石原大史のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
かなり読んでいても胸くそが悪い。主題が主題だから仕方ないのだけれど…書いたのはNHKスペシャルを作っている方。そういえばいくつかは見た。
2023年6月30日、東京地裁第712号法廷。大川原化工機の不当逮捕勾留された損害賠償裁判で、警視庁公安部の刑事Xが「捏造」だと証言した。逮捕勾留もそもそも必要ではなかったと認めた。
大川原化工機は従業員約90人が働く中小企業だ。噴霧乾燥機の国内シェア7割を誇る。2020年3月、大川原社長、島田さん、相島さんの3人が不正輸出の容疑で警視庁公安部に逮捕された。1年近く勾留された。相島さんは癌と判明したのに、保釈を許されないまま亡くなった。
この間大川原化工機では警察検察の主張に反論するため実証実験を繰り返して、自社の製品で生物兵器を作れないことを証明。初公判に向けて準備を進めたが、突如勝手に白旗をあげ起訴を取り下げられて事件は幕引きとなった。
警察側が曲解ともいえる結論ありきの捜査資料を作成し、都合の悪い情報を無視した痕跡があった。
1. 警察や検察の法令解釈の違法性
2. 殺菌できるとした事実認定の違法性
3. 捜査にあたった取調べ手法の違法性
内部告発者が2人ほど現れた。第五係長が自らの出世のために事件を捏造した首謀者と目されている。組織内評価の焦りから出発した事件はひくにひけなくなった。
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Posted by ブクログ
ジャーナリズム精神に溢れる本。偏向報道や左翼寄りで批判を受けるNHKにあって、このような本を書ける職員がいることに、まずは脱帽です。最後の文章「本書を、亡き相嶋静夫さんに捧げる。」に触れて、ジーンときました。
本書は、読売新聞の書評を読んですぐに購入して読みました。取調べを担当した警視庁職員の処分は甘いと思わざるを得ません。起訴を決定した東京地検のC女性検事が処分されないのもおかしいです。いずれも、上級国民だからと言っているようなものです。
冤罪が生まれた背景に、経済安全保障の強化があることが分かりました。本事件は、経済安保の取組成果として「警察白書」に紹介までされていたそうです。日本に経済安保の強化を導いたのは、中国の軍備増強があったからであり、この文脈からすると、間接ながら大河原化工機事件は、中国がもたらした冤罪ともいえます。
著者が属しているNHKが本事件をクロ現やETV特集で積極的に取り上げたのは、経済安全保障の弱体化を図りたい中国側の意向がNHKに浸透している、と見立てるのは穿ち過ぎでしょうか?つまり、経済安全保障を強化すると、本事件のような冤罪を産んでしまうから、「冤罪」という国民受けするテーマの番組を流して、経済安保の取締を弱める役割を演じているようにも、捉えることができます?
以下は、残しておきたい本文記述と私の感想です。
○第三章
p.93
「捜査幹部が、自らの出世のために事件を『捏造』した」
→ 大阪地検特捜部に所属していた、前田恒彦元主任検事が郵便不正事件で証拠改竄をしていたのと同じ動機である。同じことは繰り返される。
○ 第四章 告発者たち
読み応えのある第四章。ジャーナリズム精神が表れている。
p.110
「事件が引き起こされた要因として、二つをあげた。
「法廷での証言もあったが係長の欲が第一。自分が出世したいという欲。当初から無理だと何人かは言っていたのに、強引に押し通した。管部から管視になるには実績が必要。係長は、これを欲しがった。そして管理官の組織への過剰な思い入れ。管理官は外事一課が長い。成果を上げ組織を保ちたいという思いが強かった。自分の代で鼈理縮小となれば、先輩達に顔向けできないとかんがえたのではないか」」
○第九章
p.295
「地裁判決後の音察や検察の反省しない姿勢に業を煮やしたことが、資料提供の理由だったということだ。結果として、相嶋静夫さんの命を奪うことになった事件の重みを組線はまだ理解していない、それを正すためならば多少のリスクは厭わないというCの強い意志を感じさせられた。」
