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謎の声に呼ばれ、奴隷制時代のアメリカ南部へのタイムスリップを繰り返す黒人女性のデイナ。人間の価値を問う、アフリカ系アメリカ人の伝説的作家による名著がついに文庫化。
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Posted by ブクログ
現代社会で生きている人々が、何百年か前の社会にタイムスリップしたら、というプロットはありがちなものだ。 日本でも『戦国自衛隊』や『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ! 戦国大合戦』のように戦国時代に戻るものもあれば、『あの花が咲く丘で君とまた出会えたら』のように戦時中にいってしまったら、なんても...続きを読むのもある。 どんな展開を見せるか想像してみると面白いが、そこに恐怖はあるだろうか? 現代に生きる我々がタイムスリップしたとしても、生命に関わるような恐怖にいきなり苛まれることは恐らくないはずだ。 だが、これが現代に生きる黒人が奴隷制時代のアメリカにタイムスリップしたら、とするとどうだろうか? 現代で自由に生きている黒人が、いきなり奴隷制時代の南部アメリカにいってしまったら、自由に生きるなんて無理だ。いきなりリンチに遭ったり、撃ち殺されてもおかしくない。 そんな危険な社会で主人公の黒人女性デイナはサバイブしていく。 白人に見つかったら、返答を間違えたら、態度を損ねたら、鞭を打たれ、首を括られ晒し者になるかもしれない。 そういう恐ろしくて、息も詰まるような瞬間がいくつもある。 SFとしても、黒人文学としても傑作だった。
1976年に生きる黒人女性が高祖父の生きる時代にタイムスリップしてしまう。 その時代は人種差別が〝当たり前〟の時代。 自らの祖先からの差別に耐え、元の世界に戻れるのか。 SF作品の枠に収まらない深い含意があちこちに。
「私は最後の帰還の旅で腕を失った。左腕だ。」こんな衝撃的な一文から始まる、タイムスリップ物のSF小説(著者は、ファンタジーだといっています)。 時は、1976年6月9日のロサンジェルス。新居に引越してきたばかりの、白人を夫に持つ黒人女性。彼女は夫と荷解きをしているとめまいに襲われ、南北戦争のはるか...続きを読む以前、1815年のメリーランド州にタイムスリップしてしまいます。そう、黒人にとって最も生きづらい、過酷な労働や人間の尊厳を踏みにじる人身売買、そして差別と暴虐が当たり前の世界に。 彼女がその世界に踏み入れてすぐ、河で溺れている白人少年を助けたところ、元の時代にびしょ濡れで泥だらけの姿で戻ってきます。後に、この白人少年の来歴、命の危機と助かったという状況が、何度もタイムスリップする事に関係していることがわかってきます。そのタイムスリップ先の19世紀初頭は、白人ですら本を読めない人が多いのに、20世紀に生きる教育ある女性が行けばどうなるか。しかも、それが黒人であったなら…。周りからの風当たりや当人自身の耐え難い苦痛も、察して余りあります。また、当人の意志では現代に戻ることができないという設定が、絶望感に拍車をかけていて、読んでいてとてもハラハラドキドキします。 この小説、書かれたのが1979年と、随分昔に書かれた小説ですが、まったく古さを感じません。奴隷制や人種差別について、改めて考えるきっかけにもなる、もっと知られていい名作だと思いました。
黒人女性が奴隷制下の19世紀へタイムスリップ。読んでいて辛くもあったが、その中に入り込み漠然としか分からなかったその当時の空気に触れたような感じがした。多くの人に読んでほしいと思う。
待ち焦がれてた文庫化。 単行本発売時に読んだけど、薄らとしか覚えてなかったので再読。 改めて衝撃!生々しく伝わる奴隷制時代の描写。 歴史的な名著!と再認識。 バトラーの別の作品の翻訳化に更なる期待。
違う道もあったはずなのに…という気持ちが時代によってことごとく潰されていくの辛かった けど読むの止まらない
希望が一瞬、あらわれてみえることがある。手を伸ばすと消えてしまう。 人のなかには潜在的に「優しさ」が宿っているのではないか。丁寧に教育すれば間違えた道に進まないのではないか。少しの出会いでも種をまくことになり、やがて人生の中で芽を出しその人の生き方を一変させることができるのではないか。どんなに暴虐...続きを読むな人格であっても、愛を与えてやることさえできれば、人間として生きていくことができるのではないか。夫婦という愛で結ばれていればなにごとも分かり合い、分かち合うことができるのではないか……そういった思いが物語に希望を生み出す。 それらの希望が、物語のなかで、ひとつずつ否定されていく。 それでも読み進めるたびに、また光明を見出したくなってしまう。実際希望のようにみえる幻は確かにそこに実在している。しかしそれは虐げられてきた人が更なる譲歩を強制される形でしか存在を保てない。だから物語は、何度も何度もその希望の幻を否定し続けないといけない……自ら抱いた希望を抱いたそばから。
1976年に生きる黒人女性が奴隷制度の時代にタイムスリップするSFスリラー 黒人文学の中ではかなり有名どころで、いろんな作家が影響されたって公表してるからずっと読みたかった 話しんどすぎて読むのに3週間かかった
19世紀初頭へのタイムスリップを70年代に描いたSFということで、現代を生きるわたしにとっては二重の新鮮さがあった。 冒頭思わず惹き込まれる設定から続くのは、予想よりはるかに辛くままならない旅路。命を助ける未来の存在なのだから…と甘い期待をしたが、事態は変わらずハードな展開を見せる。人の希望を打ち...続きを読む砕き服従させる方法が読者にも沁み込んでいく。 一方で、現代に戻ってくるとどこか生の実感を得られず、過去で愛憎入り混じる濃い絆が生まれてしまうのは、まさに戦争体験のように感じられる物語だった。
人が人を買うという、圧倒的に非常識な常識が存在していた時代。その時代に現代より強制タイムスリップ。それも自分は買われる側のリスクを持つ人種として……。 今も根深く存在する人種差別。どうしたらなくせるのか? それを考えてしまう時点でもうダメなのだろう。いつの日か差別と言う言葉が死語になることを切に願...続きを読むう。
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風呂本惇子
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