【感想・ネタバレ】移民の経済学 雇用、経済成長から治安まで、日本は変わるかのレビュー

あらすじ

すでに250万人の「移民」が暮らす日本。2018年末に入管法を改正し、さらなる外国人労働者の受け入れ拡大に舵を切った。移民が増えると、私たちの生活にどのような影響があるのか。本書は、雇用や賃金、経済成長や物価、貿易、税と社会保障、さらに科学技術、治安・文化に至るまで、主要な論点を網羅。経済学の研究成果をもとに分析することで、感情的な議論を超え、移民がもたらす「損」と「得」を明らかにする。

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Posted by ブクログ

経済学が移民問題をどのように見ているのかざらっと教えてくれる良書だと思う。経済学がモデルの仮説に付帯させる諸仮定(if …)が違えば結論も異なり、移民問題に関する分析結果は相反するものがほとんど。だから経済学者は信頼できないといえないこともないけど、結果相違をみて私たちはどちらに転んでもやっていく度量があるかが移民受け入れには重要なんだろうなと思った。

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2025年06月17日

Posted by ブクログ

移民を受け入れることによる影響を経済学の観点で多面的に分析している。冒頭で筆者は「人道的な観点は入れない」と明言しており、タイトル通り経済面のみで論じている。

経済学であると同時に、本書は統計学の本だ。よく言われる「移民が仕事を奪う、治安を悪化させる」という論議に対し、数々のデータを元に異を唱える。その人にとって「損か得か」でものの見方は都合よく切り取られ、結局は地域、職種、個人などなどの状況(都合)で移民受入れの善し悪しが変わるということをこれでもかと挙げている。

「自分にとって損か得か」だけで世間を判断していないか、客観的に振り返ることが肝心。

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2024年06月20日

Posted by ブクログ

【印象に残った話】
・移民が職業、賃金、予算や文化的同化に及ぼす影響についての学術論文を確認すると、以下のことが言える
・職業の面では、後進国で単純労働に就いていた人でも、先進国に移住し頭脳労働に転身することも可能となる
・賃金の面では、流出した移民からの送金が、本国に残された住民に還流して豊かにな
・予算の面では、優秀な人材を国外輩出するために本国の学校への投資が活性化する
・文化の面では、家族が分散することで、移住先から本国へ、技術とイノベーションの国際移転がよりスムーズになる
【アクションプラン】
・移民のマイナス面を考える

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2021年06月09日

Posted by ブクログ

 移民の是非を考える時に争点となるいくつかのポイントについて、経済学の観点から考える本。特に面白かったポイントをいくつか。

・移民を受け入れると雇用環境は悪化するか?→移民と"競合"しない人は賃金が下がらない。
・移民が子育てや介護サービスにおける人手不足を補い、日本女性の社会進出を促進するか?→そうしたサービス料を支払う余裕のある高賃金の人はその料金をペイできるほどに生産性のある仕事ができるため、女性活躍は促進される。

⇒少子高齢化が進み労働人口が減少するなかで、移民を受け入れることによるマンパワーが必要なのでは?と思うことがあるが、受け入れた場合移民と"競合"してしまう国民にとっては厳しい展開が待ち受けているのかもしれない。移民のマンパワーに取って代わられないほどに高技能、高学歴、高レベルの資格等、高いスキルがある人にとっては寧ろ良いが、取って代わられる可能性のある人にとっては自分のポジションを脅かすこととなる。そうなると今まで以上に日本人同士の間の格差が拡大する可能性はあるのかもしれない。

 また、本書では触れられていなかったが、日本は将来的に「移住したい国」で在り続けることができるのだろうか。「安全で住みよい国」として選ばれることはあったとしても、「稼げる国」として選ばれるだろうか。中国やシンガポール等、わざわざ海を渡らなくても賃金が上昇傾向にある国が他にあって、平均賃金の上がらない日本に移民はやってくるだろうか。…というそもそも論を考えてしまった。

