瀬川雅峰のレビュー一覧
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三章竹取物語の時間
四章山月記の時間
終章こころの時間
『こころ』って高校のときなんか凄く興味を惹かれるけど暗い話だと思っていました。
『こころ』の後日譚の解釈はすごく面白かったです。
裏切りと罪の物語に見える『こころ』を希望の物語として読み解くのは面白かったです。
罪深い大人が若者へ希望を託す物語。
途中、高校生と先生の恋愛物はちょっとなあと思いながら読んでいましたが、この『こころ』の新解釈がわかったのはすごくよかったです。
なぜ、高校生と先生の恋愛だったのかも辻褄が合います。
高校の先生をしながら小説を書いているという作者ならではの独自の視点があったと思いました。 -
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ネタバレこの話を上巻だけ読むと(というか逆になぜ上巻の方はあんなにラノベっぽいんだろう…?) みんなに愛されて俺困っちゃうよ系のセンセイ、という評価しかなかったんだけど、下巻を読むと評価が一変した。
特に、「こころ」を裏切りと罪の物語ではなくて、希望の物語として読み解く、「罪深い大人が、若者へ希望を託す物語」であるのだ、という考察が非常に印象に残っている。教科書に載っている一部のみだけで判断するのではなく、全体を見て初めて理解しうるものもあると思う。
この話は、自分自身のした行為や過ちをずっと引きずって後悔している人は、何か響くものがあるんじゃないかなと思う。やってしまったことは取り返しがつかないけれど、どんなに償いたくても、それをすることができなくなってしまったという人もいるだろうけど、もしそれを悔いているのなら、せめて今自分の目の前にいる人たちには誠実に向き合って、誰かのために自分の人生を生かすのも一つの贖罪なのではないか、と考えた。
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下巻では竹取物語(後半)、山月記、こころが取り上げられている。辰巳と過去と「こころ」。たびたび夢に出てくる水のイメージ。それらが、ラストに向かって収斂していく。辰巳の「こころ」を縛る鎖を解き放てるのか。そしてラストは、タイトルにこめられた「辰巳センセイ」の仕掛けがわかる。
いやー、「こころ」を全編読みたくなった。現在、K川文庫夏のフェアが開催中で、書店で新装版として販売中だし。それにしても、「山月記」をBLにしてしまうのは笑えた。
文学作品を作中にネタとして登場させる小説というと、「ビブリア古書堂」シリーズが思い出される。このシリーズのファンであれば、本書も気に入る人が多いのではないだろうか。なお、本書の外伝のアイデアがあるらしい。 -
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第8回ネット小説大賞受賞作で、「小説家になろう」サイトに掲載されていたものをリファインしたもの。作者は現役の高校の国語教師だそうだ。
主人公の辰巳も高校の国語教師で、授業で扱う文学作品と学校で起きた事件を絡めて謎を解く。青春恋愛ミステリーと銘打ってあるが、ミステリー色は薄く、恋愛色が濃いめだと思う。さらに謎解きよりも、事件の関係者の心を解きほぐすことに主眼が置かれていると思う。
上巻では舞姫、羅生門、竹取物語(前半)が取り上げられている。いずれも教科書等で読んだことがあり、特に舞姫は高校の現国教科書に掲載されていた。当時の担当教員はクラスの担任でもあり、授業の内容が思い出された。
国語の教科書に掲載される文学作品は、なぜか生徒にとってインパクト(?)のあるものが多いように感じる。「ベロ出しチョンマ」とか「蜘蛛の糸」、「走れメロス」、「一切れのパン」等々。トラウマというわけではないが、ずっと頭に残っている。
以下、下巻へ。 -
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ネタバレ上巻で辰巳先生がうっかりやらかした件が思いの外あっさり解決してよかったと思ったのも束の間、先生自体の重い過去が。
どうにも先生に関わる女性たちは暴走しがちな気が。
先生が結婚はおろか恋することも禁じていた件。
この話での授業の題材が夏目漱石の『こころ』
つまり、この『こころ』の読み解きが先生の過去の呪縛の読み解きにも繋がる訳で、薄々想像はしていたけれど、いざその真実が明るみになった時は重かった。
決して法的に触れる罪を犯した訳ではないけれど、でもこれは引きずるだろうという。
ここで初めて作中に西暦が描かれていた訳にも気付くという。
あの国としても一大事だった件を絡めてくるとは思わなかった。
個人的には夏目漱石が一部作品を除いて苦手で『こころ』もほぼ未読で苦手意識を抱いていたが、辰巳先生の授業を受けて見方が変わったと思う。
ここでの解釈は諸説ある中の一つなのかもしれないが、深い読み解きに驚かされた。
ついつい上辺だけ読んで満足した気になるので、掘り下げての読みはできないのだが、長く作品が愛される訳が分かった気がした。
数ある女性を無自覚ながら虜にしつつも、一度は誰かを愛することを禁じた辰巳先生が『こころ』と授業を通じて辿り着いた答えとは。
その答えは、ラストのエピソードにて。
呪縛から解き放たれた先生、意外に手が早くて驚いたけども。
爽やかを通り越して、胸やけエンドでした……びっくり(それもまたよし) -
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ネタバレ『舞姫』は授業で習った覚えもなく完全に未読状態だったので、まさか海外が舞台の話とは思いもせず。
生徒たちと一緒に辰巳先生の授業を楽しく受けた感じ。
そんな話だったのか!
