収録作「ハミングバード」が日本人で初めて米英のSF誌に掲載されたという宣伝句に惹かれて購入。この日本的なオフビートさが海外で好まれるのは少々意外だったが、確かに斬新なアイデアではある。市井の人々を主人公に据え置くノスタルジックで感傷的な作風はどことなく伊与原新氏に通ずるものを感じるが、SFやファンタジーの要素が入ることで、新たなドラマ性を生み出している。魔法の鉛筆を題材に男同士の友情を描く表題作や歪んだ次元に飲み込まれた競技者の孤独を描く「日曜日の翌日はいつも」も実に読ませる。他の作品も読んでみたい作家。