グレイディヘンドリクスのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
様々なホラー/スラッシャー映画への愛情、小ネタに溢れていて、いきなり急ハンドルをきるような展開……読んでいて楽しかった。物語中盤以降の加速っぷりがたまらなかった。
作者の別作品(吸血鬼ハンターたちの読書会)を読んでおり、そして今作。改めて、この作者は痛みや不快なものだとかそういう“嫌な描写”がうまいなと思った(両作品の翻訳者さんたちも!)。読み手が想像できて「うわっ」となってしまうような。
置かれた状況は全く違い、一つとして経験したことはないものの、自分が同性なのもあってか、ファイナルガール達には不思議な共感を覚えた。特にリネット。もがき続けるあの姿は痛々しく、哀れみを感じたりや滑稽に見えたりもするのだけど、とても力強いなと思った。
ホラー映画は好きでよく観ており、元ネタになっている作品は大体観たことがある。これまで「楽しんで」観ていたわけだけれど、今作を読んで(特にp.444)、ホラー映画を楽しむということについてちょっと立ち止まって考えてみる機会が持てた。(こういうことを書いたり言ったりすると真面目すぎとか何か色々言われたりするかもだけど)
ホラー映画における様々な非対称性について。性別、人種、年齢、自身の感覚(現実では嫌だし憎むべき行為なのに、映画は楽しんでしまうというような)。
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Posted by ブクログ
主婦 Housewife(名詞)ー軽薄で役に立たない女性または少女ーオックスフォード英語辞典 小型版 一九七一年
この物語の舞台は、1988年〜1997年のアメリカ南部。主人公で主婦のパトリシアは、格式ばった読書会の参加をやめ、数人ほどの主婦たちの、犯罪実録書やホラー小説などを読む読書会に参加していた。
ある日パトリシアは自宅の庭で、アライグマの死体を屠っていた隣人老婦に片耳を食いちぎられてしまう。
そして謝罪に来たその老婦の大甥であるという男ジェームズを快く家に招き入れてしまう。
しかしジェームズはなんと吸血鬼だったのだ!
そしてそのことを知っているのは、パトリシアを始めとした読書会の主婦たちだけ…
いやジェームズが吸血鬼って書いちゃうなんて重大なネタバレじゃないか!と思われそうだが(実際ジェームズが吸血鬼であると本文で断言されるまでかなりのページ数を要する)、これ本書のあらすじに書かれてるんですよ。
それに、本書を楽しく(?)読み進めるうえで、この程度のネタバレは全然問題ないのである。
(でも以下からはネタバレを多少含むのでご注意ください。)
展開として、気づいた時にはジェームズは3年の月日をかけて地域全体を巻き込んで完全に地域に溶け込み、主人公たちの夫である白人男性たちの信頼を勝ち取ってしまっていた…という状況から、いかにしてジェームズを排除するのかが本題である。
ジェームズは完全に地域に溶け込み切るまでに、既に黒人居住区の子どもたちを多く屠り死なせている。この居住区にはパトリシアの家の家事サポートや義母の介護サポートをしてくれているミセス・グリーンの家族もあり、ミセス・グリーンはパトリシアたちに助けを求めていた。
しかしその時点で、パトリシアたちは黒人の子どもたちを助けることができず、いや、自己保身のために助けることを諦め見捨ててしまった。
今度こそは自分たちの子どもたちを守りたい…!
しかし状況はパトリシアの孤軍奮闘状態。
1人じゃどうしようもない…
どうすれば子どもたちを守れるだろう…?