学校で起きるトラブルを解決していく話ではあるが、途中に辰巳先生の現国の授業が挟まり、その授業自体が面白いという。
現役時代にこんな授業をしてもらえたなら、もっと現国を好きになれただろうに。
先生の授業内容自体が、そのときのトラブル解決のヒントになるという二重に美味しい構造。
楽しく現国の授業を受けられて、かつトラブルも解決できちゃうお得感。
素晴らしい。
ただ先生がいい人すぎるのか、無自覚のまま関係する女子を先生・生徒関係なくどんどん落としていっているのが心配になる。
心配になった矢先に「ほら、言わんこっちゃない!」という上巻ラストの展開。
下巻手元にあって本当によかった。 -
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上巻で繰り広げていた辰巳先生の転勤騒動の完結編に加え、辰巳先生の苦々しい過去や生徒たちの様々なことに対する心の揺れ動きが描かれています。
下巻での名作では、「山月記」と「こころ」が紹介されています。
「山月記」は、あれ?内容なんだっけ?と思いましたが、あらすじを聞き、確かに習った記憶はあるなと思いました。
「こころ」は、新たな解釈が紹介されていて、目から鱗でした。
まずは、「竹取物語」の章の続きですが、ドタバタラブコメのような展開でした。咲耶の帰国や教師の嫉妬といったありえない展開で思わず笑ってしまいましたので、その後もそんな傾向なのかなと思っていました。
ところが、その後の展開が全然違く、生徒の心理描写が丁寧で、そのギャップに驚きました。
「山月記」の章では、心と体のズレによる苦悩、「こころ」の章では、相手への嫉妬が渦巻く心の闇が描かれていて、上巻とは違った「色」がありました。
特に「こころ」の新たな解釈が興味深かったです。
「こころ」に登場するそれぞれの人物について、先生が自殺した時の年齢を推理せよ。
色んな情報や文を駆使して、答えに導いていきますが、答えの背景にある行間の解釈が、なるほどと勉強になりました。
あくまでも一人の意見として紹介してましたが、卒業論文が作れるんじゃないかと思うくらいインパクトがあって、興味が湧きました。ちょっと、もう一回「こころ」を読んでみようかなと思わせてくれます。
「こころ」の解釈も面白かったですが、先生の辛い過去も印象的でした。
そこには東日本大震災も絡んでいて、辛すぎな気持ちになりました。
「山月記」の内容と「こころ」の内容が、それぞれの章で、上手いぐらいにリンクしていきます。原作の解説は上巻と同様に授業形式に学んでいくので、勉強にもなりました。
様々な隠していたことが明らかになっていくにつれて、重かった心が段々と軽くなっていきます。それと同時にホロリと感動が増していき、温かい気持ちになりました。
前半でのドタバタ騒動はなんだったんだと思うくらい、別の作品を読んでいる感覚にもなりました。 -
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ネタバレ国語の先生・辰巳と先生に恋をしてしまった生徒・咲耶が、様々な困難に遭うのだが、それはある文学作品とどこか似ている。「舞姫」「羅生門」「竹取物語」といった教科書で習った作品とリンクしながら、ミステリーや青春、恋愛の要素も取り入れていく。
第8回ネット小説大賞を受賞した作品の上巻です。
3作品は学校の授業で習った記憶はあります。なんとなく憶えていませんでしたが、授業形式でその作品の内容と解説をしてくれるので、学生と一緒に習っている感覚がありました。
先生とのやや強引?な恋愛だけでなく、階段の転落事件といったミステリー、高校生達や先生達とのビターながらも会話が青春さを演出していて、色んな要素があって面白かったです。
文学作品もそうですが、出来事の背景にあるSNSやDV、先生の裏事情など現実問題にもふれています。
単なる恋愛だけでなく、「学ぶ」こともできるので、一味違った作品でした。
キャラクターも面白かったです。特にちょっと頼りなさそうな先生と積極的すぎな咲耶のアンバランスさも際立っていました。
後半では、半ば強引に話が展開していきます。留学期間が予告なしに延長、英語教師の誘惑、転勤か結婚。二人の仲を引き裂くかのように話が盛り上がっていきます。
下巻では、どんな展開になるのか。この先の恋の行方が気になります。