ウォルターブロックのレビュー一覧
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ダークな世界を知りたい方へ
転売屋や高利貸しなど、社会から指弾される存在を、自由市場と自発的取引の観点から徹底的に擁護する異色の経済学書。双方が合意した取引は必ず双方に利益をもたらすという大原則を感情論を排除して論理の極限まで突き進む構成は、極めて知的挑発となっている点が面白い。論理的な思考を好むものにとって、世間の道徳的な価値観を冷徹な論理で解体していくアプローチは痛快です。
表面的な善悪や同調圧力に流されず、その行為は本当に誰かを搾取しているのかと根本から疑う視点と、社会現象の隠れたメカニズムや真の因果関係を見極め、常識に囚われずに意思決定するための強力な思考を身につけたい人におすすめです。 -
Posted by ブクログ
アメリカを代表するリバタリアン(自由原理主義者)であるウォルター・ブロックによって1976年に発表されベストセラーとなった『擁護できないものを擁護する』を、現代(初版は2006年)に合わせ超訳した本。
今日、世界は強大なテクノロジーの力を手に入れ、限られた一部の選ばれし者が、自由競争の理論のもとで莫大な利益を手にするという時代に突入し、経済的に裕福な生活を手にするか、貧困に陥るかは本人の努力次第という自己責任の考え方が広がりつつある。
そのような中で、かつて自由原理主義者のバイブル的な存在だった本書を読むことで、次第に存在感を増している自由原理主義者の論理に触れ、好む好まざるにかかわらずその考え方を知っておくことは大事だと思った。
本書の冒頭でのリバタニアリズム(自由原理主義者)に関する説明が政治哲学者マイケル・サンデルの言う政治思想の4類型(①功利主義②共同体主義③リベラリズム④リバタニアリズム)の引用と共になされていてとてもわかりやすかった。
また、今から40年前に書かれた本の内容を、取り上げる事例を現代風にアレンジしつつも本質は伝わるように説明している点がポイント。事例に関しては「麻薬密売人」や「恐喝者」「ポイ捨て」など、どう考えても悪いとしか思えない人たちを自由至上主義者の理論で社会的な利益をもたらすヒーローであると擁護する。多少強引な論理で、詭弁がすごいと思うような説明もあるが、完全に間違ってはいないと妙に納得させられる部分もあり、完全に自由な市場とはこういうものだという思考実験的な読み方もできると感じた。
訳者のあとがきによると、本書の目的は自由市場原理主義者の極端な考えを書くことで読者を挑発することにあるとのことだったので、自由市場主義をなんとなく信奉している人も、否定する人もこの本を読んで神経を逆撫でされてみることをお勧めする。 -
Posted by ブクログ
序説「これからのリバタリアニズム」について
本稿はウォルター・ブロックの『不道徳な経済学』の訳者である橘 玲によって書かれた序説である。橘 玲は小説からビジネス書まで幅広く手掛ける作家。
本稿では、他の政治哲学との比較からリバタリアニズムを独自の視点でわかりやすく説明している。また、アメリカ社会において、なぜ敗者であるプアホワイトと勝者であるリバタリアンが手を組むのか。政治思想の構図を交えて説明する。さらにリバタリアンから進化したサイバーリバタリアンにも説明は及ぶ。リバタリアンはテクノロジーの力を手に入れ、より過激なサイバーリバタリアンへと進化した。彼らは、選ばれしものだけの究極に自由な世界を創造しようとしている。
<これからのリバタリアニズム 要約>
英語の自由にはフリーダムとリバティの2つがある。リバティは責任を伴う自由で、フリーダムは制限なき自由(好き勝手、自由奔放)の意味である。政治哲学的な自由主義はリバティを語源に「リベラリズム」、その信奉者を「リベラリスト」と呼ぶ。しかし、このリベラリズムには単なる自由主義だけでなく、別の意味合いも付加されてしまっている。それが人権と平等だ。国の徴税により再分配を行い、福祉を充実させる。また雇用をつくり、必要なライフラインを手厚く提供する。
こうなると純粋な自由主義と反するため、市場原理主義を信奉する経済学者は、アダム・スミスから続く正統派という意味合いで「古典的自由主義」を名乗った。後にこの純粋な自由主義を信奉する者たちは「リバタリアニズム」「リバタリアン」という造語をつくった。