本書は手に汗握る、(そしてパトリシアの孤軍奮闘ぶりに冷や汗ダラダラ胃がキリキリする)ホラーエンターテイメントでありながら、主婦としての女性の立場、黒人の立場、白人男性の優位的な立場にスポットを当て、弱き者を弱き者として扱い続けてたまるかといった熱いメッセージを持っている。
感想冒頭に引用した「主婦」の言葉の意味は、本書冒頭に書かれているものだ。
また作者は、親たちの物語を書きたかった、自分の母親たちに吸血鬼と闘って欲しかった、と言っている。
そしてこの物語における戦いは、「公正なものではない」、とも。
直接的には吸血鬼と主婦たちの闘いであるが、実際的には優位にある白人男性たちと、地位の低い主婦や黒人たちとの闘いである、と感じた。
物語で、ジェームズの危険性を訴えたパトリシアに対する、夫カーター(職業精神科医)による妻の扱いは侮蔑的なものだった。子どもたちの目の前で母親としての権威を失墜させ、精神病院に入院させママは異常なのだと見せつけた。それでいて自分は理想的な良き父親像を演じ、実際そうなのだと思い込んでいる。
下手するとジェームズよりよっぽど「敵」ではないかと思ってしまった。鼻持ちならないキャラクターである(そしてそれらの行動は現在ではDVと認識されるものだろう)。この物語の時代柄、妻へのこういった扱いが認められていたのだろうが…
またジェームズ自身も見た目は白人男性であり、自分の白人男性としての優位性と、世界で唯一存在する吸血鬼としての自尊心を過大に持ち備え、パトリシアたち主婦をかなり見下した暴言を吐いている。
ホラーエンターテイメントであるが、これらの要素も加わり、かなり読み応えのある作品となっている。
現在日本でも、主婦の立場は弱い。主婦の家の仕事の多さと忙しさを知りもしないで、主婦は気楽でいいなどと言われるのだから憤慨ものである。
本書でも、パトリシアの誰にも(夫にも)助けられず育児家事にと目の回るような忙しさに追われている描写が細かくされている。
それらの努力や愛情が、子どもになかなか伝わらないもどかしさも。
ジェームズと対する時の主婦たちの連帯感と奮闘ぶりも見どころである。彼女たちの誰1人が欠けてもこの展開にはならない。
ぜひたくさんの人に読んでほしい。
また本書にはたくさんの実在するホラー小説や犯罪実録本が登場し、すべてではないがほとんどの章題がそれらの作品のタイトルから付けられている(「マディソン郡の橋」「冷血」「テッド・バンディー「アメリカの模範青年」の血塗られた闇」など)。
参考文献もそれだけ膨大である。
残念ながら、章題に使われた書物は私はどれも読んだことがないので、なぜこの章にこのタイトルが選ばれたのか、といった理由は分からない。
面白そうなものがあれば、いくつか読んでみたいと思う。
最後に、作者の著作は、本作が初邦訳だそうだ。
面白い題材のホラー作品を書く方だと本作を読んで思ったので、ぜひ他の著作も邦訳・出版されてほしいものである。
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Posted by ブクログ
昔のサイコ系スプラッタ映画好きはより楽しめる作品。
主人公が統合失調オチだけはやめてくれ!とハラハラしながら読んだけど、大丈夫だった。
スプラッタ系映画で生き残った人のその後ってどうなるのか確かに考えることはあんまりない、というかシリーズ化されてまた狙われるって事が多い。
間に挟まれた映画の批評がリアル過ぎて現と区別が付かなくなってくるけど全部フィクションです。
というかオマージュだったんですね、最後の解説で元ネタ映画全部見てて笑いました、エド・ゲイン(悪魔のいけにえ)元ネタはなんとなくわかったけどそれ以外は言われてああって感じ。
犯人は予想と大ハズレで、いやまぁ言われてみたらそうかもって感じだけど相方は無理やりすぎる気もする?
シリアルキラー好きってのは日本にも結構いるけど、信者がいて崇拝の対象で…っていうのはフィクションじゃないんでしょうか。
銃社会というかアメリカの犯罪事情があんまりわからないのでその辺がファンタジー。
気になったのは、性的虐待受けた的な匂わせがあるけどそういう描写は無いので、犯人の願望が絵になっただけなのだろうか?
幼少期に何かあったのかそこの所は言及されてないのがちょっとモヤっとしたけど単純に構ってちゃん?
