友原章典のレビュー一覧
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■全体的な幸福感が高いときには仕事の満足度と転職の関係性が弱くなる。一方、全体的な幸福感が低いときには仕事の満足度が低い人ほど転職する。つまり仕事の満足度が高いか低いかに関わらず全体的な幸福感が低い人ほど転職しやすい。
■第1章「幸せ(ポジティブ)な従業員は業績を上げるのか」まとめ
・気分がよくなると情報処理能力が上がるが、その効果は長く持続しない可能性が高い
・家族の不幸により情報処理能力は下がるが、時間がたつとその影響は小さくなる
・幸せだと成果が出るのは労働意欲が増すからではなく、効率的に働くようになるため
・従業員当たりの売上高は仕事の満足度とは無関係
・全体的な幸福感が高いときには、仕事の満足度が高くなくても転職をしない可能性がある
・仕事の満足度が高いほど企業価値が上がるが価値がかくなるまでには時間がかかる
・従業員を幸せにする労務管理は費用対効果から推奨できない可能性が高い
・生徒の学力向上には先生が幸せであるよりも家庭環境や教授法の改善の方が効果的
■意外にも交渉の途中で怒った感情に変わる相手の方が一貫して起こっている相手よりも良い印象を持たれる。
ずっと怒っている人は、そういう性格だと思われて嫌われてしまう。逆に途中から怒る人は理由があったから怒ったと解釈されて、それほど不快に思われないらしい。一方、交渉の途中で怒りから幸せな感情に変わる相手は、一貫して幸せな感情を示す相手よりも悪い印象を持たれる。
■交渉結果を有利にまとめたいのであれば、ただ怒ればいいわけではなく幸せな感じで接し始めて、途中で怒るのが得策となる。また、途中から怒る人は一貫して怒っている人よりも良い印象を持たれるので今後の関係性の観点からも望ましい。
■第二章「不幸せ(ネガティブ)な従業員ほど重要だ」まとめ
・仕事た正当に評価され、自分の感情が認識できる状態では、不安は創造性を向上させる
・認知能力が高い人は心配症であるほど管理職としてのパフォーマンスが良好
・力関係の強い人は怒ることで交渉が有利になる
・最初から怒っているよりも途中から怒り出す方がよい交渉結果を導ける
・途中で怒りだす方が一貫して怒っているよりも良い印象を持たれる
・怒ると一時的に創造的になる
・身体的接触を伴う競技のアスリートは怒りでパフォーマンスが向上する可能性がある
・暗記のような学習では怒っている先生に指導された学生の方が高い学習効果を示す
・ネガティブな気分の人は組織の存続が危ぶまれるとき協調的に行動する傾向がある
・ネガティブな気分の人は、ポジティブな気分の人より慎重に考える
■マインドフルネスとは直訳すると「心(マインド)が満ちていること(フルネス)」。わかりにくい概念だが、一般的には「価値判断をせずに一瞬一瞬に意識を向けること」と定義されている。キーワードは「現在」。目の前のことに集中していない状態である「マインド・ワンダリング」(心がさまよっている状態)の反対と考えればわかりやすい。
■マインドフルネスにはポジティブ心理学のようなほかの手法とは違う特徴がある。それは、価値判断をしないこと。悩みや苦しみは、良い・悪い・正しい・間違いという価値判断に起因するからだ。例えば、人はこうあるべきだと思っていると、そのように振る舞えない自分を不甲斐なく感じて、自分自身を責めてしまう。そのため、マインドフルネスでは悩みや苦しみといったネガティブな感情が沸いても、無理にそれを抑圧しない。心が反応するのは自然だし、感情に善悪や正誤はない。ありのままの現実を受け入れることでかなり気分が楽になる。ただし、悩みや苦しみなどの感情が解消されるわけではない。ただ、身の回りの出来事に過敏に反応しなくなり、以前よりも動揺しなくなる。すると悲観的に考えなくなる。
■第3章「マインドフルな従業員」まとめ
・ストレスが多い職場ではマインドフルな従業員ほど良い業績
・マインドフルネス瞑想により集中力が増加し、記憶力も向上
・マインドフルネスの訓練で仕事の満足度が増加し感情的消耗感が減少
