レッシングのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
作者のこともこの著作のこともまったく知らなかったが、好きな『光文社古典新訳文庫』の新刊で、梗概が面白そうだったので読んでみた。
一神教三兄弟のユダヤ教、キリスト教、イスラム教、のいがみ合いに対して、キリスト教徒である作者が、キリスト教に対してもっとも厳しい視点で、宥和を説く戯曲。
デカメロン第一日第三話の『指輪の寓話』(巻末付録一)を素材に味付けが施された、第三幕第七場のメルヘンが最も有名らしいが、確かに、すごく良くできた寓話だった。自分でサマリーするまでもなく、以下Wikipedia より。
ある商人の家では代々、家宝である魔法の指輪を最愛の息子が譲り受けていた。しかしある代の商人は3人 -
Posted by ブクログ
ネタバレドイツでは上演機会が多い詩劇とのこと。寓話っぽい話で、ユダヤ、イスラム、キリストの3つの宗教の混在に、「多様性」と「相対性(わかったつもりにならないこと)」の大切さを説く、18世紀啓蒙主義を代表する作品。3つの宗教のうち、キリスト教だけ狭量に描いてるのは意図的だろうが、宗教戦争が絶えない一番傲慢な原因であることからまあわからないでもない。現在の複雑な多様性に通ずるテーマとして、決して押し付けない、説教的でないので、ややぼんやりとした印象も否めないが、すんなり読んですとんと気持ちが落ち着ける名作で、読むだけでなく芝居とみても十分楽しい。本文庫は現代劇に見立てた実際の芝居でもきっとわかりやすく、ま
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Posted by ブクログ
十字軍時代のエルサレムを舞台に、ユダヤ人の賢者ナータンは、金の調達に困っているスルタンのサラディンから、ユダヤ教、イスラム教、そして十字軍戦士が信仰するキリスト教、この3つの宗教のうち、本物の宗教はどれか、という罠を仕掛けた問いを出される。果たしてナータンは如何に答えるのか。
宗教間の対立、相克に対する寛容の在り方という重い
テーマを、ロマンスあり、親子愛あり、数々の誤解や行き違いありのストーリー展開を、戯曲の形をとって面白く描いている。
訳文は平易と言えば平易で分かりやすい会話体なのだが、時代背景や登場人物の地位などからすれば、もう少し荘重な文章が良かったように思う。