篠原健一のレビュー一覧
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京都産業大学経営学部教授の篠原健一(1967-)による、労使関係を軸にしたアメリカ自動車業界論。
【構成】
第1章アメリカ自動車産業 国際競争力と労使関係
1 アメリカ自動車産業復活の足音
2 世界自動車産業のなかでのアメリカ・ビッグ3
第2章アメリカの非能力主義・日本の能力主義
1 アメリカにおける職務給の実態
2 アメリカにおける変動給の具体的形態
3 日本の賃金制度の概要
第3章アメリカにも年功制がある? 先任権の及ぶ領域
1 アメリカにも年功制がある?
2 先任権の発展史
3 改革と先任権
第4章チーム・コンセプトという日本化 トップダウン経営の限界
1 チーム・コ -
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アメリカ合衆国の現代労働史。『アメリカ自動車産業』というタイトルに偽りがないわけではないが、「アメリカ合衆国の自動車産業で働く近代的産業労働者(プロレタリアート=ブルーカラー労働者)の労働動態」が主題であり、本書では経営についてはそれに付随する範囲内で述べられている印象を受けた。
1952年に「アメリカにとって良いことは、GMにとっても良いことだ」と述べたのはGM会長にして国防長官のチャールズ・ウィルソンであった(本書13頁)。1914年のフォード主義誕生以来、アメリカ合衆国は自動車と、自動車を使わずには生活できない現代社会を築き上げてきたのである。
その自動車産業で働くアメリカ合衆国のプ -
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自動車産業から見た労使関係の日米比較論。一般的に「実力社会」「競争社会」のイメージが強いアメリカだが、それはホワイトカラーの話。組み立て工場などで働くブルーカラーの世界では「平等主義」「年功序列」が徹底されており、それがアメリカ自動車産業の復活を阻害しているという。即ち、労働者間の格差をなくすため、組合側は「同一労働、同一賃金」の原則に固執し、成果による賃金の差異化を拒否してきた。また労使対立の結果、管理職である職長の権限を規制するため、移動や昇進は「年功」(先任権)に拠ることが協約で定められた。その結果、現場のモチベーションは上がらず、柔軟な人事配置も難しい状況に陥っているという。こうした
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ネタバレ「アメリカにおけるブルーカラーには能力主義が反映されにくい」ということが、イメージとしては職務給がある以上、なんとなくイメージにはあったものの、それが裏付けられるような形になっている。であるがゆえに、現場が主役になりづらい状況におかれている
そして対比する形で日本は年功制等をベースにしつつも、内部労働市場の整いの観点から、意外にも能力主義としての職能給が反映されている。それがたまに現場レベルでのカイゼン活動なども行なうモチベーションが生まれる、という理屈。
一方で、自動車産業における「ホワイトカラー」においてはどうなのであろうか。ここもアメリカにおいては職務給である?はずなのだが、プロ野球 -
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GMを中心に、アメリカ自動車産業の工場現場の改革を人事制度面から解説した本。80年代以降、日本式のカイゼン活動を取り入れる試みが繰り返し失敗したのは、上司による査定を拒み賃金に能力差を反映しない「同一職務同一賃金」制度やアメリカ式年功序列制度「先任権」を重視する労働組合と、労働組合と経営側との間の労使協調の欠如である事を明らかにしている。日本式の、査定により昇進や賃金に差をつける”ゆるい競争”や失業を気にせず工数削減に取り組める長期雇用、労使協調は製造業にとって有効であり評価されるべきと論じている。
しかし近年製造業の現場では派遣を始めとする非正規労働者の割合が大きくなっており、ブルーカラーの