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2021年04月04日

Posted by ブクログ

いろんな視点から移民政策について議論がされていたので、この本を読めば広い視野を持って移民政策について議論ができるようになると思います。あまり経済学の知識を必要とするところが少なかったので、あくまで移民政策についての視野を広げるために読む本だと思います。

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2020年11月09日

Posted by ブクログ

ようやっと。
アメリカ、イギリスが中心だけど、移民に関する経済学研究を広く紹介。

前提やら分析単位によって、かなり結論が左右されるのは仕方ないとして、その違いを丁寧に説明してくれてました。

また、経済学では捉えきれてないことが何かも説明。

「教育には、自分と違うものに対しても寛容な態度を育む効果があることが分かる。」(p202)

結局、ここかな。
次は、どんな教育かって問いか。

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2020年08月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

移民の受け入れによって、賃金や雇用機会が奪われるかどうか。YESもNOもどちらの研究結果を存在するが、それは分析手法・観点の違いによるところが大きい。たとえば移民の受け入れ前後での賃金変動を、(もろに賃金下がりそうなイメージの)高卒者を対象に調査したとして、結果「下がる」となったとしても、分類をもっと細かくしていわゆる職人系の技能就職者に絞ったとすると彼らの賃金は下がってなかったりする。
おおざっぱにいうと、代替的な仕事は移民に奪われるし、非代替的・補完的な仕事は移民に奪われない。つまり移民の受け入れによって賃金や雇用機会は減らないという結論になる。さらにここに地域の議論も絡んでくる(労働不足の都市部は影響ないけど地方は影響あるな)ので、事態は複雑。総合的かつ局所的に判断する必要がある。

結局相手が移民であれ市民であれ、差別化できてる人間になれているかどうかで人の経済的価値は決まるってこと。


またより広義な解釈で、移民が経済にどう影響するかも記載あり。たとえば移民を受け入れた国にとって、その外国との貿易は輸出より輸入が増えることになり、経済的にはマイナスになる。ただし知的財産権など無形資産に関する収入は増えるプラスの面もある。また非技能労働者が増えると技術革新が遅れるなど、もっと俯瞰的に影響を観察することもできる。観点が多すぎて理解と結論づけが難しいが、移民をフックに経済活動を学ぶことができ良書。

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2020年02月27日

Posted by ブクログ

面白そうなテーマがたくさん並んだ目次

序 章 移民と日本の現在
日本の現状国籍、都道府県、産業による違い近年の主
要な法改正 「移民の経済学」の有用性
第1章 雇用環境が悪化するのか
1 市民の賃金を下げるのか?
代替的か、補完的かキューバ移民の事例とボージャスの反論
労働者の分類別に比較する 「低賃金ではやりたくな
い仕事」をしているのか
2 長期的には賃金が増えるのか?
二つの議論の対比オッタビアーノとピエリの反証
3 雇用が奪われるのか。
研究結果が二転三転する理由 ダストマンらの指摘 「格
下げ」の影響雇用をめぐる入れ替え効果と生産性効果
日本の場合学者たちの立ち位置国際機関の傾向

第2章 経済成長の救世主なのか:
_1_国境をなくせば世界は豊かになるのか。
国境がなくなれば生産性が上がる理由大量の移民が先進国を変質させたならシミュレーションの扱い方
2 貿易振興で経済が活性化するのか
移民が増えると貿易が盛んになる理由消費財の輸出拡大
輸入への影響の方が大きい?貿易拡大の影響知的財産
貿易への期待移民と知的財産収入日本の知的財産収入
への影響」
3 直接投資を促進するのか。
少子高齢化は人とお金を減少させる直接投資への短期的影響と長期的影響技能労働者の場合、非技能労働者の場合
地域経済への影響 地方創生と観光


