トレント・ダルトンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ディテールと色彩が、破滅的な世界を照らす珠玉の小説。愚かで勇敢な少年の冒険譚。どこかファンタジックな雰囲気も醸し出しつつ、ドキュメンタリー的に細部にこだわった作品で、とてもワクワクさせられた。
子ども思いだけど麻薬の密売人をやっている母、その母の恋人で同じく密売人をやっている男性的な魅力ある男、話すのを拒み文字を空中に書いて意思表示する兄と、普通ではない環境に置かれたイーライ。
親友は、脱獄犯のベビーシッターであるスリムで、年齢的にはイーライと60の差がある。
こんな環境でも、擦れることのない少年イーライの視点から物語は語られる。
スリムの哲学を忠実に再現しようとする純粋さや、見たままだけを -
Posted by ブクログ
スケールの大きなタイトルだ。何せオーストラリア発のベストセラー作品、満を持して、華やかに登場! ページを開くと、すぐさま感じられるのは、高密度な文章による作風。物語力の高度さ。少し取っつきにくいくらいの言葉の奔流。それに何と言ってもイメージの横溢。これこそ少年の感性そのものかもしれない。それを大人になって完成された文章力が過去への旅程を辿り掬い上げたものなのかも。
物語の牽引力は半端じゃない。少年イーライの育つオーストラリアはブリスベン郊外の田舎町。少年と親しい老人は、殺人の罪で獄中で生涯を過ごした脱獄王スリム。60歳も歳の差がある老人が少年に教えるのは人生の知恵と夢。
少年の兄オー -
Posted by ブクログ
おもしろい。最初から面白い。そして話が進むほど面白くなる。最後までだ。
少年はディティールを見ることが、記憶することが得意。そして話し、書く。手紙を見知らぬ囚人にも。
この物語が惹きつけるのは少年が正直だから、誠実だからだと思う。
ベビーシッターの年上の友達に言われる、
”みんなの物語を語るのはやめて、たまには自分の物語を語れ”
これは事実上の別れのシーンだが、このあとも、刑務所の母親に会いに行くシーン、裏切者と対決するシーン、宿敵と対決するシーンとどれも切実だが少年の誠実な思いが根底にあり、応援せずにはいられない。
貧困、酒、ドラッグ、暴力、すさんだ環境でも、微妙に少年はその道からそれ -
Posted by ブクログ
「少年は世界をのみこむ Boy Swallows Universe」
日本語訳で600ページ近くあるにもかかわらず、三語で表された各章はスムーズでリズムがある。しかも描写は細かく比喩も豊かで、流して読むには少々もったいないほど。
物語は12歳の男の子イーライの目線で描かれる。
犯罪の匂いのする親を持つ主人公が次々と襲い掛かる境遇に対し、必死に抗いながら成長していく。
日本の小説にある普通の少年期の成長物語に比べ、とてつもないスケールの展開であるところにオーストラリアを感じる。
登場人物の中では、主人公イーライはもちろん、ある事故から言葉を話さなくなったのち、空に指で文字を書く不思議な兄オー -
Posted by ブクログ
ネタバレ海外作品を訳されたものを読み慣れてない(私みたいな人)だと、海外ならでは?の風景描写や言い回しとかが上手く飲み込めなくて読むのすっごい時間かかると思う。
でも訳された文章は本当に至高!わかんないけど、多分原文の良さがまんまか、それ以上に加わって高められたものになってると思った!原文の良さをひとつも損なってないよ、多分、勝手な推測と体感だけど。でもそれくらい、素敵な言い回しが多くてもうあげきれないほど。
内容は、日本では非現実的な綱渡りみたいな生活が終始描かれてる感じかなぁ。でもその実、人との出会いも別れも、ままならない現実も、全部自分の身近にもあるようなものにも思えたけど。
ご都合展開と呼ばれ -
Posted by ブクログ
たくさんの賞を受賞し、
たくさんの国で翻訳され読まれている本。
とても波乱にとんだ内容だった。
イーライは、おしゃべりで、
お話を作るのが得意で、ちょっと泣き虫。
オーガストは、ひと言も話さない。空中に指で書く文字は、予言めいたものもあれば、意味不明な文字列のこともあるが、賢い兄で頼れるアドバイザー。
母の恋人ライルは、父親も同然。
麻薬密売組織に連れ去られ、なぜ消えてしまったのか?真実を探しに行く。
ベビーシッターで、年齢差60歳の親友スリムからたくさんのことを学ぶ。
みんなでハグ!
愛情や信頼を感じる家族。
けれど、世間から見たら悪人と呼ばれるのかもしれない。
本書の半分は著者が実際に体験