・職場でのヨガやマインドフルネスの訓練で睡眠の質や自律神経のバランスが改善
・マインドフルネスの訓練はストレスからの回復力(レジリエンス)を向上
・マインドフルネス瞑想を含んだプログラムは燃え尽き症候群を改善する可能性がある
・ストレス管理プログラムによって医療費の請求が下がる可能性がある
・上司がマインドフルであれば部下の疲弊度は低く業務評価は高い傾向にある
■部署が成果を出すのは怒っていて強面の上司かそれとも幸せそうで元気な上司なのか。アムステルダム大学のファンクリーフらは実はどちらがよいかわからないとしている。効果的な接し方は部下たちの性格による。
彼らの研究によると協調性(若しくは調和性)の低い部下のグループでは怒っている上司の方が成果を発揮したのに対し協調性の高い部下のグループでは上司が幸せな感情を示した方が成果を発揮した。つまり、ケースバイケース。
■上司と部下の相性
協調性の高い部下には上司の幸せな感情がうまく作用し、逆に協調性が低い部下には上司の怒りの感情がうまく作用する。協調性の高い部下は他人に礼儀正しく接し、競争よりは協調を好む傾向があるため、上司にも自分を同様に扱ってくれるように期待する。また、幸せの感情は友好関係や社会的繋がりを促進するので、仲のいい関係を好む協調的な個人とは相性がよい。
一方、敵意や論争と関係する怒りの感情は協調的な人とは相性がよくない。社会の調和を重視する部下にとっては上司の怒りは受け入れがたい。部下の期待と上司の感情表現が一致しないと上司の怒りは成果をもたらさない。
協調性の低い人の場合も同様な理由だ。協調性の低い人は議論になることも多く論争になることを躊躇しない。また、怒りは敵意や論争と関係するので非調和とは矛盾しない。このため、部下が社会の調和を重視しないときには上司の怒りは許容範囲であり部下の期待と上司の感情表現が一致するため上司の怒りは成果と結びつく。
このほかにも仕事の負担の感じ方に違いがみられた。協調性の高いグループでは幸せそうな上司よりも怒った上司の下で働いた方が作業量が多いと感じていた。怒っている上司の下で働いた部下たちは、その相性の悪さゆえに仕事を負担に感じたのだろう。一方で協調性の低いグループでは怒っている上司と幸せな上司の間で部下が感じる仕事の負担感に差がなかった。
上司の在り方に関して、部下に優しく接するべきか、それとも厳しく接するべきか、どちらも間違っていない。上司と部下の相性が重要。グループのパフォーマンスへの影響は、上司の感情表現が部下によってどのように判断されるかにもよる。結局は相性。
■リーダーの情動表現と作業の性質について、リーダーが幸せな情動を示した場合には分析的な作業よりも創造的な作業において良好なパフォーマンスを示した。一方、リーダーが悲しむ情動を示した場合には創造的な作業よりも分析的な作業において良好なパフォーマンスが示された。また、リーダーが中立的な情動を示した場合には創造的な作業と分析的な作業の間でパフォーマンスの差はみられなかった。
■第4章「テレワーク時代の幸福な働き方」まとめ
・在宅勤務により従業員のパフォーマンスが向上。離職を抑制し、企業業績もアップ
・在宅勤務に向かない従業員の存在や、キャリア形成への悪影響といった懸念もある
・主観的なウェルビーイングは組織の業績と正の相関があるが、その程度は大きくない(若しくは主観的なウェルビーイングは組織の業績を決める一要因に過ぎない)
・協調性の低い部下のグループでは怒っている上司の方が成果を発揮
・悲し気な(幸せそうな)上司のもとでは部下の分析的な(創造的な)パフォーマンスが向上
・部下による上司の評価は、仕事の成果とは一致しない:幸せそうな上司の方が悲し気な上司よりも部下による評価が高い
・怒った(幸せな)リーダーの方が情報に基づいて理性的に判断する(感情的な反応をしやすい)グループのパフォーマンスが良好 -
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移民を受け入れることによる影響を経済学の観点で多面的に分析している。冒頭で筆者は「人道的な観点は入れない」と明言しており、タイトル通り経済面のみで論じている。
