伊藤遊のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「鬼の橋」に続いてこちらも平安時代を舞台にした作品。
両親を怨霊に殺されずっと憎んでいた音羽丸が、怨霊のいない世の中というのは、ほんとうにいい世の中なんだろうか、と思うようになる。
「うまくやるやつがいて、そのあおりを食う者がいる。そのしくみが変わらない限り、この世から怨霊がいなくなるとは思えない。それなのに、怨霊がいなくなったとしたら…、それはいないのではなくて、だれにも見えなくなっただけじゃないか、という気がするんだ。だれも怨霊のことなんか思い出しもしないし、いるとさえ思わない…。忘れてしまうんだ、悲しい思いをしたまま死んでしまった人間のことなんか。それはもしかすると、今よりもずっと恐ろ -
Posted by ブクログ
今昔物語や百人一首などに出てくる小野篁の少年期を主人公とし、少年の成長、人が悲しみや後悔を飲み込んで前に進む様子、人の情により鬼が人になる様相を書いた児童文学。
小野篁は自分の不注意で異母妹を死なせてしまった後悔と慕情と悲しさ寂しさで生きる気力を失いかけています。
異母妹の死んだ井戸を覗き込んでいた篁は、あの世との境である河原に降り立ちます。
そこで人を食う鬼の存在や、死んでなお都を守ることを使命とされた征夷大将軍坂上田村麻呂を知ります。
この世に戻ってきた篁は、家も家族も失って父が人夫として工事に携わった五条の橋の下に住み着く少女の阿古那(あこな)、以前はあの世の川辺にいて残虐行為を繰り