児玉真美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
著者の主張については余すところなく書かれていて、内容によっては納得できる部分もありました。
特定の議論について、著者の主張はわかる一方で反対意見の部分が薄く、バランスのとれた書籍ではないと思います。
理想論もわかるのですが現実との折衷をどうするかということに目を向けられていないようです。
安楽死を導入しているいわゆる安楽死先進国は成功しているといい難いという主張も、セーフティーネットとして機能している部分には触れられていません。
功利主義的な話になりますが、救われる命側の尊さには触れられていません。
著者の言う通り、賛成反対の二元論で語れない問いであり、
考えたことのない問題を考えるきっかけにはなりましたので、楽しめました。 -
Posted by ブクログ
本書で使われる語「すべり坂」。「生命倫理学の議論で使われる喩えで、ある方向に足を踏み出すと、そこは足元がすべりやすい坂道になっていて、一歩足をすべらせたら最後どこまでも歯止めなく転がり落ちていくイメージ」(p.57)とのこと。私は(業界にとって、権力者にとって)「易きに流れる」という言い換えで捉えた。安楽死に限らず、何事も、これまでの岩盤規制をちょっと緩和すれば、(業界にとって、権力者にとって)楽な方へ楽な方へと、拡大解釈されたり、恣意的な運用がされたり、(最初の一件が先例となって)更なる緩和が容易になったりする。
(本書には書いていない、私の考えとして)安楽死は単なる合法化でなくて、新たな規制化として行われるべきだと思う。著者はきっと否定的立場なのだが、私は、安楽死・尊厳死などに限らず、「自殺幇助」それ自体を合法化するとともに、これを専門職の仕事とすればよいと思う。人が最後まで“生きる”ことを目的とする「医療」「介護」とは分け、これらとの兼業や協業を認めない独立した職業として、その業法やガイドライン(公正な手続き、必要な国家資格や免許、職業倫理などなど)、業界団体といったものを整備していくのがよいのではないか。 -
Posted by ブクログ
もともと安楽死賛成派とまでは行きませんが、病気で自我を失うくらい辛い最期を迎えるなら安楽死も悪くないのではないかと考えており、本書を手に取りました。
第一章
・オランダでの安楽死者数 2022年8720人(総死者数の5.1%)
・対象者が終末期の人から認知症患者、精神発達知的障害者や精神的苦痛のみを理由にした安楽死へ拡大
・終末期の人の緩和を尽くしても耐え難い痛み苦しみがある場合の最後の例外的な救済手段から日常的な終末期医療のひとつの選択肢として合法化
・医療や福祉が届かない弱者を社会から排除する安直で安価な問題解決策となる懸念
第二章
・安楽死はひどい苦痛を回避するための最後の手段から、ひどい人生を回避するための方法となってしまった
・合法化の際に定められた法的要件が時間経過の中で少しずつ緩和されていくすべり坂が各国で起こっている
・安楽死が緩和ケアと混同されて些末化される
・子どもへの安楽死の拡大 護るべき対象から死なせてあげるべき対象へ
・安楽死後臓器提供
第三章
無益な治療
救命可能かどうかからQOLが低すぎて生きるに値しない状態かどうか
ここまですごく勉強になりましたが、第四章以降、筆者の重度障害者の娘の介護経験からくる感情的な医療従事者への不満が多く、読むのが少し苦痛でした。
一旦容認すると坂道を滑り落ちるように対象者が広がり、社会や家族からの見えない圧力で安楽死を選ぶことはもちろんあり得るし、臓器提供の問題まで関わってくると、自分のためではなく誰かの利益のための安楽死とならないようにする法整備というのが難しいだろうと感じました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ安楽死について、あまり知らなかったので、とりあえず読んでみた。
やはり知らない事、勘違いしていた事が沢山あって、勉強になった。
「すべり坂」怖い背筋がヒヤッとする。
意識してみておかないおかないといけない。
「大きな絵」「小さな物語」の例えは、わかりやすくて良かった。
その二つの視点は確かに必要と思う。
小さな物語視点で語られる、障害者の親としての内容について。
医療、介護、人手もお金も足りてないのは周知の事実。
これは政治の問題。
現在の現場の医療従事者に、そこまで求められても、正直厳しいのでは?と思う部分もあり。
医療従事者、介護員にも、著者言うところの「生活」があって、一人一人のニーズに応えられる体力は、現時点ではあまりないんじゃないかな、、、
