赤江瀑作品も全て素晴らしいので、「赤江瀑全集」を収納したいですし、正直どの作品が好きなの?と
聞かれても、迷ってしまって選べません。
赤江作品の中には美しいものがたくさん出て来ます。京都の寺、花の庭、刀、香水、錦鯉、焼き物、歌舞伎、
バレエ、能、祭り、ETC。
そしてそのモノや芸術に対しておびただしい量の情報、解説がなされていて、文章を読んでいるだけで、
総天然色の映像を見ている気分にさせてくれるんです。
この獣林寺妖変に出てくるのは「血天井」です。
関ヶ原の戦の時、伏見城で留守居をしていた鳥居元忠の軍が石田三成の軍に攻め滅ぼされ、落城のさいに
鳥居軍380名以上が自刃。その遺骸は関ヶ原の戦が終結するまで2ヶ月間も城内に放置されていたので、
伏見城の床には血が染み込んで落ちなくなっていたので、供養のため、その床板を剥がして、5つのお寺
に奉納。寺はその床板を天井にして供養。
私は東山の養源院と、鷹峯の源光庵の血天井を見たのですが、本当に手や足の型がくっきりと浮かび上って
います。
物語は獣林寺の血天井の学術調査が行われ、そのルミノール反応の中に、最近の血が混じっていた、と言う
ところから始まり、歌舞伎界で歌舞伎の家の出ではない、カレッジ俳優と呼ばれる主人公がライバルであり
同士でもある歌舞伎役者の失踪について思いを馳せている。
強烈なカリスマ性を持つ女形役者の「魔」に魅入られていく二人。
歌舞伎の世界と言うことで、これまたボーイズラブ・・(笑)
まあ、そんな軽いものではなく「衆道」と言うか怨念の世界。
もちろん主人公たちは美形。そして文章も豪華絢爛。
赤江作品は「美」という「魔」に魅入られて「破滅」していく話が多いですが、ホントに単行本のタイトル
だけでも、
『獣林寺妖変』『ニジンスキーの手』『オイディプスの刃』『罪喰い』美神たちの黄泉』『ポセイドン変幻』
『金環食の影飾り』『鬼恋童』『熱帯雨林の客』正倉院の矢』『蝶の骨』『青帝の鉾』『上空の城』
『野ざらし百鬼行』『マルゴォの杯』『春喪祭』『アポロン達の午餐』『殺し蜜狂い蜜』『アニマルの謝肉祭』 『絃歌恐れ野』『芙蓉の睡り』『禽獣の門』『原生花の森の司』『海贄考』『アンダルシア幻花祭』
『妖精たちの回廊』『舞え舞え断崖』『巨門星 天の部』『鬼会』『風葬歌の調べ』
『海峡 この水の無明真秀ろば』『春泥歌』『八雲が殺した』『十二宮の夜』『遠臣たちの翼』『花酔い』
『荊冠の耀き』『オルフェの水鏡 赤江瀑エッセイ鈔』『舞え舞え断崖』『ガラ』『鬼会』『アルマンの奴隷』 『香草の船』『光堂』『京都小説集 其の壱 風幻』『京都小説集 其の弐 夢跡』『月迷宮』
『ポセイドン変幻』『山陰山陽小説集 飛花』『戯場国の森の眺め』『霧ホテル』『弄月記』
『星踊る綺羅の鳴く川』『虚空のランチ』『日ぐらし御霊門』『狐の剃刀』と、
美しいタイトルばかりで胸が躍ります。