このタイトル(原題は”HOW BIG THINGS GET DONE”でほぼ同じ意味)は内容を正確に表しているんだろうか。より正確には『どのようにしてメガプロジェクトは失敗するか』の方が主眼のような気がした。
膨大な事例に紙幅を割いて(巻末の参考資料ページの厚さにビビる)、本書はいかに世界中の数々のメガプロジェクトが失敗してきたか、その理由を事細かに説明してくれる。ここでいう失敗は、具体的には予算超過・工期遅延・便益過小を指す。あらゆるプロジェクトを研究した結果、なんと予算・工期・便益の3つともをクリアするプロジェクトはたったの0.5%しか無かったらしい。
失敗しないために必要なことは、「ゆっくり考え、すばやく動く」こと。
急いては事を仕損じる、の諺通り、結論や予算の見積もり、リスク予測などを急ぎすぎたがために失敗してしまった数多くの事例が傍証となっている。
そしてこのことは何も国家規模の大プロジェクトに限ったものではなく、住宅リフォームや社内プロジェクトなどの個人レベルのものにも共通する普遍的な法則なようだ。確かに、深く考えずに始めた行動は失敗しがちだ。身に覚えがある。
とはいえビジネスの世界では「走りながら考えろ」「巧遅より拙速」「時は金なり」の考え方が主流だし、「深く考え抜いてから始めろ」は理想的だけど現実には厳しいんじゃないかな、とも思う。だからこれだけ無数のプロジェクトの失敗があるんだろうけど。
我が国からは高速増殖炉もんじゅの事例が紹介されていた。2020TOKYOオリンピックも紹介されるかと思ったが、オリンピックはむしろ失敗するメガプロジェクトとしては定番のものらしく、幸か不幸かモントリオールオリンピックに紹介の座を譲っていた。コスト超過の金メダルはこの大会だったらしい。
終章には「どうすればプロジェクトは成功する“可能性が高くなる”のか」が短くまとめてある。そこに書いてあるのは、そりゃそうだろう、と言いたくなるような拍子抜けなほど普遍的なことばかりだ。畢竟、どんな名著でも手短にまとめてしまうとごくごく一般的なクリシェになってしまうのかもしれない。
まとめからは取りこぼされた枝葉末節にこそ、それぞれの本のエッセンスは詰まっている。