日野原慶のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
面白かった。
太った女性の物語で、なんの変哲もない、ドラマ性もない話。だけど、太った女性を主人公にした物語自体、ほとんどないんだということに気がついた。
殆どの物語は大体当たり前のように主人公は痩せてるか太ってないくらい。でも、この主人公は努力して痩せていて、そのせいで空腹で苛々して、不幸になっている。主人公にとっては「自ら望んで」太ったわけではなくて、それが自分にとって自然な体型だった。だけど、それが社会的には「悪」とされるから、痩せざるを得なかった。
そういう状況に自分が置かれていたとしたらものすごく辛いなと思う。
自分では体型は選べないのに、ずっと「ダメだ」というメッセージを社会から受け -
Posted by ブクログ
「小説のようにストーリーを追って聴きたいラップ・ミュージックというのがあるけれど、この翻訳、文章はラップ・ミュージックのフローを楽しむようにも読みたい。」というのは、別の大好きな小説について書いた文章だけど、その小説を訳していた翻訳者が共訳しているこの小説の翻訳も同じようにとても素晴らしかった。物語のなかで流れる音楽にラップ・ミュージックはないし、登場人物たちも好きじゃなさそうだけど、やっぱりそんなふうに読みたいと思った。首が振れる翻訳とフロー。世界と自分、自分と世界、それに自分と自分。その間にある拭いきれない「居心地の悪さ」、そんなコンセプトで作られた
-
Posted by ブクログ
海外の小説を久しぶりに読んだ。やはり文化が違うからよく分からない箇所も多かったけど、体に対して思うようなことは日本とあまり変わらないのかもなと感じられた。
自分の体型とどうやって折り合いをつければいいのか?この問いにいつ答えが付けられるんだろう。この主人公のように、元々自分の体型にコンプレックスがある私はいつも「太っている」、「痩せている」というような言葉に過敏に反応してしまう。人は見た目で判断するものじゃないとよく言うけど、人は見た目で判断してしまうという現実をどう受け止めるかを考えた方が良いのではないか?自分の体、見た目と自分の精神は切り離せない。この本を読んでいて自分が前向きになれた訳で -
Posted by ブクログ
“「これ暗くないだろ。ただ悲しいだけだ。悲しみは美しい。悲しみは、僕を幸せな気持ちにする」
「あっそ、わたしは悲しくなるだけ」”(p.183)
“もしかすると、いろいろな雑誌を切り抜いて文字をつなげた誘拐犯の手紙のように、ここに至るまで彼女に何気なく向けてきた視線のひとつひとつ、向けなかった視線のひとつひとつ、そして口をついて出たあらゆる言葉、吐き出しきれなかった言葉、それらすべてが合わさって、彼はこんなにもおそろしい要求を自覚なく暗黙のうちにつきつけていたのかもしれない。”(p.194)
“何時間もかけて、女として合格点をもらえるものを探していた。何でもよかった。それか、女として見ら