この本棚では交通新聞社新書の「「清張」を乗る - 昭和30年代の鉄道シーンを探して 」、帝国書院の「松本清張地図帖」、文藝春秋の「清張鉄道1万3500キロ」というような松本清張作品と地図と鉄道についての本を並べてきました。未読ですが原武史の「松本清張傑作選 時刻表を殺意が走る―原武史オリジナルセレクション 」という新潮文庫も入ってます。自分のように清張・地図・鉄道という食べ合わせが大好きな人に向けて定期的に食欲をそそらせるメニューが提供されているイメージかな…。同じ帝国書院モノでも「地図帳」は都電の路線図がそそらせてくれたし、今回の「地図で読む」は昭和32年の中学校の地図帳に小説中の事件の出来事がマッピングされたページがもう、たまりません。そもそも事件の結末もあっけらかんとネタバレさせているので、入門者には不親切でマニアのためのマニアック本でした。今、NHK-BSPで日曜日の4Kにリマスターされた「新日本紀行」がオンエアされていますが、昭和の高度成長の中で、東京と違う濃厚な地方の空気の缶詰になっています。そんな日本全国に新幹線が張り巡らされる前の時代は地方への好奇心が、昭和30年代、40年代の経済成長のエネルギー源だったのかもしれませんし、清張作品が国民的にヒットする要因にひとつだったのかもしれません。清張の時代=成長の時代?バブルと失われた20年を経て日本の経済成長は厳しいものとなり、地方は人口減に苦しみ、しかし清張コンテンツは今でも愛されて続けています。彼が取材し発見し、創作として光を当てた土地土地の小説群はもはや地方の資産になっているようでもあります。コロナによって地方回帰をいう論調もありますが、あの時のような濃い地方の時代は来るのでしょうか?