【感想・ネタバレ】ファットガールをめぐる13の物語のレビュー

あらすじ

人が自分の体を生きることの居心地のわるさを描き出した、注目の作家モナ・アワドのデビュー作。

宇宙はわたしたちに冷たい。理由はわかっている。
インディーズ音楽とファッションをこよなく愛す主人公のエリザベス。特別な人生は望んでおらず、ただ普通にしあわせになりたいだけ。けれど高校でも大学でも、バイトをしても派遣社員となっても、結婚しても離婚しても、太っていても痩せていても、体のサイズへの意識が途絶えることはない。自分と同じ失敗をさせまいとする母親、友だちのメル、音楽を介してつながったトム、職場の女性たち……。彼らとの関係のなかで、傷つけ、傷つけられ、他者と自分を愛する方法を探してもがく。

【目次】
宇宙にさからう時
最大のファン
全身写真
そんなことなら
わたしの嫌いなあの子
それって欲張り
母にとってのセクシーな人
Fit4U
あの子はなんでもしてくれる
フォン・ファステンバーグとわたし
カリビアン・セラピー
アディション・エル
海のむこう

謝辞
訳者解説

【著者】
モナ・アワド
1978年カナダのモントリオール生まれ、ボストン在住。ブラウン大学、エディンバラ大学、デンヴァー大学で創作と英文学を学ぶ。現在はシラキューズ大学で創作を教えている。デビュー作品集『ファットガールをめぐる13の物語』に続くポップでキュートな怪作Bunny(2019年、未邦訳)は、The Ladies of Horror Fictionベスト作品賞受賞。2021年8月に第3作All's Well が刊行予定。

加藤有佳織
慶應義塾大学文学部准教授。アメリカやカナダの文学、世界各地のカッパ(的な存在)に関心がある。共著に『現代アメリカ文学ポップコーン大盛』(書肆侃侃房、2020年)、翻訳にトミー・オレンジ『ゼアゼア』(五月書房新社、2020年)。

日野原慶
大東文化大学にてアメリカ文学を教えている。「身体」「自然」「環境」「廃棄」「排泄」などに関心があり、それらにつながる現代のアメリカ小説や、ノンフィクション作品(とくに自然や環境をテーマにしたネイチャーライティングや、病や体をテーマにしたエッセイなど)を研究している。共著に『現代アメリカ文学ポップコーン大盛』(書肆侃侃房、2020年)。

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Posted by ブクログ

面白かった。
太った女性の物語で、なんの変哲もない、ドラマ性もない話。だけど、太った女性を主人公にした物語自体、ほとんどないんだということに気がついた。
殆どの物語は大体当たり前のように主人公は痩せてるか太ってないくらい。でも、この主人公は努力して痩せていて、そのせいで空腹で苛々して、不幸になっている。主人公にとっては「自ら望んで」太ったわけではなくて、それが自分にとって自然な体型だった。だけど、それが社会的には「悪」とされるから、痩せざるを得なかった。
そういう状況に自分が置かれていたとしたらものすごく辛いなと思う。
自分では体型は選べないのに、ずっと「ダメだ」というメッセージを社会から受け取りつづける。ルッキズムのせいで。
どんな体型でも、イロモノ扱いされずに透明であれたら楽なのに。

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2021年10月26日

Posted by ブクログ

「小説のようにストーリーを追って聴きたいラップ・ミュージックというのがあるけれど、この翻訳、文章はラップ・ミュージックのフローを楽しむようにも読みたい。」というのは、別の大好きな小説について書いた文章だけど、その小説を訳していた翻訳者が共訳しているこの小説の翻訳も同じようにとても素晴らしかった。物語のなかで流れる音楽にラップ・ミュージックはないし、登場人物たちも好きじゃなさそうだけど、やっぱりそんなふうに読みたいと思った。首が振れる翻訳とフロー。世界と自分、自分と世界、それに自分と自分。その間にある拭いきれない「居心地の悪さ」、そんなコンセプトで作られた13曲入りのアルバム。という例えがあっているか分からないけれど、そんな想像をしながら読み進めていくのもしっくりきていたりもして。通して読んだ後にはまたお気に入りの一編を繰り返しリピートすると思う、これもそんな一冊になりました。

