上畠菜緒のレビュー一覧
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喪失のお話だけど、悲しみに充ちた雰囲気ではなく、悲しみを分かち合ったり、ケアされたり。人と繋がることで主人公が変わっていく。
あたたかい。寂しい。あたたかい。
こんなふうに思いが通じ合うことやみんなが温かく優しいことは、現実では難しいのかもしれない。だけど、こういう物語はすごく救いになる。
(以下ネタバレ。)
子ども時代から、主人公に近づく人たちが度々いるのに、人へ関心がない主人公。周りを寂しくさせていて、そのことにピンときていない。主人公も確かに誰かと繋がることを求めていて、だけど、うまくできなくて、どんどん閉じていって。話ができる動物たちとだけ過ごすようになっていく。
主人公が初めて引き受けた存在が蛇であり、そのあとのソノであり。
蛇の選択を静かに見送ったこと、この時に父が残したメッセージ、物語の中で大きな核になる部分だった。
私自身にも、すごく響いて、大切な言葉になった。
安全基地になる存在が必要。心が育っていったけど、大人になった主人公は、やっぱり人と距離を置いたまま。実母との確執も継続している。
父もソノも、彼女が外へ出ないことを心配していた。(ここでふとソノは父だったのか?と思った。違うとしてもかなり近い存在で主人公を見守っている対象という気がする。)
そこに、まず、少し強引に主人公に近づくキキの存在が、変化をもたらしていく。ソノ以外にも、つばめちゃん、キキ、真田くん、児玉先生、研究所室のメンバー、いろんな人がいろんなかたちで主人公を見守っている。そのことに気づいた主人公は次のステップに進もうとする。
主人公にとって、近寄りがたい存在だった母も、母には母の事情があって、少しずつ母子関係の緊張も溶けていく。母が主人公を大切に思っていることが主人公へきちんと伝わる。そこが、この物語をとても好きだと思った部分のひとつ。
本の帯に、「爬虫類系ハートフルノベル」って書いてあって笑った。その肩書は未だに謎だけど、とても素敵な小説だった。 -
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ネタバレ動物の声が聞こえることがある美苑。怪我をして保護した蛇と会話ができるようになるが、人間との付き合いは苦手。24になった美苑はだいすきなイグアナのソノとの暮らしを守るため、婚活に挑むことになる。
表紙のイメージの優しい花園のイメージのまま進んでいくストーリー。つばめちゃんやキキちゃんや田中さんと仲良くなれてから、自分のことを掘り下げていって、やりたいことに挑戦できて安心した。私もソノと同じ気持ちになってた。関係を維持する力については、今自分のことで手一杯になってる自分に重ねて反省。
コミュ力が高いと思っていたキキちゃんが人間関係のハウツー本を読んでいたと分かっても「無意識にできちゃうって人の感覚より、研究と実践で身につけた知識の方が信頼できる」と答える美苑、格好いいな。
「ソノが私を置いて行きたいなら、それを受け入れることにする。これからソノが満足するくらい、ちゃんと生きるって約束する。だからまた会ったときには、あとは永遠に一緒にいて」 -
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「イグアナ?なんかグロテスクだなあ」が、最初の気持ちでしたが、表紙の絵は、そんな思いを吹き飛ばすように、夢があってとっても素敵!
主人公の八口美苑さんの小学生から大学院生までの、心の揺れ動きを読んでいると、励ましのエールを贈りたくもあり、共感する部分もありました。
彼女は、人との距離感をつかむこと、自分の気持ちを言語化することを苦手としていますが、ヘビや、イグアナとは心で会話ができます。
両親、友達との関係に悩む彼女の心が、最後には明るい方向に向かっていく過程は、読んでいて気持ち良かったです。
結婚だけに縛られない人間関係への気づき、本当に自分がやりたいことを見つけて、自信を持って生きていくことの大切さが伝わる小説です。
どの世代が読んでも良い本ですが、特にこれから社会に出る若者に、特におすすめです。 -
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植物学者で大学教授の父親と有名な華道家の母を持つ八口美苑が主人公。矢口家は資産家で御屋敷と呼ばれる母屋の他に父が建てたアトリエがある。動物(爬虫類や両生類)とは会話できるが、人とはうまく馴染めない美苑は10歳で父を亡くし、高校生の頃から、母が寄り付かないそのアトリエで、イグアナのソノと共に暮らしている。
読み始めはやや苦戦。主人公になかなか共感できず、物語の方向も見えにくい。何しろ主人公を含め主要人物の多くが対人コミュニケーションに難がある。他人との距離を取りすぎる主人公と、距離感ゼロの後輩。さらに主人公以上に理解しづらい性格の母親。しかし、美苑は小学校時代から同級生から「変」なりに受け入れられ、いじめのような展開にならないのが救い。
後半、余命宣告を受けた母から「半年以内に結婚相手を探すように」と命じられる。「猫を飼うと結婚できない」と言われるが、イグアナも同じ。ソノと会話できる美苑はその関係に安住し、結婚など考えもしてなかった。それでもソノや後輩の助けを受け、不器用ながら少しずつ周囲との関係を築き始めるあたりから物語はぐっと良くなっていく。
母の思いに触れ、静かで温かな結末を迎えるラストは心地よく余韻が残る -
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とても好きなお話でした。
生き物と話せる女の子の話、というとファンタジーな感じですが、とても自然なことのように思える話の流れ。
美苑は子どもの頃から人との関わりが苦手で、でも生き物の小さな声を聞くことができる。子ども時代のヘビとのエピソードもすごく良いし、その後長く一緒に暮らすことになるイグアナのソノとの関係性は微笑ましくて、読んでいて心が温かくなります。
ソノには心を開いていて本当の家族のよう。そんな美苑ですが、生きていく上で人と関わらずに生きていくことはできない。実は彼女の周りには彼女を見守って支えてくれている人がいる。つばめちゃん、キキちゃん、児玉先生、お父さん、母上も。色々あってそのことに気づき人生を歩みだす…。
ありていに言えば美苑の成長物語なのですが、物語の終盤でわかるソノの想いに心が潤む…。泣きそうになりました。ちょっとだけ魔女の宅急便のキキと猫のジジを思い浮かべたりしました。
素敵な空気感のある文章で心地よい読書時間でした。出会えて良かった一冊。