バイ(名糖吉馬)×ノンケ(敷島七里)/中学生
少女漫画というカテゴリでこんなにもあけっぴろげに明るくBLを描いた作家がいただろうか。トーマや風木に始まり、幸運男子でさえあんなにも苦悩しているのに。
基本的にこの真崎さんという人の漫画の登場人物は性に奔放である。中でも1・2位を争うのがこの漫画の吉馬であろう。彼は両刀という、たぶん全人類の中で一番進化した動物である。
そんな、女も男もバッチコイな吉馬が本気になったのが男の七里である。当時、吉馬は中3、七里は中1(毛も生えてねーよwというツッコミは不粋である)。
以降「BOYSエステ」にも登場し、諸々ストーリーに絡んでくる二人だが、七里はここで完全にホモになったと見てほぼ間違いない。だって、最初の性体験が吉馬を掘るというものなんだもの。クスクス
七里はそんな自分に危機感を覚え、女の先輩(吉馬の元カノ)と付き合うが、やっぱり吉馬が忘れられないと結局何もせずに別れ、吉馬のところに戻る。実に正しい思考回路である。
で、この漫画にはご都合主義の最たるものがふんだんに使われ、どうこじれても大団円となる。
一つは、吉馬も七里もかなりお金持ちの家の子で、ある程度“世間一般”からは隔離されているということ。
二つ目は、その吉馬の父と七里の父は高校の先輩後輩で、実はその昔、ちょっとイイ仲だったということ…。
そんなこんなで親バレするけども、結構あっさり認めてもらえるという…しかもコミカルに。
そういうドキドキは皆無な漫画なのである。デザートにこんなものが載っていたと考えると少し恐いわけだが、BLと言うよりはやっぱり少女漫画でいいと思う。七里が結構乙女思考だったりするから。
真崎さんの作風でもあるが、「こいつが唯一無二の存在だ」という感覚はあまり得られない。でも最後は、結局二人で仲良く収まるので「良い恋愛漫画でした」で終わることができる。
こんなに「こんなの絶対ねーよw」と清々しく思える作品は他にない。思いっきりどうでもいいけど、なぜか読み返したくなる、そんなお手頃漫画である。今は懐かしき定価390円(税別)。
そういえば、真崎総子という漫画家を知ったのは、「~恋心フィーバー~賭師」という短編がオムニバスに載っていたからである。
その漫画がやけにハイスピードで今まで知らなかった作風で面白かったもので「神奈川ナンパ系ラブストーリー」から作家買いをしていたらこれに出会った。
そしてこれを高校に女友達に貸すために持って行ったら、なぜか男子までも読んでいて、しかもそれが先生に見つかり没収され、ついに自分のだと言い出せず先生に寄贈する形になった。
卒業する時にも「これ誰の~?」と見せられたが、そのときには既に買い直していたりした。
そういう思い出も相まって、いつまでも手放せない作品である。