風呂本惇子のレビュー一覧

  • キンドレッド

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    現代社会で生きている人々が、何百年か前の社会にタイムスリップしたら、というプロットはありがちなものだ。
    日本でも『戦国自衛隊』や『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ! 戦国大合戦』のように戦国時代に戻るものもあれば、『あの花が咲く丘で君とまた出会えたら』のように戦時中にいってしまったら、なんてものもある。
    どんな展開を見せるか想像してみると面白いが、そこに恐怖はあるだろうか?
    現代に生きる我々がタイムスリップしたとしても、生命に関わるような恐怖にいきなり苛まれることは恐らくないはずだ。

    だが、これが現代に生きる黒人が奴隷制時代のアメリカにタイムスリップしたら、とするとどうだろうか?
    現代

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    2024年07月31日
  • キンドレッド

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    1976年に生きる黒人女性が高祖父の生きる時代にタイムスリップしてしまう。
    その時代は人種差別が〝当たり前〟の時代。
    自らの祖先からの差別に耐え、元の世界に戻れるのか。
    SF作品の枠に収まらない深い含意があちこちに。

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    2024年01月08日
  • キンドレッド

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    「私は最後の帰還の旅で腕を失った。左腕だ。」こんな衝撃的な一文から始まる、タイムスリップ物のSF小説(著者は、ファンタジーだといっています)。

    時は、1976年6月9日のロサンジェルス。新居に引越してきたばかりの、白人を夫に持つ黒人女性。彼女は夫と荷解きをしているとめまいに襲われ、南北戦争のはるか以前、1815年のメリーランド州にタイムスリップしてしまいます。そう、黒人にとって最も生きづらい、過酷な労働や人間の尊厳を踏みにじる人身売買、そして差別と暴虐が当たり前の世界に。

    彼女がその世界に踏み入れてすぐ、河で溺れている白人少年を助けたところ、元の時代にびしょ濡れで泥だらけの姿で戻ってきます

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    2023年12月10日
  • キンドレッド

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    ネタバレ

    “わたし”であるデイナはまだ無名の黒人女性作家。夫のケヴィンは同じ作家で白人。二人は1976年のロサンゼルスに住む若い夫婦。
    しかし、突然デイナは目眩を感じ崩れ堕ちる。そして気がつくと見知らぬところにいた。
    そこは19世紀のメリーランド州。南北戦争前、黒人奴隷を多く抱えたトム・ウェイリンが経営するあ農園ウェイリン・プランテーションだった。しかも、彼女がタイムスリップする理由は、その農園主の息子ルーファスと関係があるらしい
    しかし現代とは違いこの時代のメリーランド州において、黒人は奴隷、すなわち売買する財産、“物”でしかない。しかもトムは黒人奴隷に厳しくあたり、突然現れたデイナにも敵意を抱いてい

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    2022年09月13日
  • キンドレッド

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    黒人女性が奴隷制下の19世紀へタイムスリップ。読んでいて辛くもあったが、その中に入り込み漠然としか分からなかったその当時の空気に触れたような感じがした。多くの人に読んでほしいと思う。

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    2022年02月02日
  • キンドレッド

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    待ち焦がれてた文庫化。
    単行本発売時に読んだけど、薄らとしか覚えてなかったので再読。
    改めて衝撃!生々しく伝わる奴隷制時代の描写。
    歴史的な名著!と再認識。
    バトラーの別の作品の翻訳化に更なる期待。

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    2022年01月19日
  • キンドレッド

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    ネタバレ

    長らく絶版で古書価格が高騰していた本作。河出書房さんのお陰でようやく読むことができた。1976年のロスに白人の夫ケヴィンと住む黒人の主人公デイナが、1800年代初頭の過去へタイムスリップし、自分の祖先であるルーファス少年を救うところから始まる。ルーファスが命の危険に晒されるとデイナが過去へ呼ばれ、逆にデイナが危機を感じると現在へと戻る。これを何度か繰り返し、彼女は黒人奴隷制を身を持って体験することとなる。当時の黒人奴隷制と言えば絶対的なものであったろうが、ルーファスはデイナに単なる黒人としてではなく、特別で複雑な感情を抱いていた。最後まで相容れなかったのは残念だが。隠れた黒人差別が再び表面化し

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    2021年12月24日
  • キンドレッド

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    違う道もあったはずなのに…という気持ちが時代によってことごとく潰されていくの辛かった
    けど読むの止まらない

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    2025年02月24日
  • キンドレッド

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    希望が一瞬、あらわれてみえることがある。手を伸ばすと消えてしまう。

    人のなかには潜在的に「優しさ」が宿っているのではないか。丁寧に教育すれば間違えた道に進まないのではないか。少しの出会いでも種をまくことになり、やがて人生の中で芽を出しその人の生き方を一変させることができるのではないか。どんなに暴虐な人格であっても、愛を与えてやることさえできれば、人間として生きていくことができるのではないか。夫婦という愛で結ばれていればなにごとも分かり合い、分かち合うことができるのではないか……そういった思いが物語に希望を生み出す。

    それらの希望が、物語のなかで、ひとつずつ否定されていく。
    それでも読み進め

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    2024年10月10日
  • キンドレッド

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    1976年に生きる黒人女性が奴隷制度の時代にタイムスリップするSFスリラー

    黒人文学の中ではかなり有名どころで、いろんな作家が影響されたって公表してるからずっと読みたかった

    話しんどすぎて読むのに3週間かかった

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    2024年06月26日
  • キンドレッド

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    19世紀初頭へのタイムスリップを70年代に描いたSFということで、現代を生きるわたしにとっては二重の新鮮さがあった。

    冒頭思わず惹き込まれる設定から続くのは、予想よりはるかに辛くままならない旅路。命を助ける未来の存在なのだから…と甘い期待をしたが、事態は変わらずハードな展開を見せる。人の希望を打ち砕き服従させる方法が読者にも沁み込んでいく。
    一方で、現代に戻ってくるとどこか生の実感を得られず、過去で愛憎入り混じる濃い絆が生まれてしまうのは、まさに戦争体験のように感じられる物語だった。

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    2024年01月03日
  • キンドレッド

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    人が人を買うという、圧倒的に非常識な常識が存在していた時代。その時代に現代より強制タイムスリップ。それも自分は買われる側のリスクを持つ人種として……。

    今も根深く存在する人種差別。どうしたらなくせるのか? それを考えてしまう時点でもうダメなのだろう。いつの日か差別と言う言葉が死語になることを切に願う。

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    2023年01月13日
  • キンドレッド

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    1976年アメリカに生きる黒人女性が、奴隷制が存在していた1819年へとタイムスリップします。それも何度も現代に戻ってきては、いつともわからない瞬間にタイムスリップをくり返します。

    いかに黒人といえど、20世紀後半に生きていれば奴隷制は学習するだけの過去の制度。それを想像を絶するほどの痛みをともなって実体験し、加えて現代に無事に戻れるのかわからないという不安も絶えずおぼえるというのは、SFということがわかっていても読んでいてつらいです。すなわち、主人公のデイナに同情以上の気もちをおぼえることもあるでしょう。

    本書を通じて登場する、白人であり奴隷所有主の息子(のちに主人)であるルーファス。彼

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    2022年04月30日