もちろん寄り添うことができたら理想だし、本来そうすべきなんだろう。
皆そういう医療や介護をしたいと思ってると思う。
実践している人も組織もあるはず。
ただ現実的にすごく難しいんだろうな、、、とも思う。
とにかく、余裕がないんだよね、みんな。
どこもかしこもギリギリで回してる感覚があるよ。
世界がどんどん余裕がなくなってる気がする。
難しいね。 -
Posted by ブクログ
安楽死が実際に合法化されている国では、年々それを選ぶ人が増えているという。
安楽死が日常的な選択肢になってしまう未来を想像すると少し怖い。
あと、無益な治療論のところでは、その人の存在を価値で判断しているようで、やっぱりどことなく恐怖を感じる。
本の中で紹介されていた、PLAN75という映画も見てみようと思う。
【言葉について】
「安楽死」医師が薬物を注射して患者を死なせること
「尊厳死」それをやらなければ死に至ることが予想される治療や措置を、そうと知ったうえで差し控える
尊厳死は今の日本でも行われている。
・VSED(自発的飲食停止) 自分の意志で飲食を絶って死を選ぶこと。
・サバイバー症候群 安楽死した人の家族が抱くことが多い。死が人為的に引き起こされるとグリーフのプロセスがずっと困難なものになる。
【印象に残ったところメモ】
・安楽死が患者権利としてとらえられ、転じて医師の義務とみなされつつある。
・安楽死は当初、終末期の人に緩和を尽くしてもなお耐え難い痛みや苦しみがある場合の、最後の例外的な救済手段だったが、日常的な終末期医療のひとつの選択肢となりつつある。
・安楽死を望む人は、生きるより死ぬ方が良いというわけではなく、この状況下で生きているより死んだ方が良いと言っている。
・死にたいほど苦しいと訴える人に周囲の専門家が考えるべきは、なぜこの人は死にたいほど苦しんでいるのか、その状況を変える方法はあるのか。安易に安楽死という問題解決策に向かっていいのだろうか。
・無益な治療論 病院側の判断で治療の継続を拒否できる。
アメリカの法律では、対象者は「終末期あるいは不可逆な患者」とされる
不可逆とは、①治療できる可能性はあるが治癒することも取り除くこともできない
②自分のことを自分でできない、決められない
③汎用される治療基準に即して提供される生命維持治療なしには死を免れない
・「健康寿命」の違和感
障害がある、介護を必要とする状態を「健康ではない」とし、「価値がない」と刷り込まれているようだ。そして、そのような状態になっていることを自己責任のように見せる。
・治療が無益、から、患者が無益
その患者にかけるコストをほかの人にまわせば、もっと多くの人が助かる。
・家族は蓄積する疲労から、意識的にも無意識にも、安楽死が合法な選択肢として提示されれば、解決策として歓迎するかもしれない。
・安楽死について、賛成か反対かを定めてしまう前に、まだこの問題について知るべきことがたくさんある。 -
Posted by ブクログ
春に気になって購入してからちまちま読んでた。実用書系は苦手なのでなかなか進まない_(┐「ε:)_
先に述べると、私は読書前も後も安楽死賛成派である。
今年、義父と祖父を亡くしたが、どちらも尊厳死であった。それでも亡くなる数日前は辛そうであった。
昨年亡くなった祖母は、「介護される」という現実が受け入れられず、自ら命を絶った。生前は「デイサービスに行くようになったら終わり」と語っており、有言実行されてしまった。
だから、安楽死という選択肢があっても良いと考える。
さて、この本を読むのに3ヶ月くらい時間がかかった。
この間に、末期ガン患者が幼い子どもを残してスイスに自殺ツーリズムに行ったニュースが話題になったり、社会保障負担額が増えたことで胃瘻による延命処置に疑問が呈されたり、カプセル式安楽死マシンが登場したりした。
カプセル式安楽死マシンのニュースに対して、SNSでの反応は好意的であった。
私はその状況を見て「今この国で安楽死導入の検討は危険」と感じた。
………え? 賛成派ですよ?
私は、自分が歳をとったら安楽死を選択できる世界であって欲しいし、今でも望む人がいるならやってもいいと思う。
でも今はダメ。
「すべり坂」どころじゃねぇわ。ほぼ垂直ですわ。
少子高齢化、社会保障制度の限界、労働者人口の減少により、安楽死というのはそれらの解決策の1つであることは確かである。
本書は、著者が「障害児の親」の立場として安楽死に反対する色が強いものの、それらの問題解決のために安楽死を導入するか否かの議論を始めても良いのかどうか?考える材料にはなると思う。