戦略の要諦
著:リチャード・P・ルメルト
訳:村井章子
戦略とは何か、ということを語る大書
扉に、こうある
戦略の策定とは
意思決定ではない
目標設定でもない
卓越した優位性も
長期的ビジョンも
他社との比較も要らない
戦略の策定とは、克服可能な最重要ポイントを見極め
それを解決する方法を見つけることである
と
気になったのは、以下になります。
■序
戦略を立てるスキルは3つの要素で形成される
・ほんとうに重要なのはどれで、後回ししてよいのはどれかを見極める能力
・その重要な問題の解決は手持ちのリーソスで現実的に解決可能なのかを判断する能力
・リーソスを集中して投入する決断を下す能力
最重要ポイントという概念を導入すると、注意がまさにその一点に集中するという効果が得られる
生産性の高い人は、最重要ポイントに全力で集中することで、直面する課題を乗り越える方法を見つけ出す
困難な課題に挑むときには、まず何が問題なのかを理解することだ
こと戦略に関する限り、リスクの大きさや勝つ確立を理解してなければならない
企業の戦略を立てるからには、今日の行動が将来の成果にどうつながるのか、説得力のあるストーリで戦略を語って信頼をえなければならない
戦略のロジックは、大胆なギャンブラーでなく、冷静で賢明な人が納得できるものであることが必須条件だ
本書で訴えたいこと4つ
・戦略を立てる最善の方法は、困難な課題に正面から立ち向かうこと
・活用できるリソースを確認すること
・いかにも魅力的な誘惑に負けたり、横道にそれたりしないように注意すること
・グループや、ワークショップ方式で戦略を立てるやり方は落とし穴が多いと心得ること
■課題に基づく戦略と最重要ポイント
戦略課題に取り組むうえで重要なステップは、その課題を正しく診断することである
・何が起きているのかを理解し、
・最重要ポイントを特定し、
・とるべき妥当な行動方針を決める
効果的な戦略は、直面する課題を洗い出し、リソースの制約や競争状況を考慮し、そこに野心が加味されるところから生まれる
有能なリーダは組織がいま実際に直面している状況をじっくり見つめ、たくさんの野心のうち、いくつかを振るい落とす
前に進むためには野心や価値観を選別する必要がある
診断は戦略策定の出発点である
手ごわい課題に取り組むときには、その課題の本質を見極めることが重要である
・いったい何がおきているのか
・解決を困難にしている最大の原因はなにか
・どの障害物は取り除けそうか
・どの制約は緩和できそうか
課題を診断したうえで解決を考え抜くことこそ、戦略を立てる最善の方法である
課題を分析すると同時に手持ちのリソースを点検し、最大の難所を乗り越える方法を練る
とほうもなく困難な課題とは何か
・問題自体の明確な定義ができない
・解決策が二者択一ということはめったにない
・考えられる行動とその結果との関係がはっきりしない
相反する願望と現実、ニーズ、手持ちのリソースなど、さまざまな条件が絡まりあう中で最重要ポイントを見定めてからでないと
とほうもなく困難な課題は解決できない
●収集とは、直面する難題と機械をリストアップし、何も見落としがないようにする作業である
こうすれば、最初に思い浮かんだものから取り掛かるという愚を避けることができる
●分類では、リストアップした項目をグループ分けする
書き出された問題は複合的な性格のものであることが多いため、それを切り分ける作業が必要になる
●収集と分類が終わった段階で、取り組むべきことが多すぎるし、絡んでいる利害も多すぎることにあなたは気づくだろう
そこで選別が必要となる
●緊急性に基づいて、順位をつけ、喫緊の課題をいちばん上にし、先送りできるものは、下に回す
●選別が終わったら、重要性と取り組み可能性を評価する
重要性とは組織の中心的な価値あるいは組織の存在を脅かすかどうか、
または、組織の飛躍的成長につながるような大きなチャンスかどうかその度合いを意味する
