大久保敏彦のレビュー一覧
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ネタバレ大学生のときにゼミで扱った短編集。どれも文学的に工夫がこらされた作品ばかり。カミュがこの短編すべてを書ききるのに10年以上かかった。というのも異邦人、ペストでの成功後、自分の才能の枯渇を覚えたからだ。タイトル通り追放から王国までを綴ってある。この後ノーベル賞を受賞し、遺作となる「最初の人間」を書いたまま交通事故で他界してしまう。なんとも哲学的で悲しくも美しい作品集。
難解だが歴史や哲学を知っていると読み解くことが出来る。「背教者」は、キリスト教の伝道者が未開の地に赴くが、逆にその地にある宗教に暴力によって改宗させられてしまう。伝道師はすっかり心を奪われ次に訪ねてくる伝道者を叩き潰すように待ち -
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最初の人間というものが、時間的な最初であると同時に、わたしがわたしであるところ、何かがある、永井先生のことばを借りれば、「開闢」というものになるのだと思う。
カミュ自らの自伝的小説といわれるものであるが、それ以上に、反抗的人間、不条理を不条理と知り、それでも生きるこのわたしが一体どこで起こるのか、その瞬間を探しているような感じがする。
開闢は自分でしかないわけだから、それが幼少期や学生時代という時間をたどる思い出すという形式でしかできない。過去と現代、親と子の間を行き来しながら、時間と空間から徐々に離れて何かが生まれる。ことばとは常にこうして思い出されるものである。開闢の神話がカミュから語られ -
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客 が一番すき。
伝わらない善意、それがどこまで行っても善意でありそれもまた、示し合わせの上にあるということ、そして人間はどこまで行っても人間で、その暴力性や理解しがたさも、’人間'という言葉でひとくくりに、理解しえてしまうこと多義性というよりも、その環境下であらゆるかたちに変化?順応?していく生き物としてのうーん、ずる賢さ?狡猾さ?を、それと意識せず体得している それを上から眺める(便宜上この言葉で表現します)箱庭感、というのか、心情がビシビシに伝わってくる劇、お芝居、舞台をみているようだ
涙するまで生きるも観た。アンサーと、願望がないまぜになった映画。わたしはとても好き.
やる -
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ノーベル賞受賞者の、自伝的小説にして遺作。
ジャン・ダニエルいわく「初めてカミュの作品に近づく者から相談を受けたら躊躇なく『最初の人間』を初めに読むよう勧めるだろう。」だそうな。
推敲され尽くされているとはいえない作品ではあったが、一見散漫な物語の各所に、心理状況や情景を見事に描写している部分が多く、引き込まれる。個人的には序盤の、ジャックの父親が戦争で亡くなる場面の描写が最高に好き。
フランス領ではありながらフランス本国ではないアルジェリアに住むフランス人が、フランスの信念をどうイメージしたか、フランスの戦争をどう受け止めたか、という描写を通じ、移民の人々がどう生きたかを想像することができた -
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カミュ!
カミュは僕のヒーロー
シーシュポスの神話が僕の根っこにはさまって未だに抜けてない。「最も重要な哲学的問いは自殺についてだ、つまり、生きるべきかそうでないか、それ以外の問いは全部、その後に問う問題だ、と。そして、生の不条理へ唯一抗う方法は、死ではなく、不条理から目を逸らさず離さず生きること」と!
サルトルとの論争だって僕はカミュの側にたつ
正義のための暴力とやらには抗うんだと。
そういえばここは、ルネ・ジラールとも似てる。暴力の反復から逸脱するために死ぬことを恐れるな、と。キリストは罪を贖ってはりつけられたんではなく、まさにその暴力の反復を止めるために暴力を一身に背負ってはりつけられた -
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ネタバレ○十年ぶりのカミュ作品。まさかの新刊行……昨年じゃん、映画公開もされてたのね。全然気づかなかったわ。
うん、まぁ、未完も蜜柑、幼少年時代しか描かれていないも同然だものね、このあとの展開が本題だものね、どうやらきびしい内容っぽい……もんね。そんななか、叔父さんとのシーンが微笑ましくてとてもいい。
小説そのものより、作家カミュがどんなふうに物語を紡いでいくのか、その過程が分るところが興味深い。思ったより行き当たりばったり!?
これまで、著者の生い立ちは気にも留めていなかったが(笑)、『異邦人』をはじめ、カミュ作品にフランスらしからぬ暑さと砂埃がつねに漂っている理由がようやく理解できた。