少年たちが用水路で「魔女」と呼ばれている人物の腐乱死体を発見するところから物語が始まるので、この「魔女」の人生が語られるのかと思ったらそうではなかった。
簡単に言えば殺人までの過程を様々な人物の目からたどる小説。
ジェンダーや性的少数者への差別、貧困、虐待、薬物依存などが当たり前の貧しい村で、それぞれの人物が何を感じ、どう生きているのか。そこには選択肢なんて初めからない。学校もろくに行かないし、幼いうちから性的な話題や行為に晒されていて、自分が虐待されていることすら気づかない。
はっきりとは語られないが、人種も多様で、その中での差別もある。
物語の構成、語り口が素晴らしく、実に才能のある作家だと思った。
しかし、描かれている世界が(実際に世界のあちこちにこういう場所があるのだろうが)救いがなく、読んでいて挫けそうになった。
特に継父から性的虐待を受けて妊娠中したノルマの話が辛すぎる。これを読むと性的虐待した親がなぜ「恋愛だった」「相手も望んでいた」と主張するのかがよくわかった。子どもの孤独や不安につけこむ。子どもは親に愛されたい一心で、過剰なハグやキスを「おかしいな」と思いながらも受け入れる。こういうことをする親はあまりにナチュラルに相手の弱みにつけ込んでいて、相手の子どもに疑いを抱かせにくい。飴と鞭でたくみに子どもを支配し、逃げられない状態にする。
全ての登場人物が皆貧しさゆえの不幸を背負っている。しかしみんなが貧しいのでそのことに気づかない。
全てが絡まって魔女は殺される。警察は殺しに関わった若者を逮捕するが、それで解決するわけではなく、こういったことはまた繰り返されるのである。
多分原文はもっと混沌としていて読みにくいのだろうが、翻訳のおかげで読み通すことができた。
注目の作家だが、読むのは精神的に辛いので、覚悟は必要。