佐々 涼子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ノンフィクションの迫力に圧倒されたというのが、正直な読後感。筆者の綿密な取材とその筆力によるのが大だろうが。
3.11で被災し、従業員たちの死に物狂いの働きによって再生した日本製紙石巻工場の物語。
日本の製紙業の盛衰は自分たちの工場にかかっているのだとの誇りを持って、是が非でも立ち直らせようとする男たちの熱い思いが行間から伝わる。
津波の被害により泥水の中に埋もれ瓦礫の堆積した工場、誰もが復興に不安な気持ちでいるときに、工場長が、復興を宣言する。
「そこで、期限を切る。半年。期限は半年だ」と。
期限を切って社運を託された彼らが、必死になって立て直す様は、感涙もの。
彼らが何故、これほど必死になって石巻工場を立て直すのだろうか、との答えとして著者は、我々の手元にやってくる本のため、と記す。
工場長が明かす。「とにかく良い本、良い紙をと、お互い一生懸命でした」。
取材で、各出版社によって文庫の色の違いも示される。
「講談社が若干黄色、角川が赤くて、新潮社がめっちゃ赤。普段はざっくり白というイメージしかないかもしれないけど、出版社は文庫の色に『これが俺たちの色だ』っていう強い誇りを持っているんです」
思わず各文庫を取り出して比べてしまった。
その他、本の装丁や彼らの仕事に対するこだわり、出版不況の現状等が数々綴られている。
我々が当たり前のように手にする本が、彼らの巧まざる努力で造られていることを、ノンフィクションライター=佐々涼子氏によって明らかにされた。
製紙工場の人たちの仕事のおかげで、読書が楽しめることに改めて感謝したい。 -
Posted by ブクログ
2023.12.31。イベントの待ち時間が予想できたため、外出に持参して読み始めた。
東日本大地震で被災した、日本製紙石巻工場の話だ。
当時、この工場の情報は耳にしていたのだろうか?覚えてない。
まずこの本を読んで、いかにこの石巻の製紙工場が"自分にとって"大事か、思い知らされた。この工場がつくった紙でつくられた本の作品名がいくつか挙げられているが、どれも読んだことあるもの。本の紙って、もっとオートメーション的に、どこでも誰でも作れるようなものだと思ってた。思えば、ファッション雑誌、月刊漫画誌、文庫本、単行本、色んな本の紙を触ってきて、それぞれ違うなとなんとなく知ってはいたはずなのに、考えもしなかった。
そして、震災当時のリアルな話。どこから助けを呼ぶ声がしているかもわからない、どこかの瓦礫の中、あちこちから声がするのに、瓦礫や危険な汚濁水で助けに行けない。目の前で人が波に攫われていく。助けられなかった、見殺しにした。
せっかく無事だった民家やコンビニを襲って、物をとっていくひとたち。生きるためにやってるんじゃない人たち。
根も歯もない噂話、罵倒。明るくいようとすると、なんでこんな状況で笑うんだと責める人たち。
震災なんてなければ、そんなもの見ることもすることもなかったはずの人たち。
自分を見失ったら生きていけない。そんな中でもしかしたら、日本製紙石巻工場の復興目標は、従業員に道筋を持たせてくれたのかもな、と思った。
2024.1.1になってすぐ、石川県を中心に震災が。
とにかく早く逃げて、津波からは逃げて生きてほしい。大津波警報を聞きながら、ひたすら願った。