第3章 人手不足を救い、女性活躍を促進するのか。
1 看護師不足を解消するのか。
詳細な分類で見る市民看護師は減るのかなぜ辞めるの
か日本における外国人看護師
2 建設業での賃金が下がるのかめ
賃金の低下、市民の離職消費者への恩恵若い建設業労
働者が減る日本一
3 女性の社会進出が加速するのか
移民は高給女性の勤務時間を増やす移民は家事負担を減らすのか女性の社会進出は男性の所得格差を拡大する少子化を促進するか労働と出産の相関育児支援サービスの恩恵を受ける人たち

第4章 住宅・税・社会保障が崩壊するのか
1 生活費が安くなり、購買力が上がるのか』
価格低下の実態弱者が犠牲に日本における試算


2 家賃や住宅価格が高騰するのか
価格低下の理由家賃や住宅価格の上昇北海道のリゾー
ト地の例
3 スラム街が生まれて資産価値が低下するのか。
移民が増えると住宅価格が下がるという説狭い範囲では下がり、広範囲では上がる富裕地区と貧困地区の分断
4 税・社会保障の負担が増えるのか
移民は社会福祉 サービスの利用が少ないイギリスの移民の財政貢献
移民の教育費用は出身国の負担
アメリカでは財政貢献は低い
分析と現実のギャップ
外国人労働者受け入れと日本の消費税

第5章 イノベーションの起爆剤になるのか
1 低技能労働者が増えると技術革新が遅れるのか?
技術革新が遅れ、雇用が守られる効率的な仕事の割り振りへの貢献、日本は変われるか


2 技術立国には外国人研究者が必要なのか
高技能の移民への期待奨学生と自費留学生の比較
sTEM(科学 技術 工学 数学)系の移民の影響
短期的な貢献
科学技術分野が乗っ取られるのか
技能の波及効果と締め出し効果
「乗っ取られる」可能性が高い
3 受け入れる国を選別すべきか
出身国の選別は合理的か外交官の駐車違反が示唆するもの
出身国により異なる移民のタイプ
第6章 治安が悪化し、社会不安を招くのか:
1 多文化共生で地域の結びつきが薄れるのか。
接触仮説と紛争理論パットナムの研究の衝撃パット ナ
ムへの反論民族多様性は信頼を低下させない社会関係
資本は好ましいか住みよい社会のために
2 犯罪が増加するのか、
先行する不安イギリス移民の第一波と第二波の違い犯
罪率を減らす可能性が高い日本における外国人の犯罪率


アメとムチ、どちらの制度が有効か
3 伝染病が持ち込まれるのか。
伝染病持ち込みのリスクは低い経済学との関係性日本
に求められる検疫体制
4 誰が移民に賛成・反対するのか、
技能水準と賛否の関係先進国の傾向、発展途上国の傾向
日本人の態度
終 章 どんな社会を望むのか。
日本の急激な高齢化それでも成長するためには現状維
持、多文化共生、技術革新アメリカでの体験得られる
もの、失うもの一
あとがき

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2020年02月21日

Posted by ブクログ

移民問題を経済学的な視点から考察した本。
移民を受け入れることで犯罪率が上がるデータはない。
結論が曖昧ではあった。

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2020年02月15日

Posted by ブクログ

日本人ファーストが選挙で話題になりましたが、個人的には外国人労働者の方に、日本の経済はとても助けてもらっていると思っています。わたしの勤める社会福祉分野も、人手不足が顕著なのですが、まだまだ偏見を含めたやりたくない意見が大勢を占めていて、現場の疲弊はたまらないです。偏見をなくすためにも、こういった情報には、多くの人が触れてほしいです。
移民のために、もとからいた市民が賃金や治安で不利益を受けると言われがちですが、経済学上ではどうなのか。この本には、様々な分析の仕方と考え方が、偏見なく提示されています。
切り取り方次第で分析結果は様々に変わるため、どんな視点やスパンで考えていくのか、自ら主体的に向き合わないと、刺激ばかり強調した情報に振り回されてしまうと思いました。

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2025年09月18日

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