最初に書いた「大好きな小説」は「ゼアゼア」のことで、翻訳者は加藤有佳織さん。加藤さんの翻訳はもっと読みたい。

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2025年01月18日

Posted by ブクログ

自分のものであるはずなのに思うようにいかない「体」のもどかしさ、苛立ちを痛いくらい感じた。

誰しも自分の体について、考えたり悩んだりしたことがあるのではないかと思う。

ましてや他者からの意見は様々で、一つ一つに耳を傾けているとわからなくなる。

自分がなりたい姿、人が求める姿、考え出すとキリがない。

私たちはなぜこんなにも痩せなきゃ、と思うのか、考えさせられる物語だった。

他者からの評価と自分の幸せはイコールではない。

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2022年09月02日

Posted by ブクログ

気になっていた本が5月のサヴァブッククラブで送られてきてラッキーでした。

そうそう、これだよ、と頭がもげるほど頷いてしまう。
友情、恋愛、自分らしく生きるとかなんとか、女の格闘はいつもヒリヒリトゲトゲしてて痛々しい。

それをわかっている人が描くから、エリザベスはこんなにも魅力的なんだろうな。

女性とその身体に対して社会は理不尽すぎるから、女は痩せてても太ってても生きづらい。
どんな自分でいたらあなたはハッピー?と正面から殴るように問いかけられる作品。

男も女も大人も子どももみんな読めばいいとおもうぞ。

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2021年05月20日

Posted by ブクログ

海外の小説を久しぶりに読んだ。やはり文化が違うからよく分からない箇所も多かったけど、体に対して思うようなことは日本とあまり変わらないのかもなと感じられた。
自分の体型とどうやって折り合いをつければいいのか?この問いにいつ答えが付けられるんだろう。この主人公のように、元々自分の体型にコンプレックスがある私はいつも「太っている」、「痩せている」というような言葉に過敏に反応してしまう。人は見た目で判断するものじゃないとよく言うけど、人は見た目で判断してしまうという現実をどう受け止めるかを考えた方が良いのではないか?自分の体、見た目と自分の精神は切り離せない。この本を読んでいて自分が前向きになれた訳では無いけれど、世界共通で同じ悩みが根本的に人の中にあることは知れた。

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2024年09月29日

Posted by ブクログ

各章ごとに、太っている主人公の身体と心、周りとの関係性、痩せていくプロセスの中、ライフサイクルの中で変わる人間関係は面白いものの、あまり共感は無かったかも。
ルッキズムがうたわれつつも、気にせずにはいられない私たち。(もしかしたらルッキズムと唱えること事態が意識しているのか?)これからも私たちは自分の容姿とも向き合いながらゆれる心や身体を受け止めて行くんだろうなと感じた。
リズと周りの女性の関係は見ていて万国共通?と感じた。

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2024年03月01日

Posted by ブクログ

最大のファン良き、あの子はなんでもしてくれるもいい。でも全体的に鬱々としてて、報われなくて、読み進めるのが億劫だった。最大のファンは最後の、太ってる子をナメてる男の子が、愕然とする様がよかった。あの子はなんでもしてくれる、は複雑な気持ちがよく表現されてる気がした。太ったままでよかったのにね、うまくいかないもんだね、って感じだった。

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2023年07月23日

Posted by ブクログ

“「これ暗くないだろ。ただ悲しいだけだ。悲しみは美しい。悲しみは、僕を幸せな気持ちにする」
「あっそ、わたしは悲しくなるだけ」”(p.183)


“もしかすると、いろいろな雑誌を切り抜いて文字をつなげた誘拐犯の手紙のように、ここに至るまで彼女に何気なく向けてきた視線のひとつひとつ、向けなかった視線のひとつひとつ、そして口をついて出たあらゆる言葉、吐き出しきれなかった言葉、それらすべてが合わさって、彼はこんなにもおそろしい要求を自覚なく暗黙のうちにつきつけていたのかもしれない。”(p.194)


“何時間もかけて、女として合格点をもらえるものを探していた。何でもよかった。それか、女として見られなくても、その事実について自尊心を守りながら嘆くことができるようなもの。ちゃちな装飾なしに。”(p.241)

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2021年07月04日

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