経済学であると同時に、本書は統計学の本だ。よく言われる「移民が仕事を奪う、治安を悪化させる」という論議に対し、数々のデータを元に異を唱える。その人にとって「損か得か」でものの見方は都合よく切り取られ、結局は地域、職種、個人などなどの状況(都合)で移民受入れの善し悪しが変わるということをこれでもかと挙げている。
「自分にとって損か得か」だけで世間を判断していないか、客観的に振り返ることが肝心。 -
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移民の是非を考える時に争点となるいくつかのポイントについて、経済学の観点から考える本。特に面白かったポイントをいくつか。
・移民を受け入れると雇用環境は悪化するか?→移民と"競合"しない人は賃金が下がらない。
・移民が子育てや介護サービスにおける人手不足を補い、日本女性の社会進出を促進するか?→そうしたサービス料を支払う余裕のある高賃金の人はその料金をペイできるほどに生産性のある仕事ができるため、女性活躍は促進される。
⇒少子高齢化が進み労働人口が減少するなかで、移民を受け入れることによるマンパワーが必要なのでは?と思うことがあるが、受け入れた場合移民と"競合"してしまう国民にとっては厳しい展開が待ち受けているのかもしれない。移民のマンパワーに取って代わられないほどに高技能、高学歴、高レベルの資格等、高いスキルがある人にとっては寧ろ良いが、取って代わられる可能性のある人にとっては自分のポジションを脅かすこととなる。そうなると今まで以上に日本人同士の間の格差が拡大する可能性はあるのかもしれない。
また、本書では触れられていなかったが、日本は将来的に「移住したい国」で在り続けることができるのだろうか。「安全で住みよい国」として選ばれることはあったとしても、「稼げる国」として選ばれるだろうか。中国やシンガポール等、わざわざ海を渡らなくても賃金が上昇傾向にある国が他にあって、平均賃金の上がらない日本に移民はやってくるだろうか。…というそもそも論を考えてしまった。 -
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ネタバレ移民の受け入れによって、賃金や雇用機会が奪われるかどうか。YESもNOもどちらの研究結果を存在するが、それは分析手法・観点の違いによるところが大きい。たとえば移民の受け入れ前後での賃金変動を、(もろに賃金下がりそうなイメージの)高卒者を対象に調査したとして、結果「下がる」となったとしても、分類をもっと細かくしていわゆる職人系の技能就職者に絞ったとすると彼らの賃金は下がってなかったりする。
おおざっぱにいうと、代替的な仕事は移民に奪われるし、非代替的・補完的な仕事は移民に奪われない。つまり移民の受け入れによって賃金や雇用機会は減らないという結論になる。さらにここに地域の議論も絡んでくる(労働不足の都市部は影響ないけど地方は影響あるな)ので、事態は複雑。総合的かつ局所的に判断する必要がある。
結局相手が移民であれ市民であれ、差別化できてる人間になれているかどうかで人の経済的価値は決まるってこと。
またより広義な解釈で、移民が経済にどう影響するかも記載あり。たとえば移民を受け入れた国にとって、その外国との貿易は輸出より輸入が増えることになり、経済的にはマイナスになる。ただし知的財産権など無形資産に関する収入は増えるプラスの面もある。また非技能労働者が増えると技術革新が遅れるなど、もっと俯瞰的に影響を観察することもできる。観点が多すぎて理解と結論づけが難しいが、移民をフックに経済活動を学ぶことができ良書。 -
Posted by ブクログ
面白そうなテーマがたくさん並んだ目次
序 章 移民と日本の現在
日本の現状国籍、都道府県、産業による違い近年の主
要な法改正 「移民の経済学」の有用性
第1章 雇用環境が悪化するのか
1 市民の賃金を下げるのか?
代替的か、補完的かキューバ移民の事例とボージャスの反論
労働者の分類別に比較する 「低賃金ではやりたくな
い仕事」をしているのか
2 長期的には賃金が増えるのか?
