作品紹介・あらすじ
ボルヘス、コルタサルと並ぶラプラタ幻想文学の巨匠が描く、
面妖・怪奇の世界へようこそ!
化学や植物学、動物学、物理学、考古学など多岐にわたる驚くべき自然科学的博識と、想像力溢れる幻想的味わいを見事に融合させ、唯一無二の文学世界を形作る、アルゼンチン文学の巨匠ルゴーネス選りすぐりの傑作短編全18作を収録。幻想文学ファン必読の一冊!
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アルゼンチンの作家、レオポルド・ルゴーネスの18編を収録した短編集。
本の紹介に「ボルヘス、コルタサルと並ぶラプラタ幻想文学の巨匠」とあるが、僭越ながら言えば、ボルヘスやコルタサルほどの完成度や洗練さには届かない印象もある。というか、この二人とは幻想の扱い方や語りの傾向が少し異なるように感じた。
ちなみにラプラタ幻想文学とは、「アルゼンチンのラプラタ川流域を中心に展開された、幻想的・哲学的・知的な文学潮流を指します。特にホルヘ・ルイス・ボルヘス、アドルフォ・ビオイ=カサーレス、フリオ・コルタサルらが代表的作家です」とある。
ただし「ルゴーネスはこの潮流の『先駆者』であり、ボルヘスらのような『哲学的・知的な幻想文学』の完成形とは少し異なります。彼の作品には象徴主義や神秘主義、科学的好奇心が混在しており、後の世代とは幻想の扱い方が違います」とのこと。
「ボルヘスやコルタサルには及ばないかな」なんて書いてしまったけれど、決してつまらないわけではなかった。正直時代を感じさせる描写もあったけれど、特に「カバラの実践」(この女性のグニャっとした感触は想像するだけで気持ち悪い)「小さな魂」(悲哀を含んだ作品)「オメガ波」(まさに頭がからっぽに)はとても面白かった。ただ「死の概念」に関しては今一つ状況が分からなかった。
いずれにしても、若干の物足りなさを感じながらも面白く読み進めることができ、もう数冊彼の作品を読んでみたいな、という気持ちにさせてくれた。