アレックスパヴェージのレビュー一覧
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ネタバレこれは面白い試み。唯一無二。
”作中作が7つ"という触れ込みばかりが耳に残っており、どんな話なのだろうと思っていたら、まさかのミステリ談義もの。
形式的には、地中海の小島にひっそりと住むグラント・マカリスターが過去一作のみ私家版として出版した『ホワイトの殺人事件集』を、正式に出版したいと一人の編集者ジュリア・ハートがグラントのもとを訪れ、そこに編纂された7つの短編を読み返しながら、1作ごとにその作品の意義を対話していくというもの。
その対話で繰り広げられるミステリ論が、グラントの言うところの”殺人ミステリ”の構成条件とでも言うべきもので大変に興味深い。
登場人物を被害者、容疑者、探偵、犯人のグループに定義し、集合論を用いて数学的に分解する。
作中作として提示されるのは、その構成が極端な例を主としており、登場人物=容疑者が2人で犯人が1人の場合(どちらかが犯人。お互いはどちらが犯人かわかっている。知らぬは読者ばかり。)、容疑者グループと犯人が完全に重なる場合(そう、あの急行列車パターン!)、容疑者グループと被害者が完全に重なる場合(こちらはあの島の事件パターン)、などなど。
そして、ミステリ構成談義が縦糸ならば横糸としてあるのが、グラントとジュリアの現実世界で起きたとされる”ホワイト殺人事件”。
タイトルまでも似通っている『ホワイトの殺人事件集』に編纂されている7作にはこの事件を想起させる、偶然とは思えない記述が散りばめられている。
グラントは”ホワイト殺人事件”と関わりがあるのか!?
この作品は2022年度、このミス海外部門10位。
1位は『ヨルガオ殺人事件』、8位に『木曜殺人クラブ』のクラシックミステリオマージュ作品が。
また、2位に『自由研究には向かない殺人』、7位には『彼と彼女の衝撃の衝撃の瞬間』と豊作の年の年度ゆえ、このポジションに甘んじているが、ポテンシャルはもっと上。
クリスティーオマージュを含みながらも、リバイバルのベクトルとは一線を画す試みにただただ脱帽の一冊。 -
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ミステリ短篇集「ホワイトの殺人事件集」を著した後隠棲した作家を追って、彼のもとへ訪れた編集者。その本を復刊するために、短篇のひとつひとつを読み返し考察していく二人。しかしそれぞれの作品に潜む不自然な矛盾点と謎。いったい物語はどこへ向かうのか。ミステリの楽しさがこれでもかというほどに詰め込まれた一冊です。
作中作のミステリの数々が楽しいです。どれもが王道のように見えて変則的でひねくれた作品が多いです。仕込まれた矛盾点も気になるし(自力ではなかなか気づけませんでした)、なんとなく据わりの悪い気がする結末もそれはそれで魅力的。なのだけれどまさか……ああ、これ以上は語れない! 言うべきことは、この本が一度で二度も三度も美味しいミステリだってことです。
作中作では「青真珠島事件」がお気に入り。なんといってもあれがモチーフですし。罠の数々も邪悪で素敵です。 -
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孤島に隠遁する老作家と若い編集者とか彼が過去に書いた「ホワイトの殺人事件集」を刊行すべく議論を交わす。
収録作の短編を一つずつ読み返しつつ、それぞれがフーダニットだったり孤島で起こった連続殺人だったりというテーマでもってなにがしかが語られていくんですけども、まあ最終的に実際に起こった「ホワイト殺人事件」に収束していくんだろうなというのはさすがに読んでて察するわけですが。。
なるほどなあ。各短編がなんというか話が妙に薄いと思ったらそういう・・・いや短時間でオチなりなんなり書き換えられるジュリアがもはや異能すぎるだろう。
そしてさらなるどんでん返しが。幾分予想できなくもなかった気がするけど、それでもわりとこういうのは好きです。内容よりも構成力をより評価したい。 -
Posted by ブクログ
「作中作」と聞くと、どんな仕掛けがあるのかと疑いながら読み進めるのは、ミステリ慣れした読者の悪いクセですが、この『第八の探偵』の作中作のある真実が語られたとき、「そうきたか~」と心中で唸りました。
本格ミステリ好きが本格ミステリへの愛をこめ、そして技巧を凝らし、不敵な笑みを浮かべながら作り上げた作品のように感じます。
かつて『ホワイトの殺人事件集』という短編集を発表し、その後小島で隠遁生活を送るグラント。彼の元にその短編集を復刊したいと、編集者のジュリアが訪れる。二人は『ホワイトの殺人事件集』の短編を読み返しながら、ミステリついての議論を重ねていくが……
作中に収録されている作中作は7編。それぞれ犯人に色々なパターンがあり、これにグラントとジュリアの議論が加えられることで、作中の人物の言葉を借りると『殺人ミステリ』の要件が浮かび上がってきます。
『三つの棺』のフィル博士の密室講義や、有栖川有栖『マジックミラー』のアリバイ講義などを思い出される。そういう本格ミステリにどっぷり浸った人こそ、よりこの作品の面白さが伝わってくるはず。
収録作品の様々なパターンであったり、クリスティーのオマージュを感じさせるところも、ミステリ好きは楽しみながら読めそう。
そして7つの短編の真実が明らかになるとき、改めてミステリとはどれだけ突き詰めても、一方では不確定要素に満ちていることに。そして、だからこそ時に腹立たしく、面白いということに気づかされます。
正統派? メタミステリ? アンチミステリ? そんなミステリのジャンルもろもろを、貪欲に取り込んだ作品だったと思います。 -
Posted by ブクログ
イギリスの作家アレックス・パヴェージの長篇ミステリ作品『第八の探偵(原題:Eight Detectives、米題:The Eighth Detective)』を読みました。
イギリスの作家の作品を読むのは、10月に読んだクリス・ウィタカーの『消えた子供 トールオークスの秘密』以来ですね。
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七つの作中作が織り込まれた破格のミステリ!
