石見清裕のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「貞観の治」と呼ばれる理想的な治世を行った唐の太宗李世民と臣下の問答を集め、古来より読み継がれてきた「貞観政要」40篇の全訳註。各章毎に古典の出典や時代背景を解説、本編も読みやすい文章で訳されており、800頁近くのボリュームのある古典ながら、途中で飽きる事なく面白く読むことができた。著者は「貞観政要」を手放しに礼賛せず、虚飾性や正当化された箇所に対してはしっかりと指摘しており、流石は歴史学者による訳註だと感じた。治世当初の10年は人民の動向を恐れ臣下の諫言に素直であったが、その後は傲慢で直言を嫌がる様子も見られ、最終篇では魏徴によって「有終の美を飾れない十ヶ条の理由」を上奏されるまでになっている。「貞観政要」の抜粋ではこのような側面を読む事はできなかっただろう。あとがきでも述べられているが、「全て読む」事の大切さを実感した。以前から「貞観政要」を読みたいと思っていたが、数ある中で本書を選んで大満足。古典や古事の由来の解説はあるものの、春秋・戦国時代や漢、魏晋南北朝時代の基礎知識がある方が面白く読めると思う。再度通読するのではなく、時間があるときにランダムに章ごとに読みたい。
-
Posted by ブクログ
唐の2代目皇帝の太宗と臣下とのやりとりに関する記録が綴られた書物。そこには古人の書物や古代の皇帝の中でも長く続いた聖君とすぐに滅びてしまった暴君の政治の事例が書かれており、それらを通じて主君としてどうあるべきか、また、臣下としても主君とどう向き合うべきかについて学び考えさせられる。現代のリーダーシップを学ぶ本であるということがよく理解できその通りだと思う良書である。何度も読み返したい。
常に臣下や人民に対して哀れみの心を持ち、人民のことを第一に考えること、自分に謙虚の気持ちを持つことの大切さを何度も認識させられる。また、初めの頃はそれが実行できていても、だんだんと慣れてきて怠慢になったり、功績が大きくなるにつれて傲慢になったりもする、それは全て主君としてのリーダーの心持ちと行動にかかっている。継続することが難しい、感情を抑制することは難しい。だからこそ、こういった歴史の書物をたくさん読み続けていくことで徳を積んでいけるようになるのではないかと考える。
-
Posted by ブクログ
ビジネスリーダーが読むべき本として紹介されることも多い『貞観政要』、本書は全10巻40篇の全訳本で、訳及び原文で770頁を超える大冊ではあるが、手に取りやすい文庫本の形で刊行されたことは、とてもありがたい。
巻一君道篇第三章の「創業と守成、いずれが難きや」は漢文の教材でも良く取り上げられる有名な一節であるが、これをはじめ、太宗の言行、臣下とのやり取り、臣下の太宗に対する上奏、諫言等が記録されている。
全体を通読し、特に、次のような点が印象に残った。
・隋の滅亡を経て唐による統一という大変動期の当事者であった太宗にとって、国家運営上、隋、特に煬帝の失政の轍を踏まないことが重要であったこと。
・大規模事業や君主の奢侈に伴う労役負担や戦役に駆り出すことなど、民に多大な負担を課すことが民の不満を招き、ひいては国家の安定を害すること。それを端的に表す言葉として、"君は船なり、人は水なり。水は能く船を載せ、亦能く船を覆す"という古語が紹介されている。
・君主の明君たるべきには、広く臣下の進言に耳を傾けるべきこと、臣下も覚悟をもって進言すべきことが、繰り返し取り上げられる。
・太宗も治世初期には、臣下の言を良く聞き、身を慎んでいたが、唐の治世が安定してきたからか、我儘になってきたこと。(全訳だからこそ、そのような変化が良く見えてくる。)
魏徴の長文の諫言、それを聞く太宗の姿勢にも打たれるものがあったが、何よりもここまで記録として残していくという営み自体、素晴らしいとの思いを新たにした。
訳文は平明で読みやすく、各篇始めの注記は、問答の歴史的背景を知るために大変役に立つ。一読をお勧めしたい。