宇野和美のレビュー一覧

  • ハリケーンの季節

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    魔女殺し の真相。
    と言ってもミステリーの範疇に収まらない。
    メキシコのある村を覆う絶望。
    そこで暮らす人々には日常だとしても、かなりヘヴィな日常。諦念。
    胃にずっしりくる。

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    2024年04月07日
  • きらめく共和国

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    『ある町にどこからか現れた、理解不能な言葉を話す子どもたち。奇妙な子どもたちは、盗み、襲い、そして32人が、一斉に死んだ。』

    本書の帯に書かれたこの短い文章が、物語で起きる全てのことを端的に表し、事件の渦中にあった1人の人物が22年後に述懐していく構成となっています。
    うつくしい亜熱帯の国の景色と貧困問題を抱えるサンクリストバルは、架空の都市でありながら私たちの世界にも必ず存在する場所です。つまり存在しない物語でありながら、32人の子供たちを産む土壌はこの世界に存在するのです。現代への予言とも呼べるかもしれません。
    サンクリストバルの貧困は日本の中の貧困とは性質がまったく異なります。最初に出

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    2022年09月01日
  • きらめく共和国

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    ネタバレ

    架空の街とそこを流れる大河と隣接するジャングルを舞台にある男の回顧録として語られるこの物語は一種、ファンタジーのような、それでいて犯罪事件録にも読み取れる。
    小鳥の囀りのように~とも表現される子どもたちの言語のことや、並べられた彼らの遺体という表現から、謎を突き止めたくて読む手が止まらない。

    街で暮らす親のいる子どもたちもその奇妙なある意味、毒を持つ集団へ惹かれてゆくのは容易に肯ける。
    子どもたちはなぜ家を出たか、なぜコミュニティを造ったか多くは語られてはいないけれど大人の一人として考えを深めてゆかなくては。

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    2021年06月11日
  • ハリケーンの季節

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    少年たちが用水路で「魔女」と呼ばれている人物の腐乱死体を発見するところから物語が始まるので、この「魔女」の人生が語られるのかと思ったらそうではなかった。
    簡単に言えば殺人までの過程を様々な人物の目からたどる小説。
    ジェンダーや性的少数者への差別、貧困、虐待、薬物依存などが当たり前の貧しい村で、それぞれの人物が何を感じ、どう生きているのか。そこには選択肢なんて初めからない。学校もろくに行かないし、幼いうちから性的な話題や行為に晒されていて、自分が虐待されていることすら気づかない。
    はっきりとは語られないが、人種も多様で、その中での差別もある。
    物語の構成、語り口が素晴らしく、実に才能のある作家だ

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    2024年09月16日
  • きらめく共和国

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    あらすじからホラー要素がある作品かと思いきやファンタジー要素が強い作品だった。
    パンズ・ラビリンス的な「子どもしか知らない世界」のようであるけれども本当に何があったのかとかは語られないので、好き嫌いは分かれると思う。
    ここまで極端な形ではなくても自分も子どもの時に大人たちには秘密の世界を作っていたことを思い出したり、自分はいつからそういう世界を持たなくなったんだっけ、と感傷的な気分になったりした。

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    2024年04月21日
  • ハリケーンの季節

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    メキシコの架空の村で起こった殺人事件を章ごとに一人の人物の視点から語っていくが、台詞も地の文もまぜこぜに改行なしで進んでいくかなり独特な構成。
    しかも貧困、暴力、迷信、差別と思いつく限りのこの世の醜悪な部分が詰め込まれているので文量のわりに読みごたえはかなりヘビー。
    これをよく翻訳して読み応えあるものにしあげたな、と思う。

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    2024年03月17日
  • きらめく共和国

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    ストーリーは、妻とその連れ子と南米の(架空の)町に移住してきた主人公が、20年以上前に自分が職員として関わったショッキングな事件を回顧録という形で振り返っている。

    舞台となる鬱蒼としたジャングルや灼熱の埃っぽい町は、この事件が決して起こり得ない話ではないことを暗示していたのに、主人公や大人達が何を見落とし、何を軽視し、今でも罪悪感に燻られているのは何故か。

    タイトルの “きらめく” というのは本文特有の抽象的・文学的な表現かと思いきや、とても物理的なものであり、そのシーンと直後に起こることの描写は映画的でもあります。

    カズオイシグロさんに通じるような、重過ぎないテーマなのに逆にファンタジ

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    2022年10月30日
  • きらめく共和国

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    SF?集団の子供が突然現れ、ギャング団のように振る舞い、突然死ぬという。それだけで、市勢の不安、生活風景などあんまり描写がないので、なんだかよくわからないというか、背景にあるものが理解できなかった。表現したいのは、理解不能な奇妙な物を、一方的に拒絶したらそこでおしまいで、それについて、寄り添え、考えろ、ということなのか?宗教的、民族的な争いのなくならない現在において、一体何が優先すべき事柄なのか、さっぱりすっきりしない世の中で、そういうのを考える作品なんでしょうか?

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    2021年08月23日
  • きらめく共和国

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    “私たちのせいで、私たちへの反抗の中から、何かが生まれたのだ。子どもはフィクションよりもずっとたくましい。”(p.73)


    “愛と恐怖には共通するものがある。どちらに支配されているときも、私たちは騙され導かれるままになり、信頼や自分の運命の行方を他者の手にゆだねる。”(p.114)


    “人は自分自身を許し理解しない限り、他人を許したり理解したりできないものなのだろう。”(p.139)

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    2021年08月02日
  • きらめく共和国

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    ネタバレ

    つらい話。実話なのか。
    エッセイ風に書かれるので読みやすかった。ただ,先が気になるので急いで読んだので,結局どうだったのか分からない点が出てきてしまった。自分が悪いのだが。

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    2023年04月13日
  • きらめく共和国

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    ある街に出現した少年たちが街を掻き回したあげく、最後は一人残して死んだエピソードが回想で紹介された物語。
    書評を見て読んでみたが、個人的には消化不良で難易度が高かった。どうして少年たちが現れ、そして死んだのか真相がわからなかった。もしかしたら日本語訳にした際に行間部分がなくなったのかもしれない。

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    2022年01月07日
  • きらめく共和国

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    パステルカラーを使った柔らかで輝くような装丁に、美しいタイトル。
    しかし、始まりはこうだ。
    「サンクリストルバルで命を落とした三十二人の子どもたち」(5頁)
    不穏な文章、そして不吉な予兆。
    喜びとは、若さとは、死とは。
    胸に残るのは、
    「心の奥のもっとも密やかな場所には、それに抵抗しようとする空間がある。私たちが口に出せなかったこと、手渡せなかったものを凝縮した身振りや微細なサインがしまいこまれた空間が。」(170頁)
    この一文が物語を総括する。

    なぜ32人も子どもたちは死んでしまったのか。
    彼らが話す謎の言葉、リーダーがいないのにまとまっている彼らの世界。
    大人からは見えない何か。

    一回

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    2021年08月14日
  • きらめく共和国

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    事件から二十数年後に過去を振り返ってゆく語り手。静かに事実だけを述べるような淡々とした語り口で、まるでノンフィクションを読んでいるかのように錯覚してしまう巧妙な描き方。
    無垢な子供と表裏一体の残虐性や、得体の知れぬものを怖れる人間の弱さ、ヘイトクライムへと繋がる心理描写など多様な要素が散りばめられた作品。

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    2020年12月01日