二つの議論の対比オッタビアーノとピエリの反証
3 雇用が奪われるのか。
研究結果が二転三転する理由 ダストマンらの指摘 「格
下げ」の影響雇用をめぐる入れ替え効果と生産性効果
日本の場合学者たちの立ち位置国際機関の傾向
第2章 経済成長の救世主なのか:
_1_国境をなくせば世界は豊かになるのか。
国境がなくなれば生産性が上がる理由大量の移民が先進国を変質させたならシミュレーションの扱い方
2 貿易振興で経済が活性化するのか
移民が増えると貿易が盛んになる理由消費財の輸出拡大
輸入への影響の方が大きい?貿易拡大の影響知的財産
貿易への期待移民と知的財産収入日本の知的財産収入
への影響」
3 直接投資を促進するのか。
少子高齢化は人とお金を減少させる直接投資への短期的影響と長期的影響技能労働者の場合、非技能労働者の場合
地域経済への影響 地方創生と観光
第3章 人手不足を救い、女性活躍を促進するのか。
1 看護師不足を解消するのか。
詳細な分類で見る市民看護師は減るのかなぜ辞めるの
か日本における外国人看護師
2 建設業での賃金が下がるのかめ
賃金の低下、市民の離職消費者への恩恵若い建設業労
働者が減る日本一
3 女性の社会進出が加速するのか
移民は高給女性の勤務時間を増やす移民は家事負担を減らすのか女性の社会進出は男性の所得格差を拡大する少子化を促進するか労働と出産の相関育児支援サービスの恩恵を受ける人たち
第4章 住宅・税・社会保障が崩壊するのか
1 生活費が安くなり、購買力が上がるのか』
価格低下の実態弱者が犠牲に日本における試算
2 家賃や住宅価格が高騰するのか
価格低下の理由家賃や住宅価格の上昇北海道のリゾー
ト地の例
3 スラム街が生まれて資産価値が低下するのか。
移民が増えると住宅価格が下がるという説狭い範囲では下がり、広範囲では上がる富裕地区と貧困地区の分断
4 税・社会保障の負担が増えるのか
移民は社会福祉 サービスの利用が少ないイギリスの移民の財政貢献
移民の教育費用は出身国の負担
アメリカでは財政貢献は低い
分析と現実のギャップ
外国人労働者受け入れと日本の消費税
第5章 イノベーションの起爆剤になるのか
1 低技能労働者が増えると技術革新が遅れるのか?
技術革新が遅れ、雇用が守られる効率的な仕事の割り振りへの貢献、日本は変われるか
2 技術立国には外国人研究者が必要なのか
高技能の移民への期待奨学生と自費留学生の比較
sTEM(科学 技術 工学 数学)系の移民の影響
短期的な貢献
科学技術分野が乗っ取られるのか
技能の波及効果と締め出し効果
「乗っ取られる」可能性が高い
3 受け入れる国を選別すべきか
出身国の選別は合理的か外交官の駐車違反が示唆するもの
出身国により異なる移民のタイプ
第6章 治安が悪化し、社会不安を招くのか:
1 多文化共生で地域の結びつきが薄れるのか。
接触仮説と紛争理論パットナムの研究の衝撃パット ナ
ムへの反論民族多様性は信頼を低下させない社会関係
資本は好ましいか住みよい社会のために
2 犯罪が増加するのか、
先行する不安イギリス移民の第一波と第二波の違い犯
罪率を減らす可能性が高い日本における外国人の犯罪率
アメとムチ、どちらの制度が有効か
3 伝染病が持ち込まれるのか。
伝染病持ち込みのリスクは低い経済学との関係性日本
に求められる検疫体制
4 誰が移民に賛成・反対するのか、
技能水準と賛否の関係先進国の傾向、発展途上国の傾向
日本人の態度
終 章 どんな社会を望むのか。
日本の急激な高齢化それでも成長するためには現状維
持、多文化共生、技術革新アメリカでの体験得られる
もの、失うもの一
あとがき
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Posted by ブクログ
日本人ファーストが選挙で話題になりましたが、個人的には外国人労働者の方に、日本の経済はとても助けてもらっていると思っています。わたしの勤める社会福祉分野も、人手不足が顕著なのですが、まだまだ偏見を含めたやりたくない意見が大勢を占めていて、現場の疲弊はたまらないです。偏見をなくすためにも、こういった情報には、多くの人が触れてほしいです。
移民のために、もとからいた市民が賃金や治安で不利益を受けると言われがちですが、経済学上ではどうなのか。この本には、様々な分析の仕方と考え方が、偏見なく提示されています。
切り取り方次第で分析結果は様々に変わるため、どんな視点やスパンで考えていくのか、自ら主体的に向き合わないと、刺激ばかり強調した情報に振り回されてしまうと思いました。