あらすじ
すでに250万人の「移民」が暮らす日本。2018年末に入管法を改正し、さらなる外国人労働者の受け入れ拡大に舵を切った。移民が増えると、私たちの生活にどのような影響があるのか。本書は、雇用や賃金、経済成長や物価、貿易、税と社会保障、さらに科学技術、治安・文化に至るまで、主要な論点を網羅。経済学の研究成果をもとに分析することで、感情的な議論を超え、移民がもたらす「損」と「得」を明らかにする。
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Posted by ブクログ
移民の受け入れによって、賃金や雇用機会が奪われるかどうか。YESもNOもどちらの研究結果を存在するが、それは分析手法・観点の違いによるところが大きい。たとえば移民の受け入れ前後での賃金変動を、(もろに賃金下がりそうなイメージの)高卒者を対象に調査したとして、結果「下がる」となったとしても、分類をもっと細かくしていわゆる職人系の技能就職者に絞ったとすると彼らの賃金は下がってなかったりする。
おおざっぱにいうと、代替的な仕事は移民に奪われるし、非代替的・補完的な仕事は移民に奪われない。つまり移民の受け入れによって賃金や雇用機会は減らないという結論になる。さらにここに地域の議論も絡んでくる(労働不足の都市部は影響ないけど地方は影響あるな)ので、事態は複雑。総合的かつ局所的に判断する必要がある。
結局相手が移民であれ市民であれ、差別化できてる人間になれているかどうかで人の経済的価値は決まるってこと。
またより広義な解釈で、移民が経済にどう影響するかも記載あり。たとえば移民を受け入れた国にとって、その外国との貿易は輸出より輸入が増えることになり、経済的にはマイナスになる。ただし知的財産権など無形資産に関する収入は増えるプラスの面もある。また非技能労働者が増えると技術革新が遅れるなど、もっと俯瞰的に影響を観察することもできる。観点が多すぎて理解と結論づけが難しいが、移民をフックに経済活動を学ぶことができ良書。