一気読みしたのでもう一度読み返してみたいと思います。 -
Posted by ブクログ
殺人鬼による殺戮事件で最後に1人だけ生き残った女性=ファイナルガールたちを主人公にしたサスペンス小説。
作中のスプラッター映画は現実に起きた事件を基に製作されており、その事件のファイナルガール本人も現実世界で有名になっているという設定。
ただでさえややこしい設定の上に、語り手となる主人公が事件の影響から強迫性障害を発症していて、不安定な感情の地の文をひたすら読まされるため、序盤は小説の世界に入り込むのにちょっと苦労した。けれど世界観を把握してからは主人公のイカれ具合も含めてかなり面白くなってくる。
ファイナルガールの1人が殺されたことから、ファイナルガール全員が狙われていると主人公が"確信"して行動を始めるも、誰も耳を貸してくれない。普通ならモヤモヤする展開だけど、この主人公も本当のことを言ってなかったりするので誰を信用していいのか読者も分からないまま進行するのが良かった。
作中で登場する映画には元ネタがあったりするものの、同じくファイナルガールを題材にした映画『ファイナルガールズ 惨劇のシナリオ』ほどメタネタに満ちた映画オタク向けの作品ではなく、サスペンススリラーとしてしっかり成立していて、ちょっと長かったものの後半は夢中になって読んだ。
主人公のやり過ぎな言動も段々クセになってきて、一つの魅力になってた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ元看護師の主婦パトリシアは隣の家のおばあさんが変になっちゃう姿や義母が大量のネズミに殺されたり明らかにおかしいことが起こっていることに気づく。ジェイムズハリスが男たちをお金で取り込み、おかしさに気づいて警察に連れて行こうとしたら男たちに反故にされたり途中わかっているのにムズムズしてモヤモヤした。何百年も生きてきた相手を倒す方法を色々なドラキュラ本から探してみんなで実行する姿は本当の姿だと思う。そうでもしないと倒せなかった。生半可な方法じゃないところに納得。実際におかしなことが起こっても、見つけた本人が病気かおかしな人と思われるのも本当だと思う。ミセスグリーンやシックスマイルとの生活、パトリシアたちの偏見なども南部の独特の雰囲気を感じた。ジェイムズが今までどんな人生だったのかも気になった。誰かに吸血鬼にされたならその前の人生とか。最後にパトリシアがカーターと離婚して終わったのもスッキリした。最後に題名をもう一度見てネタバレじゃんと思ったが、そこまでの道が長くてすっかり忘れていた。
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Posted by ブクログ
久しぶりに読んだ海外小説だからか乗りきれず、ラスト近くまで微妙な評価だった。ラストで☆3に上がる。
タイトルを見てホラー好きならわかると思うが、ファイナルガール=ホラー映画で最後に生き残る女の子の話だ。正確に言うと元ファイナルガールだった現おばさんたちの話である。彼女たちは殺人鬼を倒した勇者になると同時に救えなかった仲間や恋人への罪悪感に苦しみ、殺人鬼の崇拝者たちからの攻撃に怯え、メディアには有る事無い事書き立てられ、体には文字通り一生癒えない傷が残る。そんな彼女たちは精神科医のキャロル先生のもと、定期的にセラピーに集まる。
その集まりが15年経ち、彼女らの人生も別々の道を進み、もはやセラピーの意義を失い始めていた現在、メンバーの一人エイドリアンが襲われ、命を落とす。ただ一人、これは全員への攻撃の始まりと見なしたリネットだけが声高に避難を呼びかけるが、彼女の行動は空回りし、メンバーからの信頼を失い、孤立していくーー
ファイナルガールそれぞれ、実在のスラッシャーホラーシリーズのヒロインがモデルになっていて、知っているほど面白い。が、そんな私が狂喜乱舞するはずの内容にもかかわらず、なんか乗りきれなかったのだ。それはたぶんヒロインのリネットの性格が今ひとつ掴めないというか、感情移入しづらい女性だったからかもしれない。ただ、リネットが今回のイカれた殺人鬼に下した処断はスラッシャー映画とは違うし、面白いと思った。彼女らが何より望むことは、犠牲者たちの名前より、殺人鬼の名は忘れ去られるべきであること。
それは実に正論で、いかに残虐にやられるかを半ば楽しみに見ている(自分のような)ホラー好きにはズキリと胸を刺す指摘でもあった(少し反省)。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこの小説は凄い、みたいな何かの記事で名前を知りBooklive!で販売されていたので購入しました。
いわゆるホラー映画の主人公たちのその後、つまり命からがら逃げ出したあと主人公たちはどう過ごしているのか、というお話です。
むろん、主人公の名前そのままというわけではありません。
が、主人公たちの生き残るに至った展開の中に散りばめられた、人間の殺害方法であるとかそういったものが、「13日の金曜日」、「エルム街の悪夢」などといった、ホラー映画で知らないものはいないであろう「あ、あの作品がベースか!」ということが分かるように描かれています。
正直な話、PTSDを発症して然るべきですよね。
残忍な殺害方法。両親やきょうだい、恋人や親友やクラスメイトなどを殺されたと言う事実。