ジェレミー・ブレーデンのレビュー一覧
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ネタバレ「2018年問題」と言われた18歳人口の減少の中、廃校となった私立大学は予想に反して少ない。この謎を解明するのが、本書である。
私立大学が生き残りを掛けて採った方策には以下のものが挙げられる。
・規模縮小
・提供するコースの調整(改組・名称変更)
・高校卒業生市場の掘り下げ
・中等教育機関を運営する学校法人と大学を有する学校法人との間の「垂直」の戦略的統合
注目すべき点は、70-80年代の入学生減少期に米英の大学が採った以下の方策とは異なることだ。
・社会人学生や遠隔学習者(パートタイム学生)の確保
・海外からの留学生の確保
・研究費補増やすための産業界とのパートナーシップ
日本では、90 -
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めちゃくちゃ面白かった。久しぶりに時間を忘れて一気読みして、次の予定に遅れそう。少子化によって減少すると考えられた日本の私立大学の多くが生き残っている要因として、同族経営の重要性が見過ごされてきた点を指摘、最終的には優れた日本社会論になっている。
・最近の学生は真面目という言説を目にするが(少なくとも本書が扱う某私大では)定員維持のため大学が真面目に教え始めた方が先
・前近代的な世襲システムがいまだに持続する要因を検討すべき
・私大の三類型(思想背景を持つ結社型、宗教系が多いスポンサー型、起業家型)は実感に沿う
最後駆け足で読んでしまったこともあると思うが、n=1の話を最終的には日本のイエの -
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外国からみた私立大学の経営に関する本。元々は英語書籍で、family-tuned private universitiesというタイトル。
同族経営、というくくりは、日本人にとっては聖域じみていて触れられてこなかった領域に切り込んでいる。
本著で同族経営によるレジリエンス(サバイバビリティ)に切り込むのは、後半から。前半はMGUという仮名の大学を例示して、日本の私立大学の典型例をリアルに書く。その中であの手この手で大学を存続させる施策やトレンドに触れる。
自分自身はこういう場面に直接入っていく機会はなかったが、営利企業らしいしたたかさと、同族経営っぽい存続への想いなど、こう顕在化するのか -
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事実誤認あり。
P.158 学習指導要領の指定内の語彙数で英語の入試が作られていると正しく指摘しているが、本文で挙げられている例はこれにそぐわない。
また脚注26に、「『ジーニアス英和辞典』に収録されている英単語は五段階の難易度に分かれているが、入学試験ではその中で最も優しい三段階に含まれる一万三二〇〇語だけを使うことになっていた。」とある。
しかし、学習指導要領が指定する学習すべき語彙数は最大で約5000語であり、この著者たちの調査期間では、これよりも少ない語彙数だったはずで、上記の記述は事実誤認。『ジーニアス英和辞典』の一・二段階の語彙を使って入試問題は作られている。現に、『ジーニア -
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少子化で入試レベルが低い私立大学は軒並み潰れると思われていたが、案外現在も存続している。その理由を分析し、大学以外に様々な学校を併せ持つ同族経営が大学存続の一つの鍵だったと分析されている。なるほど、意外に面白い。
本書は、外国人によって英語で発表されたものを日本語に翻訳されたもののようで、その意味では、日本人による日本国内向けの内容とは視点も異なっている。そもそも大学を運営する学校法人がどのような構成になっているかということは、あまり公になっていないし、学校のウェブサイトにも詳しく載っていない。学術的な分析、国際比較の部分に比べて、メイケイ学院大学(仮称)の個別具体的なエピソードが面白い。