鹿島圭介のレビュー一覧
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1995年に起こった地下鉄サリン事件。その直後、当時警察庁長官であった圀松氏が自宅マンションから登庁途中に狙撃される事件が発生しました。犯人はオウム真理教信者であった警察官という見立ての中で、犯人は特定できず時効を迎えました。
実は、この事件には自らの犯行である旨を供述している中村という人物が存在し、警察もその裏付け捜査を行っていたという事実がありました。その人物に関しては犯行動機、狙撃に使用した特殊な銃や銃弾の入手経路に至るまでの裏付け捜査が達成されていながら、真犯人として送検できなかったという状況に陥っていたのです。その原因は、警察内部の権力闘争とも言える公安部と刑事部との対立であり、「犯 -
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これは凄いなー。警察庁長官狙撃事件はオウムへの捜査を強化させるための謀略であり実行したのは中村某だった、さらに警察側はオウムにテロ組織としての印象を残す為にこの事実を無視して時効を迎えさせた、って、ダブル謀略が克明に描かれてる。この中村某の人生にも興味が尽きないし、当時の警察の体制にも疑問が尽きない。とても面白い渾身のルポ。
ところで、オウムに関係した本読んでると思うのは、実刑受けた連中の名前は他の事件に関した記事でも実名なのに、不起訴になった連中は仮名なのっておかしくない?って事。刑確定者差別では?
あとこの版ではアラミドがアミラドってなってた。興醒めするよね。 -
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[冷静に狂った男たち]地下鉄サリン事件の衝撃が醒めやらぬ中で、日本社会を震撼させた國松警察庁長官狙撃事件。2010年にこの事件は時効を迎えることになっており、事実、その時効は成立したのであるが、その直前になって「私がやりました」と突如名乗り出た男が存在した......。捜査路線をめぐる警察内部の対立や、自らを真犯人と名乗る「中村」の足跡を丹念に綴り、事件の暗部を抉りとったノンフィクション。著者は、本事件を長年にわたり追い続けた鹿島圭介。
2015年も後半戦に差し掛かる中で、またしてもとんでもない一冊を目にすることになりました。公訴時効成立時の記者会見などでおぼろげな概要を知っている方もいる -
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ネタバレ久々にこれ程面白い本を読んだ。
と言うか、これ程興味を引かれる人物はなかなかいないだろう。
東大在籍時に極左思想に染まり、ノーベル賞級の頭脳の持ち主と教授に謳われながら、共産党の地下組織に潜伏し犯罪者として服役。出所後も革命運動に参加すべくニカラグアに渡航、秘密工作員として訓練を受け、国内で武装蜂起を図る私設軍を秘密裏に組成。オウムによるテロを未然に防ぐべくサティアン爆破を企図するも、地下鉄サリン事件が勃発。警察の威信を掛けたオウム壊滅へ誘導すべく実行された諜略としての長官狙撃。
こんなマンガのような人物の存在も日本の闇の一面だが、公安部と刑事部の暗闘によって、政略的にその真実が葬り去られたと -
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地下鉄サリン事件で日本中が騒然としているなか、警察庁長官が何者かによって狙撃された事件。当初から強制調査に抵抗したオウム真理教の犯行と疑われた。警察はメンツにかけて犯人逮捕に動くが、サリン事件とオウム真理教への強制捜査で人員を奪われた刑事部は、長官狙撃事件にまで捜査員をあてることが無理だった。
そこで公安に白羽の矢が立ったわけだが、彼らには事件現場を徹底して調べ上げ、物証を集め証拠を積み上げていくという捜査経験が全くない。彼ら思想犯や危険な組織などをあらかじめ調べ上げ、協力者をつくり内部情報を引き出したり、尾行や監視行動で犯罪を予期する捜査しかしたことがない。
だが本来なら畑違いで、お鉢 -
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ネタバレオウム真理教による集団サリン事件に揺れる中で起こった国松警察庁長官狙撃事件。日本の司法のトップを狙ったこの大胆な犯行は、当然のようにオウム真理教による陽動だと思われた。警視庁公安部はオウム犯行説に固執するが、物証も自供も得られずに迷宮入りの様相。
そんな中、刑事部は中村泰という老スナイパーから詳細な自供を得る。
結局、自説に拘泥する公安部並びに米村警視総監らのメンツを守るために、この事件はオウムの犯行を思わせるが立件できない、という恥辱にまみれた幕引きとなる。
それにしてもこの中村泰という人物の特異さには驚かされる。
頭脳明晰にして、東大に現役合格するが、共産党に入党、暴力革命を志し中 -
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1995年の警察庁長官狙撃事件について、警察が流していた「オウム真理教犯人説」ではなく、別に真犯人がいる(本人が認めている)という内容。
真犯人がいることの意外性はあまりない。
普通に捜査していればたどり着いたであろう容疑者を「オウムのテロだ」と決めつける警視庁公安幹部のメンツと引き換えに無視する様子が描かれる。
一言でいえば無能なのだが、彼らがイメージされている「有能」さは実在するのか? という疑問は当然のものだ。
左翼活動家へのスパイ活動という、特定の時代における、特定の活動にだけ秀でていて、時代の変化に対応できない組織なのでは?
