矢野久美子のレビュー一覧
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『全体主義の起源』『人間の条件』『イスラエルのアイヒマン』等のハンナアーレントの生涯が描き表されている本。
ユダヤ人として、ユダヤ・イスラエルにおいてもドイツに
おいても、アメリカにおいても全体主義というか
思考を停止させてしまういろいろな現象に対して勇気
をもって警告する彼女の生き方・考え方に対いして
感銘を受ける内容です。
日本の東京裁判。いまの日本。世の中の状況などが
彼女がどのように思考するかが聞いてみたいと
思います。
また、それらで垣間見える全体主義というか、凡庸な悪に対して思考を停止することに対してあらがってみる
ことを心に持っていたいと思います。
近代の哲学家・思想家の中でも感 -
Posted by ブクログ
素晴らしい人生。素晴らしい思想。アーレントは人間の条件を読んだだけだが、難しかった。しかし、本書はの記述は焦点を絞り、易しく分かりやすい。無国籍問題の重さをつよく感じた。
・「ひとたびすべてが〈政治化〉されてしまうと、もはやだれ一人として政治には関心を持たなくなる」。総力戦を戦うとき、選択や決断や責任に対する自覚が失われる。
・反ユダヤ主義はナショナリズムの昂揚期ではなく、国民国家システムが衰退し帝国主義になっていく段階で激化した。
・共同体の政治的・法的枠組みから排除されている彼らは、すべての権利の前提である「権利を持つ権利」を奪われている。
・カトー:独りだけでいるときこそもっとも独りで -
Posted by ブクログ
ハンナアーレント の生涯、思想、著作をまとめた本。「全体主義の起原」の論述は わかりやすい。印象に残ったアレントの言葉は「思考し、自由を求め、判断を行使する人々が生み出す力こそが世界の存続を支える」
「全体主義の起原」に対するアーレントのスタンス
*ガス室、全体主義など人間の無用性をつきつけた出来事に対して出来事の諸要素を分析→因果性を排除→諸要素の結晶=出来事
*起こるべくして起こったのではなく、人間の行為の結果としての出来事
*反ユダヤ主義、帝国主義の諸要素は 必然的に 全体主義に直結したのではない
*人間の選択を描いた→他の選択肢もありえたのになぜ それを選択したのか
*官僚制という誰 -
Posted by ブクログ
昨今大きく喧伝される『多様性』であるが、全体主義こそその対極にあるものだろう。
被害者はもちろん、加害者からも個性と責任を奪うことによって、
一人ではなしえない大逆を可能とさせることはミルグラムの監獄実験によって示されたが、
ハンナ・アーレントがいなければ、これがアイヒマン実験とも呼ばれることはなかったかもしれない。
戦後まもない、誰もが理性的ではいられなかった時代、
ナチ体制下における最終収容所の所長であったアイヒマンがイスラエルにて裁判に臨む際。
大衆はもちろん、知的階級さえも懲罰的な復讐を望んでいた只中にて、
ホロコーストを、残虐非道な悪役たちが非力な民衆を強制して実行した犯罪ではなく -
Posted by ブクログ
ずっと長い間気になっていたが読めていなかった一冊。
激動の時代を生きて、その中で考えることをやめなかったとても強い意志を持った女性の伝記的な一冊。
ユダヤ人の立場が理不尽に弱かった戦時中と戦後のイスラエルによるナチズムへの報復の感情が強かったアイヒマン裁判などで自身で考え抜いて周囲からどのような批判を受けようとその考えを変えることはなかった。
彼女の大切なものはユダヤ人という人種ではなく周囲の友人などでありナショナリズムなどは関係ないという言葉はやはり力強い。
彼女の哲学の内容というとしっかりと理解することはできなかったが伝記として読むととても分かりやすく面白い本であると思う。