自由の尊重に加えて、伝統や文化、それらを維持する共同体を重んじる政治哲学がある。これを「コミュニタリアニズム(共同体主義)」という。国家の役割を大きくし、人々の統治をより強めていくため、リバタリアニズム、リベラリズムとは相いれない。なお、日本では個人よりも世間(共同体)を重んじるため、欧米型のリベラリズムは定着していない。日本的リベラリズムはコミュニタリアン左派のことだ。日本では左派、右派ともにコミュニタリアンに属することになる。
リバタリアン、リベラル、コミュニタリアニズムは自由を基礎として、それぞれの意味合いに若干の修正が加えられる。
人は自由に生きるのがすばらしい。(リバタリアニズム)
人は自由に生きるのがすばらしい。しかし平等も大事だ。(リベラリズム)
人は自由に生きるのがすばらしい。しかし伝統も大事だ。(コミュニタリアニズム)
これら3つの思想は自由が価値の源泉となっている。原理主義は、何らかの価値の源泉があらかじめ存在すると考える。一方で「功利主義」は、この自由という価値の源泉を持たない。功利主義は「最大多数の最大の幸福」を目指す思想だが、その前提に原理は存在しない。あらかじめ何が正しいかはわからない、いろいろ試してうまくいったものが結果正しい、と考える。これを帰結主義、プラグマティズムという。原理による善悪の判断はなく、損得勘定のみで判断する冷徹さがある。
平等や伝統といった価値にも縛られない功利主義はリバタリアニズムとは相性が良い。これらが重なる政治哲学をネオリベラル(新自由主義)と呼ぶ。
近年の米国社会ではリベラリストとマイノリティが手を組む。リベラリストは平等を重んじるため、アファーマティブアクションなどマイノリティの優遇策を支持する。ここに反発するのがプアホワイトという層だ。米国では高卒の労働者が、仕事とコミュニティを失い、酒やドラッグに溺れて、結果早死にや自殺してしまう「絶望死」という現象が起きている。厳しい状況に置かれたプアホワイトの矛先は、安い労働力を持つ中国や外国人労働者に向かう。そして彼らが誇れるものは白人であるということだけ。こうしてプアホワイトを中心に、白人アイデンティティ主義が台頭していく。
このような現象は世界的に見られる現象だ。所得が伸びずに中流層が没落している状況は多くの先進国で起きている。ヨーロッパでも移民排斥運動やブレグジットなどの動きが起きている。日本のネトウヨも白人アイデンティティ主義と根底は同じだ。
プアホワイトたちは、マイノリティへの優遇に怒りを覚える。私たち白人の国でマイノリティが不当に優遇されていると。マイノリティたちと手を組むリベラリストにもその矛先は向けられる。リベラリズムを支持する人たちの多くは、金融やメディア、教育、ITなどの職に就き、東部や西海岸のクリエイティブ都市に住んでいる。インテリかつ裕福な層である。プアホワイトは、彼らリベラリストはマイノリティのみを不当に優遇する一方で、私たちをホワイトトラッシュと冷笑し、差別していると考える。
そこでプアホワイトはリバタリアンたちと手を組む。リバタリアンはエンジニアや起業家、投資家など、リベラルよりもさらに裕福な富裕層であることが多い。なぜ負け組が最大の勝ち組みと手を組むのか。それは両者ともにマイノリティの優遇を不当だと考えるからだ。リバタリアンは能力主義者であり、国家が意図的に何かを優遇することを嫌う。
こうしたプアホワイトたちによるリベラルへの反乱がトランプ大統領を生んだ。その裏には政治思想の衝突と、連帯という構図が浮かびあがる。
リバタリアンはさらにサイバーリバタリアンへと進化する。その代表格であるピーター・ティールはペイパルの共同創業者であり、フェイスブックに初めて投資を行った人物だ。シリコンバレーのドンと目されており、彼はリバタリアンを自認している。
彼は国家からの統治を逃れるために、サイバースペース、アウタースペース(宇宙)、シーステディング(海洋都市国家)に自由な領域をつくろうとした。ティールは「ダーウィン主義はほかの文脈では筋の通った理論かもしれないけれど、スタートアップにおいてはインテリジェントデザインこそが最適だ」と語る。ティールはインテリジェントデザイン(神による世界の創造)を「インテリジェントから”特別な才能を与えられた者たち“が、テクノロジーの力によって世界をデザインする」のだと読み替える。