公安の無能を感じさせるのはこの事件だけに限らないのだし -
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地下鉄サリンの十日後の狙撃事件。オウムの犯行とされてきたが,解決を見ることなく15年後に捜査は時効で終結した。しかし,実は捜査の過程で,真犯人である可能性が極めて高い人物が浮上していた。オウムと無関係なその老スナイパーは,いかなる動機でこのテロを計画し,どのようにして警察庁長官を撃ったのか。警察・検察はなぜ真犯人に肉薄しながら立件を見送ったのか。それらの謎に迫った労作。
警視庁が刑事部でなく公安部に捜査を任せたことが,迷宮入りの遠因になっている。銃器犯罪に慣れない公安は犯行動機を過大視し,追い詰められたオウムの組織的犯行との見方に凝り固まってしまった。膨大なマンパワーを投入してこの線での捜査を -
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「実行犯は不詳、支援者も不詳。でも、これはオム真理教の犯行
です」。国松警察庁長官狙撃事件の時効数日前、特捜本部は
東京地検に書類送致を行った。
これについては先日、オウム真理教から名を変えたアレフが
名誉棄損訴訟を起こし勝訴したとのニュースが流れた。
首都東京を恐怖と混乱に陥れた地下鉄サリン事件の後の狙撃
事件だったので、あの当時は教団の犯行だと言われれば疑う
人はすくなかったろう。現役警察官にも信者がいたことだし。
狙撃事件の捜査を担ったのは警視庁公安部。証拠を積み重ねて
捜査に当たる刑事部とは違い、彼らは「まず犯人ありき」で捜査を
進める。
しかし、使用されたと思しき銃や弾丸とオ -
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気になった人物や事件についてかかれたノンフィクションを時々、読んでいます。
この本は、平積みされていた文庫のタイトルと表紙の写真が気になり、事前知識はなかったのですが、読んでみることにしました。
1995年3月に起きた、国松警察庁長官狙撃事件。
この年は1月に阪神淡路大震災が発生し、その後の一連のオウム事件で、騒然としていた日本。
「これもオウムの仕業か」と、大きく報道されたことを今でも記憶しています。
しかしその後、この事件関連の続報は減り、ついには2010年に時効を迎えてしまいました。
オウムによる他の重大事件がほぼ、(司法手続き上)解決したのに対し、警察組織のトップが狙われたこの事件が解 -
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別の事件で大阪拘置所に服役中の老スナイパーは、警視庁刑事部捜査一課の刑事に、こう供述しはじめる「私が長官を撃ちました」と・・・。2010年3月30日をもって時効となり全容解明されないまま迷宮入りとなってしまった国松警察庁長官狙撃事件。
本書は、オウム真理教だけしか見てこず捜査を固執し続けた警視庁公安部は15年間、一体何をしてきたのか。もうひとつは、重要参考人に浮上しながらも黙殺された男の長官事件における極めて高い容疑性を詳らかにするという執筆の意図が記されている。様々な捜査報告書を提示し著者と男の面会や書簡のやりとりを交え闇の部分に迫ったノンフィクション。
公安部と刑事部の確執とか自己保