キース・トーマスのレビュー一覧
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反転した表紙・背表紙に一瞬、我が目を疑う。あれ……不良品??ワクワクして即座に読む決意をした竹書房の逸品。
裏表紙を読むとどうやらSFらしい。竹書房さんのSFか、どんなんだろう?手にとるとすぐに特殊な組み方をした小説だとわかる。インタビューや手記、会議録や機密記録など、何かの事件を扱ったノンフィクション風に構成されているのだ。
内容としては、ファーストコンタクト+パンデミック+オカルト(UFO&陰謀論)をミステリーを感じさせる構造でミックスした感じ、というところ。古くからあるSFや最近のテクノロジー・オカルト情報などから多様な要素を盛り込んでおり、驚天動地のようなパンチのある展開は -
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これはもっと話題になっていいSF…!
背表紙まで鏡文字になっている凝った装丁や、本中本として展開される「ノンフィクション」の作り、各ページみっちみちの注釈…本の技巧的なところにワクワクして買ったのだけど、中身もとても面白かった!
深宇宙から届いた人工的な「パルス」、見えないはずのものが見える人々が同時多発した「上昇」とは何か?その目的は?というSFミステリはもとより、それを巡るアメリカ政府や組織の政治劇、宇宙の中でヒトはどう生きるのかというヒューマンドラマ。
インタビューと会議録の再編集によるドキュメンタリー手法が、事件をめぐるいろいろな面を無理なく展開して、テンポよくぐいぐい読ませる。
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Posted by ブクログ
この手の本、大好き。少しずれるかもしれないが、テッド・チャンの『地獄とは神の不在なり』とか、今この現実に何か1つ価値観をぐるりと変えてしまう出来事があったとして、その様子をドキュメンタリーチックに伝えるSF、モキュメンタリーの類。
なんでしょうね。めちゃくちゃドラマチック、というわけでも実はないのだが、しかし世界に起こる災厄、災害の類いというのは基本的にどれもそうで。自分が生きてきた中でも、あるいはこの2021年現在においても、大規模な災厄というものを経験してきていて、それにより価値観が揺さぶられたりはしてきたわけだが、じゃあその中で誰がヒーローだったのか、誰が悪かったのかみたいなわかりやす -
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先週紹介した「いずれすべては海の中に」と同様、竹書房のSFシリーズ。
竹書房、おしゃれにしたいのはわかるけど表紙を鏡文字にするのはどうなのよと思いつつ、パラパラとめくってみたら面白そうだったので購入。
先日、SFにはいろんなサブジャンルがあるって言ったけど、その中でも地球外知的生命との出会いを主題にした「ファーストコンタクトもの」というものが存在する。古いモノではアーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」とか、映画だと「未知との遭遇」とか。
この作品も、ファーストコンタクトものなのだけれども、ただ、異星人との出会いはない。深宇宙からのパルス信号を、タイトルにもあるダリア・ミッチェル博士が観測す -
Posted by ブクログ
小説というのは語られる内容以上に、語り口、どのように語られるかが大事だったりするのだが、これはまさに語り方の勝利。モキュメンタリーの手法はホラー映画ではおなじみで、小説でもそこまで珍しいわけではない。例えば、長江俊和氏の「出版禁止」とか、同時期に早川から出た「異常論文」も、基本はこれのヴァリエーションといえるだろう。けれども、それらの多くがどこかで偽ドキュメンタリーの枠からはみ出すのに対して、本作は極めて禁欲的。無数の脚注もそれらしいが、巻末の、偽の謝辞や架空の本をズラズラ並べた参考文献リストには、それだけで笑ってしまう。忘れてはいけないのは、侵略なのか贈り物なのかも解らない、異星人からのメッ
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Posted by ブクログ
ネタバレ全編にわたって、会話の書きおこしとインタビュー的な文体が続いており、大変読みやすかった。
主人公のダリア・ミッチェル博士が偶然宇宙からのパルスを発見し、パルスのDNA再編成機能によって人々が「上昇」し、世界が崩壊するという感じの話。
脱落も含めて上昇したのは世界人口の約1/3とのことで、残った2/3の人々は、結局各々の人生を続けるしかない。
そういう面では、インフラの復旧すら進まない世界で、動植物を育てたり創作活動をしたりすることに娯楽を見出しつつ生きることのできる人間の適応力は凄まじいなと思える作品だった。
このご時世、どうしてもコロナ渦を連想してしまうけれど、なんだかんだで混乱しつつも