相川英輔のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
やっぱり好きだな、相川栄輔さん。文章が合う。
「ハミングバード」は「惑星と口笛ブックス」で二度ぐらい読んで、英訳の朗読されたやつもたしか聞いて、だから4回めぐらいだったのだけど、なぜか今回が一番感動した。奇妙な設定ながら、出てくる人がみんなまっとうで、理性的で、だからついつい「やさしい世界」と評したくなるんだけど、何回か繰りかえして読んでいると、そうは言ってもそれぞれに後悔や不安や行く先の不安定さを抱えていて、それがあんな形で表現されていることがすごくグッと来るようになった。そのせいか、大江さんのポエトリーリーディングが、なんか心に響いたりして。よい短編。
それからなんといってもやはり「黄金蝶を追って」が傑作。才能を持つということ。それをつらぬくこと、信じるということ。どれも十字架を背負って歩くような重荷になり得るんだよなあ。記憶のなかの黄金蝶とついに対面する強さを持ち得たことが、成長の証しなのかもしれない。これもいつか読みかえしたい作品。
「シュン=カン」は、そう来るか!という発想の妙味。「俊寛」高校生の時歌舞伎教室で見たなあ。あの最後の場面がこの短編でもきちんと解釈されていて、そうかーとなった。
「引力」は、ヒドゥン・オーサーズ以来2度目。これも今回のほうがえぐられるものがあったな。さほど大きく絶望しているわけではないのに、静かにじわじわと追いつめられた感覚。これ、だれもが何かしらの形で持っているんじゃないだろうか? だからみんな、どこかでアポカリプスに惹かれるのかも。(子どものころだったら学校が火事になれば、とか、台風で休みになれば、とかね)
すごく好みの短編集でした。 -
Posted by ブクログ
日本より先に海外で評価された
自称"逆輸入作家"相川英輔さん
「黄金蝶を追って/相川英輔」
(S)少し(F)不思議なSF短編集
AIとコンビニ店長
幽霊と暮らす女性
時間の間に陥る男等々
幅広い少し不思議な設定が日常を送る人達とリンクしてリアリティのある不思議な世界を構築している
ともすればリアリティに欠けた滑稽にも感じる世界に陥ってしまうSF
どの作品も不思議が主人公達の日常もたらす感情の変化に見事にリンクされており、短い物語とは思えないカタルシスを感じる作品もあり
短編集なのでゆっくり一本ずつ読む予定だったにも関わらず、一本の「星は沈まない」から世界に引き込まれて一気読みしてしまいました
SF好きの方だけでなく沢山の方に読んで頂たい作品でした
ぜひ短編だけはなく長い作品も読んでみたい!と、すぐに別の作品も積読に買い足した位好きな作家さんの1人になりました
SFではないジャンルも書かれているようなので、読むのが楽しみです -
Posted by ブクログ
☆3.8
SF・ファンタジーに属する作品群六編が収録されている。
どの作品もどこかノスタルジーを感じさせる。
掴みたいのに掴めない何かを、この中に探してしまう。
そんな気持ちになった。
読み終わって考えると、その何かとは「希望」なのかもしれないなと思った。
「星は沈まない」
長くコンビニ業界の会社に勤めそれなりに出世するも、ある事件から不採算店の店長に降格され十年。
この店はAIを導入することでほぼすべての業務を代行できるシステムのモデル店舗になると決定された。
AIシステムの「オナジ」と働き、その能力に驚かされつつ気味悪くも思うのだが…
予想以上のコミュニケーション能力を持つオナジに、恐怖や危機を感じるのもわかるなぁと思いつつ、他の誰よりも結果側にいるオナジに心を寄せるのは当たり前のことなのかもしれない。
オナジとのやりとりの中に、確かに想いを見た気がするのは私も希望を持ちたいからなのかもしれない。
「ハミングバード」
一月ほど前から私は幽霊と共に住んでいる。
この部屋の前の持ち主が、突然半透明の姿で日常生活を送りはじめたのだ。
触れられないし、話もできない。
半年ほど前、手続きの時にはお元気だったのに。
それとも自分は精神に異常をきたしているのか?
これは妄想を見ているだけなのか…
ちょっとしたおかしみが感じられる一編。
半透明な幽霊姿なのに、機械のように決まりきった行動を繰り返すばかりなのが、幽霊らしくなくてちょっと変。
部屋の記憶を見てるんじゃないかと思うくらい。
このちぐはぐな印象がおかしみの元かな。
後輩の樋川の明るさもカラッとしてて好ましかった。
「日曜日の翌日はいつも」
水泳の五輪候補選手ではあるが今一歩頂点の選手たちには届かない、そんな位置にいる宏史だったが、ここ最近タイムを縮めている。
それには理由がある。
彼には日曜日の翌日に、自分以外が存在しない空白の一日が来るようになったのだ。
その空白の日を使い、練習を重ねていく…
まずはこのタイトルが良い。
単純に一日増えたよやっほー!ではなく、次第に増える空白の日への恐怖や、泳ぐ先に見据えた目標の想いの要である谷川との大事な時間など、その繊細さや葛藤をとても愛おしく思う。
ラストの解釈も人によって違いそう。
話し合ってみたい。
「黄金蝶を追って」
小さい頃から絵を描くのが好きで得意だった尾中は、特別授業で壁画を描いたとき、今にも壁から飛び立ちそうな黄金の蝶に目を奪われた。
この蝶を描いた達也を訪ねてスケッチを一緒にするうちに大事な友人となっていく。
そして達也は、自分の描く絵には秘密があると打ち明ける…
達也が一体どんな人生をおくってきたのか。
中学生の間に育んだ二人の友情は何より大事な思い出であり、大事であるからこそ、今頼ることで壊すようなことには決してすまいぞ、と思ったのではないか。
スケッチブックから飛び出した吹き込まれた生命は、今も何処かでひらひら舞っているかもしれない。
「シュン=カン」
シュン=カンは開拓惑星ニョゴ61にて無謀な資源採掘をさせられている。
不正を行うタイラーを摘発しようとして失敗し、部下のナリツネと共に流刑に処されたのだ。
補給船が二ヶ月止まっており、囚人は反乱を企てている。
しかし看守のマーダーマシン〈オナジ〉を倒せるとも思えない…
ここで〈オナジ〉が出てくるとは!
想いは繋がる。
決してその形は見えなくとも。
そしてそれは魂も同じこと。
「来世で会おう」は心から出た言葉であろう。
オナジの想いを受け取ったのだから。
それでも、その痛みもまた本物に間違いないのだ。
「引力」
ノストラダムスの予言の日まで一週間をきった。
そんな朝、餌をあげていたが懐かれなかった野良猫が庭で死んでいた。
葉子は猫を埋葬するため、車を持っている宇佐に連絡を取り、山へ連れて行ってもらう。
年の離れた宇佐は就活が始まり「予言が当たれば就活しなくて済むのに」と愚痴をこぼす…
猫が死に、宇佐は就活が始まり、弟は結婚を考えマンションを買う。
周りの人に大きな変化が訪れた葉子は、自らの変わりのなさにうんざりしていたんだろうか。
だから彼女は祈ったかもしれないなんて思いつつ。
それは何気ないほどに軽く、ある意味とても純粋な祈りだ。