ギリシャ神話や伝説、『イリアス』と『オデュッセイア』を
含む叙事詩環での記述、あるいは断片で伝えられた
トロイア戦争は、実際にあった戦争がもとになったものなのか?
叙事詩環の内容、解読された粘土板の文書、更に発掘された
考古学的発見を精査し、検証してゆく。
・序論
第I部 トロイア戦争 第II部 文字による証拠を精査する
第III部 考古学的証拠を精査する
・エピローグ
用語集、さらなる理解のために――解説にかえて、
訳者あとがき、図版一覧、参考文献、引用出典、索引有り。
紀元前1300年期の終わり頃にあったと予想される、トロイア戦争。
元になった戦争から約500年後の紀元前8世紀に、
初期の叙事詩が書かれていたらしい。ではホメロスとは?
「イリアス」の記述や描写と実際の出土物との矛盾。
戦争の描写には青銅器時代と鉄器時代が混在している。
解読された粘土板の文書ではどうか?
ヒッタイト文書に記されたウィルサ(トロイア)の4つの戦争。
アッヒヤワ(ミュケナイ)人とウィルサ(トロイア)、
ヒッタイトとの関係。アラクサンドゥはパリス?
だが文字で記した証拠はあれど、決定的な考古学的証拠が無い。
そして発掘された考古学的発見では?
ヒサルルックの丘。複数の層の遺構が重なる地での、
シュリーマンから現在に至るまでの発掘と発見のあらまし。
地震や大火災、破壊の痕跡はある。青銅の矢じりや骸骨が残る
層もある。ミュケナイの青銅器や土器も出土する。
が、動かぬ証拠は出てこない。
「B.C.1177 古代グローバル文明の崩壊」に続いての読書。
今回も推測と“かもしれない”で終始しているが、
トロイア戦争に焦点を絞っているため、分かり易いし、
面白いし、興味深く読めました。シュリーマン、ヤバいしw
遥か古代の出来事が実際にあったかを探り、検証するのは
難しいけれども、ヒッタイトの粘土板の文書は現在でも
出土されて解読が続けられているし、
考古学では、2000年代の進化した発掘技術や磁気探知機、
放射性炭素調査を使用しての発掘調査も、希望になります。
また、遥か古代の叙事詩であれども、現代まで伝えられ、
多くの文学や美術に影響を与えた「イリアス」の凄さも
しみじみと感じられました。
そして訳者による“さらなる理解のために――解説にかえて”
での、本書を補う情報が奥深かったです。
特にヒッタイト文書の解説が秀逸、もっと知りたくなりました。