滝本誠のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「美術館のある国が、すなわち芸術的な国というわけではない。だが、芸術の魂があれば、美術館には貴重な作品があふれるだろう。さらによいのは、創作の喜びが生まれることだ。芸術は均衡、秩序、相対的な価値観、成長の法則、簡潔な生活に向かおうとする──それは関係するすべての人びとにとって幸せなことである。 芸術を学ぼうとする人びとの苦労は並大抵のものではない。それに向きあう勇気とスタミナをもつ人はめったにいない。いろいろな意味で、孤立することを覚悟しなければいけない。人は共感を求め、仲間をほしがるものである。一人でいるよりも、仲間といるほうがずっと楽だ。だが、一人になって初めて、人は自分をよく知り、成長
-
Posted by ブクログ
なぜ一世紀近くも翻訳されなかったのか。ヘンライ氏の文章はまるで読む絵画である。「自分らしさにおいては誰もが巨匠」と説き、表現への情熱が芸術を生む。塊(マッス)という構図において形体や線、色すべては表現欲求を満たすために疎かにされるものではないと力強く語りかける。
プレゼンの参考のために読んだが、技術を身に付けると表現が巧くなるのではなく、表現したいものがあるからこそ技術を習得するのだ、という言葉はなるほどと思わされた。当たり前だが忘れがちなのはソフトを使いこなしても本当に伝えたいものでなければ何の意味もないということ。
なお本書はヘンライ氏の手紙や講義を集めたもので、全体を通して多少散漫な -
Posted by ブクログ
大分時間がかかったけれど読み終わった。
美術史は全くわからないし、正直著者も知らなかったりする。
美術的な技巧に関する記述については、率直に言って素養がないのでわからなかったが、著者の、世界の見方、あるいは"スピリット"というのは、必ずしも画家ではなくても通じるところがあると思う。
著者自身、「型にはまったものだけが芸術といわれるのはどうか」という疑問を投げかけている。一事が万事、この調子である(笑)
原書の刊行は、1923年。
初の邦訳が2011年。
どうしてこの本が、90年もの間、邦訳で出なかったのか、不思議に感じる。
美術を学ぶ人にとってどうかは正直わからないけれど、 -
Posted by ブクログ
デイビッドリンチの本「大きい魚をつかまえよう」にこの本が出てきて、とても影響を受けたとのことで読んだ。
本人が書いた本ではなく、授業を受けていた生徒とかが書き留めていた彼の言葉集
なので、具体的に「色彩とは〜」「背景とは〜」と話している時もあるし、一文だけの名言のようなのが並べてあるところもある。
「あらゆる人間の中に芸術家がいる」ことがもっと広まるべきである/よき絵は良い人生からとれる果実のようなものである/画家が感じ、思っていることは何らかの形で絵筆にあらわれる。世界の何者もそれを妨げられない/独創性は絶対にあるものであり、むしろ振り払おうと思ってもできない/芸術の源流や動機は個人の思 -
Posted by ブクログ
ヘンライ先生白熱教室。
著者はアメリカ19~20世紀の画家、教師。
多くの有名アーチストに影響を与え、アメリカでは今だに読み続けられているバイブルのような本らしい。
内容は具象絵画に関してではあるが、とても具体的、かつ本質的。今でも通用することが多い。
伝えたいことを持っているかどうか、それを表現するための画面構成が重要であることを繰り返し述べているのが印象的。
また、自分自身の表現を徹底して追求せよとも。
アートを学ぼうと思う人にはおススメ。
先生が叱咤激励してくれる。
ただ、このようにな勉強をすれば、アートで食べていけるようになるという話ではなく、先生自身が副業を勧めているのにちょっと笑え -
Posted by ブクログ
デヴィッド・リンチやキース・ヘリングらも愛読したという芸術指南書。原書は1920年代に発行されているというのだから、いままで邦訳されていなかったのが不思議なくらいだ。
肝心の中身はというと、芸術指南書というよりは人生哲学書と言った方が適切かもしれない。絵画だけにとらわれず、彫刻・写真・詩など、あらゆるジャンルの芸術に通じるものがある。見方によっては芸術の枠を飛び出し、仕事や人生一般にも関連する。
いくつかの手紙や講義ノートを寄せ集めて出版された本であるため、ヘンライの述べていることはいくぶん重複するが、その主義主張は一環している。
「芸術を学ぶ者は最初から巨匠であるべきだ。つまり、自分ら -
Posted by ブクログ
芸術指南書として読み継がれている本らしいけど、芸術におけるさまざまな視点から一貫して自己教育について書かれていると感じた。自分自身からの学びが重要であると。個人はどうしたって“私”からでしかありえないのだから、そのスタートはもっともだ。
モチーフ(動機)があってこそ、全体は意味をなす。そして、見ることをおろそかにせず、営みをよく観察すること。それなくして技法ばかりを追い求めても、つまらないものにしかならない。芸術に限らずあらゆることに共通することだろう。
「自分自身の正直な感情を大切にし、見過ごさないこと。」
自らの想像力を信頼してこそ、幸福、叡智に触れることができるのだ。
何度でも読み返した