蓼沼宏一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
本書は一橋大学経済学部教授で厚生経済学や社会選択理論を専門としている蓼沼宏一氏の書いた本である。
内容は、効率と公平(本書では“衡平”という言葉で言い表している)を鑑みて、最善の経済のあり方について模索する際に考慮に入れるべき様々な考えを、主に厚生経済学の視点から提供したものである。
多くの人に取ってこの本は興味深いものだと思う。なぜならサンデルのハーバード熱血教室で議論している正義の話と本質的には一緒であるからだ。サンデルは政治哲学の観点からだったのに対し、本書はそれを経済学の視点で説明・考察したものと言ってよい。
このような、いわゆる「正義」に対する考察を、経済学の視点からこれほど明 -
Posted by ブクログ
一般にモノが不足していたら、お金を出してモノを買う。これは経済学的にいえば、需要と供給の原則でもある。もっと俯瞰してみると、社会の中のメカニズムとして、モノやサービスを潤滑に「効率的に」回すのが経済の役割でもあるのだ。ここに福祉という概念を導入すると、障害や生活困難者に対し、不足分を社会が補うという「衝平性」という概念が生まれる。正義という概念が入る「公平」とは違い、感情を抜きにしているのが「衝平」という概念なのだ。
本著ではこうした福祉メカニズムを経済学の初歩を紐解きながら解明していく。題名の柔らかさとは違い、経済学の本を読むというスタンスでないと結構読み切るのに骨がいる。面白いのはやはり