菅沼悠介のレビュー一覧
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◯この本は一言でまとめるとプロジェクトX。いつものブルーバックスよろしく、噛み砕いた説明で、地学の歴史から最新の研究まで網羅しているものの、読み物として面白いのである。
◯地学に対する知的好奇心を満たすように読み進めていたが、終盤に至って、それまでとは異なり、不穏な空気に包まれる。「団体」の登場である(調べてみると、どうも個人のようだ)。なんのことだと二度見した。注釈がここまでに記載されていたいわゆる注釈ではなく、筆者の思いが溢れている。団体からの抗議、妨害活動が語られ始めるのだ。
◯学術的なものがどのように合意されていくのか、過程を知らない者にとっては、様々な紆余曲折やよく分からない拘りの元に遅々として進まぬことがあることを知る。とりわけ驚いたのは、地学において地中海近辺でなければならないという主張。もはや近代以前の発想である。科学とは平等ではないのか、、
◯国際地質学連合における審査の二度にわたる延期、団体からの妨害、様々な困難を乗り越えて選定されたチバニアン。見に行ってみるのも感慨深いのかもしれない。 -
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地球温暖化で氷河が融解し、様々な災害が危惧されています。特に南極に存在する南極氷床は広さ日本の37倍、地球上の淡水の7割を占め、最も厚いところでは2000~4000mもの規模があり、これが融解した場合には世界の海面を58mも上昇させるだけのインパクトがあります。この巨大な南極氷床が、温暖化によって急速に失われつつあります。本書はこの南極氷床がいかにして現在の姿になったか、そしてこれからどうなるのか、という疑問に答えるため、南極氷床の研究の最前線を紹介しています。
このまま「温暖化が進んだらどうなるのか」この疑問に答えるには、現在より平均気温が高かった時代に南極氷床がどうなっていたかを調べると非常に参考になります。数百万年前の地球の気温や二酸化炭素濃度、氷床の量などを南極の氷や陸上の地層・岩石、南極周辺の海底堆積物などの分析から、どのように推定するのか、詳しく説明されています。
また単に”温暖化によって南極の氷が溶ける”といった単純な話ではなく、南極氷床の融解が世界を巡る海水の海洋大循環を止めてしまう可能性、南極氷床の融解に北半球グリーンランド氷床が関連している事など地球規模の自然現象の複雑さを詳細に解説しています。
300ページ弱の普通の新書サイズの本書ですが、さすがブルーバックスだけあって豊富な図表もあり内容充実の1冊です。しかも無味乾燥な専門書ではなく科学ノンフィクションとしても読める内容でした。 -
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チバニアンという単語は聞いたことがあったけど、何を指しているのかは全く知らない。そんな状態で読んでみたらおもしろかった。
紀元前77~13万年の間が地質年代チバニアンとして命名された。巨大な磁石としての地球の性質を分かりやすく解説してくれる一冊。
■方位磁針は真北を差さない。平面方向にズレる(偏角)地球の中心方向も差している(伏角)
■レーマンのP波観測に関する論文のタイトル「P´」がカッコいい(中二的に)
■地球の外核は導電性の液体金属から成り、核の表層部と深部の密度差による対流(地球ダイナモ作用)で磁場が生成させる。
■地球の地磁気は何度も逆転していた。発見したのはフランスのブルン、明らかにしたのは京大の松山基範博士。その原因は現在でも諸説あるようだ。
■溶岩は加熱時に磁性を失い、冷えるときに磁場情報を残留磁化として記録する。電子の向きが偏った鉄やコバルトやニッケルは強磁性をもつ。
■地磁気の極性年代には先人研究者の名前がつけられる。ブルン、松山、ガウス、ギルバートなど。
■地磁気は太陽風や紫外線から地球を守るバリアとなる。
■地磁気の逆転は、過去80万年間で一度だけだが、過去250万年スパンでは11回発生している。おそらく今後数百年は地磁気逆転はなさそうたが、いざ逆転すると著しい気候変動が予想される。
■地磁気の強さや磁極位置は動き続けている。