→警察組織は軍隊組織と通じるところがあるから、右向け右の雰囲気が強いところだと思っていた。しかし、一般的にそう思われる組織の中にあって、このような正義を果たす人がいるだけでも、逆説的に言えば健全さがあったと言えなくもない。民間会社の組織は千差万別だから、軍隊や警察以上に右向け右の組織もあれば、悪い意味で全くまとまりようがない会社もあるだろう。 -
Posted by ブクログ
これまで読んできたドキュメンタリー書籍の中でも、極めて完成度の高い一冊であると感じた。できるだけ多くの人に読んでほしいと強く思う。
本書は、冤罪が発生する前後という幅広い時間軸の中で、警察、検察、被害者、告発者、協力者といったそれぞれの立場にある人々の行動や思考を、きわめて丁寧に描き出している。さらに、それを報道する側の葛藤や心情も織り込まれており、多角的な視点から事件の全体像が浮かび上がる。その構成力と取材の緻密さこそが、本書の完成度の高さを支えていると言える。
本件を通じて、警察・検察を中心とする組織が冤罪を生んだ要因を徹底的に検証し、具体的な再発防止策を講じることを強く望む。同時に、多くの市民が本件を知り、公権力の在り方について主体的に考える力を深めることが、同様の過ちを繰り返さないための第一歩となるはずである。 -
Posted by ブクログ
この事件については冤罪は完全に確定している。本書内でも書かれているとおり、起訴を取り消しているからだ。しかもその理由は、犯罪の疑いがあるが証拠不十分だとか、犯罪があったが示談となったとか、そのようなちゃちなものではない。犯罪自体が一切存在しなかったからである。では、なぜ大川原化工機のひとびとは度重なる事情聴取を受け、逮捕され、勾留されたのか。
内容を読むと、警察が主導となり、それを検察と経産省が補助してでっち上げた事件としか言いようがない。
それにしても、でっち上げ方がやたら雑である。素人目に見ても、よくこれで押し切れると考えたな、と呆れるレベル。
たとえば、「問題となっている装置が一定の温度まで到達するかどうか(到達したらアウト)」という争点に対して、大川原化工機側が「そこまで温度は上がらない(からセーフ)」と実験検証済みで解答すると、警察側は「でも装置に別途で市販のヒーターを付け加えれば温度は到達するのでは?」と反論していた。ほんとうにこれで通ると思ったのだろうか。
おそらくは、雑な捜査でも自白さえ取ればなんとかなると考えていたのだろう。しかしその目論見も大川原化工機側にはバレバレで、完全に黙秘されてしまう。
ほとんど犯罪に等しい冤罪事件だが、わずかながら希望があるとすれば、警察内部でもこの事件に対する憤りや疑問があったことである。この書籍の深層部分を構成しているのは、主にそのような義憤に駆られた内部告発者たちによるものとなっている。 -
Posted by ブクログ
「日本の警察、こんなことをだましうちみたいなことをするんですか」
信じ難い『でっちあげ』に言葉を失った。警視庁公安部外事一課第五係による大川原工機に対するでっちあげ。なぜそんなことをしたのか、その理由に唖然とした。
1 第五係は、事件摘発の実績が乏しく、このままでは組織が縮小される
2 第五係の幹部が出世のために「目玉」となるような実績を欲していた
「年齢があって、定年も視野に入ってくると、自分がどこまで上がれるのかと、そういったことを意識されたんではないかと思います」(裁判の証人調書)
実績を上げるがために、無理筋をなんとか通そうとする姿は、醜い以外の何物でもない。読んでいて、反吐が出る程であった。あまりに酷いでっちあげ捜査であったため、現場では警部補らがサボタージュによる抵抗まで考えていたが、失敗する。警察内部から、告発状や録音が大川原工機に出されたことは、第五部にも良心のある警察官がいたことを示している。それでも、人間一人がなくなっている。闇が深過ぎる。
第五部幹部(係長)の発言:
「組織だから分かるよね」
「潰すつもりか」
「警視総監まで上がってるんだ」(自分で太鼓叩いて[=今、こんな凄い案件に取り組んでいます]、その結果、引くに引けない状況に陥った)
ルポルタージュとして出色の出来、NHKの底力を認識した。