ティモシー・メイはインテルで働いた後に、クリプトアナキストという思想をつくった。彼らは国家による監視と強権によるディストピアから逃れるためには、暗号技術によって個人の自由を守る必要があると考えた。自由を実現するには「安全な暗号通貨」「匿名でウェブを閲覧可能なツール」「追跡されずにあらゆるものを売買できる市場」「匿名の内部告発ツール」が必要であると考えた。これらは現在においては、それぞれブロックチェーン、Tor、シルクロード、ウィキリークスとして実現している。
彼らはこれらの技術で国家からの統治を逃れ、利益を同じくする集団でオンラインのネットワークをつくり、自由な経済活動を行うことを目指す。しかし、そこでは国家による規制や保護は何もない。機会を掴むことができる者、売れるだけの価値がある者、ごく一部の勝者だけが生き残る世界である。
メイは語る。「私たちは、役立たずのごくつぶしの命運が尽きるところを目撃しようとしているんですよ」「この惑星上の約40~50憶人の人間はさるべき運命にあります。暗号法は、残りの1パーセントのための安全な世界を作り出そうとしているんです」 過激なサイバーリバタリアンは、選ばれしものだけの完全に自由な世界を創造しようと目論む。
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Posted by ブクログ
リバタリアンの視点から、人々が眉をひそめる行動が、実は大切である、と説く本。
全体として、ケーススタディが続くのだが、各ケースを読むことでリバタリアンの主張がわかるようになっている。
・売春婦
・ポン引き
・女性差別主義者
・麻薬密売人
・シャブ中
・恐喝者
・ツイッタラー
・学問の自由を否定する者
・満員の映画館で「火事だ!」と叫ぶ奴
・ダフ屋
・悪徳警察官
・ニセ札づくり
・どケチ
・親の遺産で暮らす馬鹿息子
・ヤミ金融
・慈善団体に寄付しない冷血漢
・土地にしがみつく頑固ジジイ
・飢饉で大儲けする悪徳商人
・中国人
・ホリエモン
・ポイ捨て
・環境を保護しない人たち
・最低賃金法を遵守しない経営者
・幼い子どもをはたらかせる資本家
また、それ以外にも章はあるらしいが、時代背景に合わない章は割愛しているとのこと。
それも含めて、原著の雰囲気を再現している。
リバタリアンの主張がわかる、その一点のみにとても価値がある本。 -
Posted by ブクログ
P37 ウォルター・シャイデル『暴力と不平等の人類史――戦争・革命・崩壊・疫病』 東洋経済新報社の引用、『過去の不平等を検証したアメリカの歴史学者ウォルター・シャイデルによれば、古代中国でも古代ローマでも、平和な時代にはどこでも格差が拡大している。それを破壊するのが「戦争」「革命」「(統治の)崩壊」「疫病」で、二度の世界大戦やロシア革命、文化大革命、黒死病(ペスト)の蔓延のような「とてつもなくヒドイこと」が起きると、それまでの統治構造は崩壊し、権力者や富裕層は富を失って「平等」が実現するのだ』になるほどと思い、本を借りようと思ったら貸し出し中。2度読むと違う発見がある。
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Posted by ブクログ
半分くらいまで読んだが退出。基本的に橘玲氏のいつもの主張のような展開が続くのみ。好きな人は好きだろうが、事実に基づいて居ないと感じる。
本書のここが特に!と、否定しようとパラパラとめくって児童労働に関する項を読んでみた。すると、その時に本書の前書きがようやく腹に落ちた。児童労働を否定するのは労働者の再生産が出来ないからだ。しかしそれすらも国家を否定する彼らからしたら根底から間違っているのだから批判に値しない。ここで最初に戻るのだ、よって立つ土台が違うのだから話が通じない。
本書の期待する感想ではないのかもしれないが、話せば分かる、などとほざく青年達こそ読むべきなのかもしれない。しかし本書の中の論理は数字に基づいて居ない。社会福祉や男女平等の概念は人権屋だけでなく経済的な観点からも望ましいのは社会学の実験によって証明されている。若すぎる読者は飲み込まれてしまうかもしれない。