米ニューヨーク・タイムズ年間ベストスリラー選出!
独自の理論に基づいて、探偵小説黄金時代に一冊の短篇集『ホワイトの殺人事件集』を刊行し、その後、故郷から離れて小島に隠棲する作家グラント・マカリスター。
彼のもとを訪れた編集者ジュリアは短篇集の復刊を持ちかける。
ふたりは収録作をひとつひとつ読み返し、議論を交わしていくのだが……フーダニット、不可能犯罪、孤島で発見された十人の死体──七つの短篇推理小説が作中作として織り込まれた、破格のミステリ。
解説/千街晶之
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2020年(令和2年)に刊行されたアレックス・パヴェージのデビュー作です。
探偵小説黄金時代に一冊の短篇集『ホワイトの殺人事件集』を発表して以来、孤島で暮らす作家グラント・マカリスター……編集者のジュリア・ハートは『ホワイトの殺人事件集』の復刊を企画し、著者のグラントのもとを訪れる、、、
ジュリアは目が悪いというグラントのために収録作を一篇ずつ朗読しながら、その内容について議論を交わしていく……そして、すべての作品を読み終えたとき、思いもしない事態が待ち受けていた……。
作品に隠された秘密とは? 7篇の作中作が織り込まれた傑作ミステリ!
作中作の7篇の短篇ミステリが愉しめたうえに、作品全体を通した謎解きも愉しめる……そんなお得な作品でしたね、、、
作中作は、容疑者が2人でどちらかが加害者、被害者が加害者、探偵役が加害者、複数の容疑者全員が加害者、複数の容疑者の半分が加害者、孤島に呼び出された全員が被害者……等々、それぞれが異なる設定で愉しめるのですが、何だかモヤモヤ感や違和感を覚える展開。
終盤にそのすべての物語のどんでん返しが用意されていて、全てが繋がることで心地良さが感じられましたね……グラント・マカリスターの短篇集に『ホワイトの殺人事件集』というタイトルが付けられた理由も納得、、、
全ての謎が解けたときに、全てが一変する展開も面白かったです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ25年前にミステリー短篇集『ホワイトの殺人事件集』を発表したっきりの作家グラントと、復刊のために彼の地所を訪れた編集者のジュリアは、かつてのグラントが打ち立てた〈探偵小説の順列〉に従って書かれた収録作をひとつずつ検討していく。ジュリアが見つけた、グラントの小説にちりばめられた違和感の正体とは。作中作が7篇も読めるビブリオ・ミステリー。
うーん、面白かったけど期待は超えてこなかった。作中作に気になる矛盾点がちりばめられてひとつの大きな謎をかたちづくるという凝った構成は贅沢だったし、ミステリーの”解答”なんてディテールを少しいじるだけで如何様にも変えられるという視点も好み。それだけに、もっと面白くなりそうな勿体なさを感じてしまう。
一番の不満は、終盤で明かされる作中作の別解がどれもあまり魅力的じゃないこと。原作者のホワイトはアマチュアでジュリアはプロの作家という設定からすれば、ジュリアの改変後のほうが面白いのは納得も出来るけど、後だしの”正答”は最初に読んだよりもっと面白くあってほしいのが正直なところ。
それから、どんでん返しを繰り返した結果、グラントの実像が完全に親しみのもてないクズに堕してしまうのも残念だった。クズなのはいいんだけど、作中の誰も彼の本質に迫れなかったせいでとても薄っぺらな存在に感じてしまう。『ホワイト~』の各篇がどれも探偵役に厳しいのは、グラントの人格にかかわる伏線なのかと思ってた。
作中作で好きだったのは「青真珠島事件」。これも探偵役と真犯人がどちらも社会的弱者の立場で重なり合う最初のバージョンのほうがいい。『そして誰もいなくなった』オマージュとしても探偵役の設定が今っぽい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレスペインの知人宅に招かれた男女が発見した刺殺死体の犯人はだれ?
海辺の街で、崖から女を突き落としたとして逮捕された男は本当に犯人なのか。
テラスハウスのバスタブで溺死したアリスを殺した犯人は。
百貨店の大火災のすぐ脇のレストランで起きた撲殺事件。
家から見える島に不審を抱いた夫婦が発見した遺体たち。島で何が起きたのか。
引退した医師の元に訪れた女性が知りたがった、田舎屋敷の女主人が窒息死した謎。
一人暮らしの刑事の元に届く不審な品と写真。
20年前に出版された「ホワイトの殺人事件集」の復刻のため、隠棲生活を送る作家のグラントと編集者のジュリアは、7つの短編を読み返して議論していくが。
それぞれの短編が後味は良くないものの、クリスティやエラリーを思わせて、ドキドキする。
そして、その短編たちがラストに驚きの展開をみせ、さらに作家と編集者たちにも秘密が!
盛り込みすぎーっと思いつつ、最後まで楽しかった。
ソフトクリームを食べたら、コーンの最後までアイスが入ってるような幸せ。