リュドミラ・ウリツカヤのレビュー一覧

  • 緑の天幕

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    ネタバレ

    一貫して非常に面白い小説でした。
    文学や音楽、絵画が多数引用され、文化的な豊かさを感じました。
    シェンゲリ先生が、”人間がどのような通過儀礼を持ってして文化的で道徳的な成熟した人間になるのか”と考察しているところは私も興味あるテーマだったので、カーチャとの結婚後のシェンゲリ先生があまり登場せず語られることがなかったのは少し残念でした。
    それでも登場人物の一人一人が政治的な正しさや自身の幸福を追求している姿が鮮やかで、この本を手に取ったのは偶然でしたが、読むことができて本当に良かったです。

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    2023年05月05日
  • 緑の天幕

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    大作でした.
1953年のスターリンの死から1996年までが舞台であるが,1996年は完全に後日談であり,ほぼ全編にわたってソ連におけるフルシチョフ&ブレジネフ時代の抑圧された社会と,それに抗う人々が描かれている.
表紙には「幼なじみの3人の少年と,そこに同世代の3人の女性が交錯し,」とあるのだが,主人公たちは3人の少年たちで,彼らを軸に市井の人々(とはいっても,KGBの監視下にあるような,反体制派知識人が多いのだが)の物語が綴られる.
3人が成長して以降は時系列もバラバラになり,また,登場人物も多いので,何度も以前の章に戻って確認をしながら読み進める羽目になりました.人物一覧や相関図を作りな

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    2022年07月17日
  • 緑の天幕

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    『「死んだのよ!何寝てるの、このバカ!起きてよ!スターリンが死んだのよ!」「発表があったのか?」父は前髪が額に貼りついた大きな頭を起こした。「病気だって言ってた。でも死んだんだよ、絶対そうよ、死んだのさ!私の勘がそう言うんだよ!」それからまた訳のわからない叫び声が続き、その合間に芝居じみた問いかけが差し挟まれるのだった。「ああ、何てこと!一体これからどうなるの?私たちみんなどうなっちまうの?どうなるのさ?」父は軽く顔をしかめて乱暴に言い放った。「何叫んでるんだ、おまえバカじゃないのか?これ以上悪くなんかなりようがないだろ!」』―『プロローグ』

    これまで読んだリュドミラ・ウリツカヤの「ソーネチ

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    2022年05月16日
  • 緑の天幕

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    ネタバレ

    「おまえバカじゃないのか?これ以上悪くなんかなりようがないだろ!」(P9)

    1953年スターリンの死から始まって、1996年1月28日までの人間模様が描かれる。

    主要な登場人物は3人の男子、イリヤ、サーシャ、ミーハ。彼らは良き先生に出会い成長していく。彼らを軸に蜘蛛の巣のように張り巡らされた人間関係が描かれる。物語は時計の針が行きつ戻りつ、閉じられた物語に違う扉が取り付けられまた開かれる。彼らの若さゆえの情熱から生じる軽率な行動は希望と絶望をもたらす。

    誰がどうなるのか、というより「この国は、歴史は、どうなってしまうのだろうか?」という、時代のうねりを感じつつ読むことができました。

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    2022年03月30日
  • 緑の天幕

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    イリヤ、サーニャ、ミーハ3人の少年の生い立ち、成長を中心とした物語、その1人イリヤと学友オーリャの書き表しが多くを占めるのは、イリヤの個性が突出してソ連という時代背景から波乱万丈という生涯が輝きを放ち著者に最も訴えたからだろうか。
    3人が兵役に適性を欠いた事が彼らにとって幸運だった。
    3人とも家族環境やシェンゲリ先生を中心としたリュルスの活動で思春期の彼らの思想や理念、哲学が育まれ、自分に正直に生きた人生だったと思う。
    登場人物が多く関係をつかむのが難しかった。

    あの強権的、独裁国家の共産国ソ連という国で、そこには思想や言論、見聞、読書、広報、文化等に制限された困難な状況において、この小説は

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    2022年02月05日
  • 緑の天幕

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    ソ連からロシアへ。人も時間も目まぐるしく入れ替わり語られる壮大なサーガ。

    小さな町々、そこでは真実を教えてもらえない。
    いや、真実など必要あるまい?どのみちそれは昨日のことなのだから•••

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    2024年09月25日
  • 緑の天幕

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    ネタバレ

    辞書みたいに厚い本だった。
    GWの課題にした。

    3にんの幼馴染と3にんの女性。
    ソヴィエトからロシアへ。
    時間の流れとともに物語が進行していく。

    一生ってわけではなかった。
    オーリャとイリヤが中心だったような。
    非合法文書に,関わるとはどういうことだったのか。
    反体制派の本を今は出版してもいい時代になったのか。
    先生の,影響で,子供たちが文学を志って、すこしいいな、とおもった。ミーハは、悲しい結果になった。間違った本。作者とナボコフも話題でてきたー。

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    2022年05月08日
  • 緑の天幕

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    スターリンの死から始まり、ソ連崩壊後の90年代まで、毒舌で行動的なイリヤ、音楽的才能に恵まれたサーニャ、読書好きで赤毛のユダヤ系ロシア人 ミーハの3人の少年と彼らを取り巻くたくさんの人たち、ソ連という国のシステムに取り込まれ、ある人は抗い、ある人は心が折れてしまう、そういう群像劇を、実在した人物や事件を交えながら描く。
    21年末だったか、22年年初だったか書店に平積みされていた本書の表紙が気に入って、所謂“ジャケ買い”した。しかし、読み始めるにはソ連の歴史について少しは勉強が必要では?とソ連歴史関係の本を読んでから取り組んだが、政治史だけではダメで、文学史の知識もあった方が良かったかも。
    だが

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    2022年10月09日
  • 緑の天幕

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    ソ連70年。
    そこに暮らした市井の人々が織りなすタペストリー。

    美しい少年時代から、苦悩をはらむ青年時代を経て、
    重苦しい抑圧に怯え抗う大人たちへ。

    ロシアの広大さ、深さ、そして長い冬がまるで目の前にあるようなぶ厚い700ページ。
    人物関係図を乗せなかった新潮社は、きっと「悔しかったら自分で作れ!」「2度読め!」って言ってる。

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    2022年01月18日