相川英輔のレビュー一覧

  • ハンナのいない10月は

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    帯に”心優しい登場人物が織りなす青春ミステリー”とあり、大学時代のラブストーリーで、彼女の名前がハンナだろうと憶測したのは安易な考えだった。ハンナは大学の万年講師・森川譲が研究室に飼っている猫の名前とわかり、まず予想が裏切られた。
    大学公印が狙われたり、頻発する謎の停電や他大学からスパイが潜り込んだりと、現在の大学は昔の大学と違いさまざまな問題を抱えているのに驚かされる。猫の髭はポルトガルでは『天使の忘れ物』って呼ばれて幸運のお守りらしい。大学の夜間警備アルバイトをしながら小説を書いている男性が登場する。文学賞に応募しては落選する彼が追い求めているテーマを森川に語る。「子供の頃から悪のヒーローに憧れている理由に主役が放つ絶対的な眩さよりも悪役が持つ影の部分に強く惹かれていた。光は何もかもを明るみに引き出すが、影や暗闇に隠れたい人だって大勢いるのに。正しさがすべてじゃない、そういうものを書きたかった」と。
    学生自治会長選挙の不正疑惑や大学御用達の定食屋の後継者問題なども描かれている。
    森川は学長から大学に潜むスパイを探せと命じられるが、自らも不正単位授与問題に引き込まれてしまうこととなった。ヘッドハンティングを蹴った彼へのライバル校の工作か? 少子化で大学も厳しい経営の岐路に立たされていると時代の流れを思わずにいられない。中規模私立大学で危機に立ち向かうのは、猫のハンナと暮らす変わり者の万年講師・森川と男女の学生2人。「生きるっていうのは、きれいごとばかりじゃないからね。誰でも混乱することはあるし、間違えることだってある」

    他補う5つは箇条書き

    1、「真実のすべてが美しいわけじゃない」
    2、年齢を重ねれば重ねるほど時が早く過ぎると感じるのは”ジャネ―の法則”と呼ばるるものがあるらしい。各年齢における時間の心理的長さは年齢の逆数に比例する。60歳の人にとって1年の長さは60分の1ほどだが、6歳の子にとっては6分の1。つまり子供と大人では時間の価値や体感速度が何倍も違う。
    3、 ジャン=クロード・ムルルヴァ著「さかさま川の水」も面白そう。13歳の少年トメックは不死の水を求める少女の面影を胸に旅立つ。冒険の果てにたどり着いたのは、さかさまに流れる川だった…
    4、国が大学での専門強化を打ち出し教養科目の地位が低下した時期があった。でも、近年になり再び教養科目の価値が見出されてきたのは、教養を学ばないままに卒業した学生たちが社会に出て大きな壁にぶつかり始め、いわゆる専門馬鹿では通用しなくなってきたから。
    5、著者は福岡在住、イイネ!

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    2020年07月24日
  • ハンナのいない10月は

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    大学ってもっと人間的な方がいいよね。もっと書いて欲しい。大学って人が交わるところなんだって。おもしろかった!

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    2020年07月23日
  • ハンナのいない10月は

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    大学講師の森川先生と、その授業を履修する(でも就活で出席日数の足りてない)大学4年生、その彼とたまたま出会った3年生を中心に、森川先生の研究室にいついたネコのハンナを交えて展開する物語。

    大学の存亡を侵そうとする陰謀があったりして、ところどころハードボイルドな展開になったりもするけど、基本的には相川栄輔らしいやさしい世界が展開します。森川先生が、巻きこまれ型のようでいながら、しっかりとした芯があって揺るがないのがいいよね。というか、みんなすごくまっとうなのだ。今時、それこそがファンタジーじゃね?と思わなくもないけど、なんかほっとする。ハンナも(:_;)

    これを機に「惑星と口笛ブックス」シングルカットの「ハミングバード」と、「たべるのがおそい」3号の「エスケイプ」、『ヒドゥンオーサーズ』の「引力」を読みかえしてみた。「引力」は、本書でもちらっと地球をかすめる小惑星の話で、こんなにやさしい話を書く人だけど、どこかに滅亡願望みたいなのがあるのかなと思ってちょっとおもしろかった。もう少し深堀りしてみたい作家さんです。あと、この森川研究室の話ももう少し読みたいかも。

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    2020年06月15日
  • 黄金蝶を追って

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    収録作「ハミングバード」が日本人で初めて米英のSF誌に掲載されたという宣伝句に惹かれて購入。この日本的なオフビートさが海外で好まれるのは少々意外だったが、確かに斬新なアイデアではある。市井の人々を主人公に据え置くノスタルジックで感傷的な作風はどことなく伊与原新氏に通ずるものを感じるが、SFやファンタジーの要素が入ることで、新たなドラマ性を生み出している。魔法の鉛筆を題材に男同士の友情を描く表題作や歪んだ次元に飲み込まれた競技者の孤独を描く「日曜日の翌日はいつも」も実に読ませる。他の作品も読んでみたい作家。

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    2023年10月16日
  • 黄金蝶を追って

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    国内より先に海外で評価されたというニューカマーによるSFの短編集。とはいえ最先端科学や、テクノロジーに関する尖った議論などとはあまり縁のないファンタジーよりの作風。短編としても、オチの意外性より人間ドラマで勝負するタイプで、基本ハートウォーミング系。渋くてそつがない、いい意味でも悪い意味でも新人さんらしからぬ作風。いいんだけど、新人でこの感じは却ってつまらんと言う人もいそうな感じかな。個人的ベストは「ハミングバード」。

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    2023年08月14日
  • ハンナのいない10月は

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    テンポの良いストーリーテリング。中規模大学とその関連で起きるできごとに巻き込まれる主人公や登場人物。ご都合主義といえばそうだが,人生の奇縁もそんなもの。物語の背景にあるライバル大学からの攻撃?は解決されないが,発生する出来事を通して登場人物が少しずつ成長するので,読後が爽やかで希望がある。伏線は回収しきっておらず,登場人物が老若男女おり,追加の人物もいれやすいので,映像作品化しやすい(それを狙っている?)と思った。

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    2023年08月12日
  • 黄金蝶を追って

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    過去、現在、未来。様々な時代を舞台に描かれるSF短編集。
    しばらくSFから離れていたが、この本を読んでSFの面白さを再認識した。
    いずれも日本が舞台なので想像しやすい一方で、現実から少し浮いたような、ふわふわする感覚がある。
    夏休み、少しいつもと違う雰囲気の中で、この浮遊感を楽しむのも面白いのでは。

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    2023年07月23日
  • ハンナのいない10月は

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    ネタバレ

    ラノベっぽいキャラクター重視の作品なのかな、と期待せず読んでみたら、そんなことはなかった。二人以上の登場人物が「事件に巻き込まれる」ためにはそれぞれ理由が必要で、とくに連作ものだと、「一つ目の話の事件関係者」が二つ目でも三つ目でもずるずる関わっていたらさすがに違和感がある。そういう点でも、特に学生ふたりを毎回の事件に、出しゃばらせず、さらっと登場させていて、上手いなあと思った。

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    2021年10月19日