■房総半島のは白尾火山灰が堆積しており、残留磁化と放射線同位体比計測から、地磁気逆転の年代が特定された。この地質年代(紀元前77万~13万)がチバニアンと名付けられた。
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千葉県市原市地層の GSSP 認定と、更新世「チバニアン」期命名のニュースは記憶に新しいところ。その旬を逃さずに、地磁気研究の歴史、基礎から最新の研究成果までを網羅した著作を出版に漕ぎつけたブルーバックス編集部の手腕は驚きを通り越して、人外の何かを見ているようだ。池谷裕二、中川毅などの著者発掘に続く快挙で、最近のブルーバックスは本当に元気だ。
惜しむらくは本書にも触れられている「団体」の存在だが、論理と理性が主体的役割を果たす学術研究の世界と言えども、こういった障害を乗り越えられなければ、事は成せないのだと思ってあきらめるしかない。そういう障害をものともせず、GSSP認定と地磁気の謎の究明に邁進した(している)著者や関係各者に最大限の賛辞を送りたい。 -
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地球の地磁気が過去に逆転した痕跡を観察できる地層として、千葉県の市原市の地層が一躍有名になったのはつい最近のことですが、本書ではそもそもなぜ地球に地磁気があって、その果たしている役割や、環境に与える影響について解説してくれています。
地磁気や磁石に関する歴史の紹介では、中国が都市建設に際して風水のために磁石で方位を測ったことから真北を基準としていないのに対して、日本の都が真北を基準としているのは、とても興味深い対比でした。また方位には偏角と伏角があることも知りました。地磁気の方向や強弱により、こうした角度も影響を受けるとのことです。興味深かったのは、体内に磁性鉄をもつ生物が、地磁気を感知して行動するということでした。地磁気逆転現象は、フランス人のブルンと日本の松山が発見者として名高く、直近の地磁気逆転は77万年前だそうです。市原の地層でもこの痕跡が観察できる、とのことですから一度是非見に行ってみたいと思いました。そもそも地層から地磁気の逆転が観察できるのは、岩石や溶岩が磁性を固定するからですが、当時の地磁気の方向がこうして判明する、というのは大変神秘的な現象だと感じました。地磁気が大きく北極や南極からずれることをエクスカーションというそうですが、直近では4万1千年前に起こったそうです。フランスの地名からラシャン・エクスカーションと名付けられていますが、この時期がネアンデルタール人の絶滅と時期的に重なるため、影響があったのではと推測されているようです。エクスカーションで地磁気が弱まり、オゾン層が破壊され紫外線が強まったことによる影響と考えられているようです。地球の地磁気が太陽風から生物を守っているのです。1859年に太陽のフレアが突発的に発生すると、プラズマと磁場が一緒になって宇宙に放出され、その影響が地球に及んだことが紹介されています。この時、電化されていた国、例えばアメリカでは磁気嵐で電信ネットワークがダウンしたのですが、同様のイベントが今発生した場合の社会、経済への影響は甚大でしょう。地磁気がない火星では太陽風の影響によって大気や水がなくなってしまったようです。地磁気が地球上の生命に及ぼす影響の大きさを認識させられた良書でした。 -
Posted by ブクログ
「チバニアン」の名前は話題になったが、その意義は本書で初めて理解した。意外だったのは、今から77万年あまり前という地学的スケールではつい最近、ジュラ紀とか白亜紀よりずっと現在に近い時期を示すものということと、そこに地磁気逆転と氷期・間氷期の境を含んでるということ。
本書は、地磁気逆転の発見やその調査方法について詳しく描かれている。ただ、本書のサブタイトルを見て地磁気逆転のメカニズムが知りたかったのだが、それはまだよく分かっていなのか、あまり触れられていないのが残念。いずれにせよ、岩石や氷床に含まれる微小な情報を読み取るという極めて高い感度の技術に驚かされる。
それにしても、地磁気があるからこそ地球に大気や生命が存在しているのだと思うと、あらためて地球という存在の絶妙さに感慨を覚える。