転向を考え、折れていない右手まで一緒に手術したいという。綾瀬川でなくても引く。だが、怪我で二度も時間を失いたくない大和には切迫した計算でもある。そして綾瀬川は、壊れるまでやる大和に少し憧れる。互いに相手の本質を見抜いているのに、心は交わらない。進路や指導者の思惑も絡み、話は複雑になる。会話は断片的で、幼少期の回想も唐突に挟まる。行間を埋める材料まで足りず、暴投されたボールを読者が拾いに走るようだ。次に会うときこそ、相手の言葉を胸元へ投げ返してほしい。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ綾瀬川の感情のキャップが外れる。
これまで綾瀬川は、自分の才能が周囲を傷つけないよう、常にブレーキを踏み続けてきた。全力で投げない。目立ちすぎない。誰かの居場所を奪わないようにする。しかしその配慮は、結果的に誰の心も救えてはいなかった。
リトルリーグ最終学年。選手たちの関心は勝敗ではなく、いかに高校スカウトの目に留まるかへと向いている。あまりにも眩しい綾瀬川という存在は、周囲の少年たちにとって恒星のようなものだ。その前では、自らが輝けないと感じてしまう。
完投主義というチームの方針が、綾瀬川のために崩されたとき、彼の才能は「すごい力」ではなく「他人の進路に影響を及ぼす力」へと変わる。マウンドで感情のキャップを外した綾瀬川が見せた行動は善意からのものだったが、それはあまりにも一方的で、誤解と軋轢を生んでしまう。
この物語が苦しいのは、誰にも完全に共感できない点にある。綾瀬川にも、チームメイトにも、指導者たちにも寄り添えない。才能は罪なのか。
不安と違和感だけを抱えたまま、リトルリーグ最後の大会へと進んでいく。