内田洋子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
今の所今年のベスト1。
内田洋子さんの長年のイタリア暮らし、街から村へときには洋上で、それぞれに場所を変えての日々をそれぞれを綴った本で読んできたけど、これは新聞やウェブに発表されたその断片的エッセイをまとめたもの。
初めて知るエピソードもあれば、昔会った人に再会したように感じられる話もあって、しかも一編一編が極上の短編小説のような味わい深さ。
装丁や用紙の厚さも最適で、読書の楽しみを満喫できた。
遠く離れた、行ったこともないイタリアの風景や人間味に、なぜこんなに共感できるのでしょう。故郷や同胞を愛する人の気持ちは国を越えて共通だから? またそれを見つけ筆で著す内田さんの技が優れているから? -
Posted by ブクログ
「できるだけ行きにくいところを目指し、知られていない光景を探し出す。今までも、そしてこれからもイタリアを訪れることはないだろう人たちへ、自分が代わりにとびきりの眺めを切り取ってくる。その場にいっしょにいるかのように、音や匂い、木影や日向の温もりを感じてもらえるように伝えよう。そういう報道もあっていいのではないか」(あとがきより抜粋)
その言葉どおりの本だった。
イタリアの街角のバールのざわめき、エスプレッソの香りやミラノの冬の寒さ、聖堂の鐘の音、農村の乾いた空気と出来立てのチーズ、干潟の満ち引き、そういう一つ一つが目に浮かぶだけじゃなくて擬似体験したような感覚になった。
ミラノもヴェネツィアも -
Posted by ブクログ
内田洋子さんの本は、上質な絵画を観ているかのよう。
物語かと思うほど情景や人が美しく、読みながらうっとりする。
通勤電車ではなく、新宿御苑でレジャーシート引いて、美味しいカフェラテを飲みながら、ゴロゴロしながら読んだらさぞ素敵だったはず。
秋にぴったり。夏に読んだら夏にぴったり。
電車のアナウンスやベルでハッと気づいて現実世界に戻ってくると、自分の生活のガヤガヤやセカセカが際立ち、本当に同じ世界の生活の話?と信じがたくなる。
あとがきにある通り、イタリアの「音や匂い、木陰や日向の温もり」を感じ、「とびきりの眺め」に出会える、良質な一冊。 -
Posted by ブクログ
読書録「食べてこそわかるイタリア」4
著者 内田洋子、シルヴェリオ・ピズ
出版 講談社
P10より引用
“一年のうちで最も過ごしにくいこの時期を、余裕のある人が貧
しい人と分かち合って切り抜ける、というのがその主旨だったか
らだ。”
目次から抜粋引用
“よいクリスマスを
夏だけの住人
知る人ぞ知る贈り物
由緒あること
終わりのない旅”
イタリアの情報を発信するジャーナリストとその夫による、イ
タリアの食に関する話題を記したエッセイ集。
クリスマス料理からお酒についてまで、季節ごとの食風景が味
わいあるイラストと共に記されています。
上記の引用は、クリスマスについての一 -
Posted by ブクログ
イタリアの食、文化、自然、人々が、爽やかに軽やかに、それでいてしっかりと作り込まれた菓子のような味わいのある、こなれた美しい筆致によって、異国の地にある私の瞼に浮かんでくる。
頁を繰るのが惜しくなる。もう少し彼女の話すイタリアに揺蕩っていたくなる。
しかし、憧れやロマンチックだけでは済まないのが暮らしである。
『自由奔放で明るく創造性に富んだ国、というイメージの強いイタリアだが、実像は外面とはかなりずれている』(p.192)
老齢化、人口減少、格差、失業率、環境問題、オーバーツーリズム、移民問題、不安定な政治など、シリアスな現実にも触れている。この作品は2017年前後以降のものだが今でもさし -
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内田洋子の最新作。装丁の色が鮮やか。
日本経済新聞等の新聞に書かれたもの、および、「Webでも考える人」という新潮社のサイトに書かれていたものが1冊にまとめられたもの。
日本経済新聞に書かれていたものは、2021年7月から12月まで連載させていたもの。時期的には、コロナ禍が始まってから1.5年くらいが経過した時点のものであるが、まだまだ警戒が続いていた頃である。イタリアでのコロナ禍の様子がよく分かる。
本書に書かれたエッセイは、1編1編が短いものである。日本経済新聞に連載されていたもので言えば、余白が多く字も小さくない本書でも、3ページ程度のもの。内田洋子のエッセイは、けっこう沢山読んでいて