菅沼悠介のレビュー一覧
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◯この本は一言でまとめるとプロジェクトX。いつものブルーバックスよろしく、噛み砕いた説明で、地学の歴史から最新の研究まで網羅しているものの、読み物として面白いのである。
◯地学に対する知的好奇心を満たすように読み進めていたが、終盤に至って、それまでとは異なり、不穏な空気に包まれる。「団体」の登場である(調べてみると、どうも個人のようだ)。なんのことだと二度見した。注釈がここまでに記載されていたいわゆる注釈ではなく、筆者の思いが溢れている。団体からの抗議、妨害活動が語られ始めるのだ。
◯学術的なものがどのように合意されていくのか、過程を知らない者にとっては、様々な紆余曲折やよく分からない拘りの元 -
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チバニアンという単語は聞いたことがあったけど、何を指しているのかは全く知らない。そんな状態で読んでみたらおもしろかった。
紀元前77~13万年の間が地質年代チバニアンとして命名された。巨大な磁石としての地球の性質を分かりやすく解説してくれる一冊。
■方位磁針は真北を差さない。平面方向にズレる(偏角)地球の中心方向も差している(伏角)
■レーマンのP波観測に関する論文のタイトル「P´」がカッコいい(中二的に)
■地球の外核は導電性の液体金属から成り、核の表層部と深部の密度差による対流(地球ダイナモ作用)で磁場が生成させる。
■地球の地磁気は何度も逆転していた。発見したのはフランスのブルン、明ら -
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千葉県市原市地層の GSSP 認定と、更新世「チバニアン」期命名のニュースは記憶に新しいところ。その旬を逃さずに、地磁気研究の歴史、基礎から最新の研究成果までを網羅した著作を出版に漕ぎつけたブルーバックス編集部の手腕は驚きを通り越して、人外の何かを見ているようだ。池谷裕二、中川毅などの著者発掘に続く快挙で、最近のブルーバックスは本当に元気だ。
惜しむらくは本書にも触れられている「団体」の存在だが、論理と理性が主体的役割を果たす学術研究の世界と言えども、こういった障害を乗り越えられなければ、事は成せないのだと思ってあきらめるしかない。そういう障害をものともせず、GSSP認定と地磁気の謎の究明に -
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地球の地磁気が過去に逆転した痕跡を観察できる地層として、千葉県の市原市の地層が一躍有名になったのはつい最近のことですが、本書ではそもそもなぜ地球に地磁気があって、その果たしている役割や、環境に与える影響について解説してくれています。
地磁気や磁石に関する歴史の紹介では、中国が都市建設に際して風水のために磁石で方位を測ったことから真北を基準としていないのに対して、日本の都が真北を基準としているのは、とても興味深い対比でした。また方位には偏角と伏角があることも知りました。地磁気の方向や強弱により、こうした角度も影響を受けるとのことです。興味深かったのは、体内に磁性鉄をもつ生物が、地磁気を感知して行 -
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「チバニアン」の名前は話題になったが、その意義は本書で初めて理解した。意外だったのは、今から77万年あまり前という地学的スケールではつい最近、ジュラ紀とか白亜紀よりずっと現在に近い時期を示すものということと、そこに地磁気逆転と氷期・間氷期の境を含んでるということ。
本書は、地磁気逆転の発見やその調査方法について詳しく描かれている。ただ、本書のサブタイトルを見て地磁気逆転のメカニズムが知りたかったのだが、それはまだよく分かっていなのか、あまり触れられていないのが残念。いずれにせよ、岩石や氷床に含まれる微小な情報を読み取るという極めて高い感度の技術に驚かされる。
それにしても、地磁気があるからこそ