途中までは、何のことやら、江戸時代の江戸っ子気質をただ演繹するだけで、話のテンポは遅いし、どんどん話を広げるだけ広げるし、親分のええところは出てこないし、巨悪を撃つわけでもないし。
ええ加減駄作かなと思っていたが。
第五章でしっかりとひっくり返してくれた。
これは良いぞ。
世知も荒事もなにも秀でたところのない男が若親分となり、凄え部下と、手下からのすごい信頼を得ていたことが明らかになり、これからの成長譚が見えてくる。
果たして、常吉は、漢になれるのか。貫禄ある親分になれるのか。
何者でもない者が、周囲の助けと自分の本質から出た功徳にがかえってきたことにより、何者かになっていく、そんな壮大な物語になるかも知れない。
そして、ラストの締めも最高。
今の世の中をしっかりと描いていて、闇バイトに堕ちる人も、ちゃんとしたきっかけと縁があれば、真っ当に生きられるのかも知れないという希望を持たせてくれるものだった。
何もかもがダメに、何もかもが崩れていく様に感じられる今の世の中で、希望を持たせてくれる、そして、そう自分もありたいと思わせてくれた。
昨晩の、布袋寅泰の武道館でもらったメッセージ『LONLY WILD』にも通ずる。
絹曰く
『まっとうにやってりゃ、お天道さまは見ていてくださるってことだねぇ』
手前勝手に時代に、周りに絶望せず、
周りに甘えずに、
俺は俺として、真っ当に生きよう。
そう思わせてくれた。
この小説、シリーズ化して、大親分となる常吉を見せてほしい。そして願わくは、将来また、時代の変わりに直面して、次世代に繋げていく物語を見せてほしい。
心から強く思う。
そこまでいけば、この作品は星五つ。今後の展開に期待する。
大化けしてほしい物語だ
俺は弱い。周りは助けてくれない
けど、見えてないところで助けてくれることもある
そもそも、東京のど真ん中で、飯が食えてること自体、誰かのおかげ
だからこそ、弱い自分でも生きつつ、勝手に周りに絶望せずに、自分は自分として、まっとうに生きれば良い。
助けてくれないと視野狭窄になって拗ねてる場合じゃない。ほんと、ただの視野狭窄でしかない。
だから、真っ当にいきよう。『しっかりしろよ、はい!』と高倉健が言っていたことを思い出す。
お前はLONLY WILD!
独行道をひたすらいこう