取り組み可能性とは、個人または、組織のリソースでもって現実的に解決が可能かどうかを意味する
重要性よりも取り組み可能性を評価するほうが悩ましい
一部の課題はあきらかに取り組みが容易だろう
一部の課題はきわめて重要だが、手も付けられないように見えたりする
最重要ポイントは後者に潜んでいることが多い
死活的に重要なのに手が付けられそうにもない課題には、最大限の注意を払わなければならない
●課題の最重要ポイントは、さまざまな条件、リソース面の制約、方針の衝突などが重なって摩擦熱を発するようなポイントである
とほうもなく困難な課題に取り組むとき、収集・分類・選別のプロセスを経て、最重要ポイントにフォーカスしない限り、
解決は極めて困難で長くかかる、もしくは、解決できない
●とほうもない困難な課題について、選別プロセスが完了し、アタックするポイントが定まったら、取るべき行動を何通りか、考えることが
第二の手順となる
チーム内で出された案をすでに分かっている事実や知識と照らし合わせ、確実な情報と齟齬をきたすような提案は却下する
●ひらめき ⇒ とことん考えること ⇒ アイデアを生む最も信頼できる方法は6つ
①粘り抜く
②類推する
③視点を変える
④暗黙の前提を言語化する
⑤つねに「なぜ」と問う
⑥無意識の制約に気づく
戦略とは継続的なプロセスであることを認識する
●戦略を考えるときには、他といちばん差をつけられそうなところ、つまり、「勝てる」ところにフォーカスしなければならない
相反する価値観や願望がせめぎ合い、どちらを選ぶか決めかねるようなとき、英語では、心が二つになるという
●こうした状況における問題の最重要ポイントは、価値観あるいは願望が最も激しく対立するところに存在する
この状態から抜け出すには、価値観や願望が課す制約条件のどれかを緩和するか排除しなけれならない
●戦略課題は、決定的に重要 かつ 現実的に取り組み可能 でなければならない
人知では乗り越えられないような課題は、いかに重要でも戦略の対象とはなりえない
<成長への7つの道>
1 ユニークバリューを提供する
2 不要な活動を排除する
3 機敏であれ
4 合併・買収を活用する
5 必要以上に払わない
6 バケモノを育てない バケモノとは古い組織の中核に巣くう仕組みやシステムのこと
7 細工はしない
●戦略を策定し、実行するためには、そのための権限を得なければならない
方針と行動が一貫していること
一貫性のある方針とは、目を引くような奇をてらったものではない、一貫性を追求すれば、ひたすら思慮深く賢い方針となる
一貫性のある戦略は、問題の最重要ポイントに焦点を合わせる
目次
はじめに フォンテーヌブローの森にて
第1部 課題に基づく戦略と最重要ポイント
第1章 戦略自動作成機は存在しない
第2章 課題を解きほぐす
第3章 戦略は長い旅路である
第4章 どこなら勝てるか
第5章 戦略と成長
第6章 戦略と権力
第7章 行動の一貫性
第2部 診断
第8章 アナロジーとリフレーミング
第9章 比較とフレームワーク
第10章 分析ツールの活用は慎重に
第3部 最重要ポイントを攻略する
第11章 強みを探す
第12章 イノベーション
第13章 組織の機能不全
第4部 リーダーを迷わす誘惑
第14章 目標が先ではない
第15章 戦略と目標管理はちがう
第16章 現在の財務実績は過去の戦略の結果である
第17章 戦略プランニングの活用と誤用
第5部 戦略ファウンドリー
第18章 ラムズフェルドの疑問
第19章 戦略ファウンドリーの擬似体験
第20章 戦略ファウンドリー:コンセプトとツール
謝辞
原註
ISBN:9784296117529
出版社:日経BP 日本経済新聞出版
判型:4-6
ページ数:528ページ
定価:2200円(本体)
発売日:2023年11月28日1版1刷
発売日:2023年12月12日1版2刷