吉田茂のレビュー一覧

  • 回想十年(下)

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     「負けっぷりを立派に」。痛快ではあっても作りもののTVドラマ「半沢直樹」と、この言葉をもとにした現実のドラマ「吉田茂」とでは違うという論評を読み、原典にあたってみました。

     「負けっぷりを立派にするということは、何もかもイエス・マンで通すということではない。また表面だけはイエスといっておいて、帰ってから別の態度をとるという、いわゆる面従腹背などは、私の最も忌むところであった。要は出来るだけ占領政策に協力するにある。しかし時に先方に思い違いがあったり、またわが国情に副(そ)わないようなことがあったりした場合には、出来るだけわが方の事情を解明して、先方の説得に努めたものである。そしてそれでもな

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    2021年07月12日
  • 大磯随想・世界と日本

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    「戦争に負けて外交に勝った歴史がある」吉田は首相を引き受ける覚悟を決めた時こう語ったという。ニューディーラーの牛耳るGHQ民政局が理念先行で日本の実情を顧みない過激な民主化を断行しようとしたのに対し、ウィロビーら参謀部の理解を取り付け、時にマッカーサーとの直談判を通じて軌道修正を図るなど、 敗戦国の首相としては、吉田は実にしたたかに立ち回り、また言うべきを言う指導者であったのは事実であろう。東アジアでの冷戦構造が鮮明になる中で出てきたダレスの再軍備要求に対し、あくまで経済再建を優先し、平和憲法を盾に断固拒否したというのも語り草になっている。本書においても吉田の弁舌が最も冴える箇所である。

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    2023年12月29日
  • 大磯随想・世界と日本

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    戦後12-17年程経った中で吉田茂が語った話。まだ日本に民主主義が根付くのか不明な中、日本人よもっと自信を持てと鼓舞している。この人は共産主義嫌いだったようで、自壊すると言っている。また知識人は共産主義こそ資本主義が昇華した形だと言っていて、そう言う時代の空気が分からないと理解出来ないのだろう。戦後76年も経つと当時がどうだったのか、戦争の記憶もないし、民主主義が当たり前と思って生活しているが、それこそ吉田茂なんかは敗戦後の日本を如何に立て直すかに尽力してくれたのであり、まだ不安定なはずの新しい仕組みを根付かせる苦労も多かったのだろう。外遊に行っても日本を嫌う国も多かった時代。もう少しこの時代

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    2021年11月29日
  • 回想十年(下)

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    下巻は、ドッジライン、朝鮮戦争特需、一兆円予算、三度の行政整理など。読み物として一番面白かった。上記のほかに、教科書に登場する歴史上の人物の思い出話が並んでいるからである。

    「予算閣議で色々な議論をきいていると、全く問題の複雑さと困難さに、どう片付けていいやらと思うときさえある。講和、独立、それは待望に待望を重ねて、やっと実現する。誠に結構なことだが、さて自らの責任と努力で国際社会に乗り出し乗り切っていくということは如何に難しいことであるか。賠償、対外債務の支払、安全保障、治安の確保、こういったことは、独立国として過去を清算し、将来に生きてゆく上に、どうしても考えなくてはならない。一方国内経

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    2021年08月08日
  • 回想十年(上)

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    楠木先生の読書履歴に載っていて、気になったので読んでみた。
    吉田茂の回顧録。現行の日本の基盤は当時つくられたものがほとんどであり、できた経緯などをつくった当人の言葉で振り返るのは価値があるように感じる。
    上巻で興味深かったのは、総司令部について(特にマッカーサー)、新憲法ができるまで、文教改革をめぐって、民主警察の完成まで。

    「東郷君はもとよりのこと、当時私が接した重臣層をはじめ、政治上層部の誰もがこの戦争には賛成していなかった。国民の大多数もまさか戦争になろうとは思っていなかったであろう。しかるにこれらの重臣層の人々は内心戦争に反対しながら、その気持ちをどうもはっきり主張したり、発言したり

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    2021年08月08日
  • 回想十年(中)

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    中巻で興味深かったのは、自衛隊、農地改革、サンフランシスコ会議。
    「私はいつも思うのであるが、軍人が戦争の専門家に偏することは、戦争そのものには或いは強くなるかも知れぬけれど、一般政治や国際外交の常識に欠けるところが生じて、外交を誤り、国を誤ることになる。大東亜戦争などは誠によい例である。こうした考えは、決して私のみの考えではなく、総じて軍人が政治を支配することを防ぐことは、各国とも大きな内政上の問題である。一方軍人自身もその分を弁えて、政治に深入りをしないようにすることが特に肝要であって、それには広い視野と豊かな常識とが必要である。」
    「一体、私は再軍備などを考えること自体が愚の骨頂であり、

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    2021年08月08日