キム・エランのレビュー一覧

  • どれか一つは嘘

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    全24章からなる本作はクラスメイトのジウ、ソリ、チェウンで各章、視点人物が切替わりながらストーリーが進む。

    三人の主要登場人物の中でも主人公のアカメカブトトカゲのヨンシクを飼うジウは漫画投稿サイトに「ヨンシク日記」を描き投稿している。ジウはひとり親の母が亡くなったため、その恋人だったソノおじさんと暮らしており、ソノおじさんはジウを気にかけてくれているが、冬休みに住込み型の工事現場で働きお金を貯めてヨンシクと一緒に家を出ようとする。

    足を怪我してサッカーを辞めた転校生のチェウンは家族の中で起きた事件で心を悩ませている。そんなチェウンが飼っているムンチという名のゴールデンレトリバーもジウにとってのヨンシク同様に大事な家族として描かれている。

    本作は登場人物に血の繋がりのない人間や動物が心の支えになったり、血の繋がりがある父親、母親が負担になっていたり、嫌悪している姿が描かれていることが特徴で、家庭環境に縛られ自由な生き方を選べない未成年に対し、筆者の優しく励ますようなまなざしを感じる。

    タイトルにもなっている“嘘”は本作の大事な要素でストーリーを動かす時に随所で効果的に用いられている。個人的には最後のソノおじさんがジウの母の死についてジウに話したこともジウを思っての優しい嘘なんじゃないかと思う。そして筆者も辛く悲しいことに向き合う読者に対して小説という優しい嘘でそっと勇気づけようとしているように思える。ジウが物語は終わりがあるから好きと言うけど、本作にはつらく悲しいことも終わりがあり、その終わりが別の物語の始まりになり、希望と言うには頼りないけど未来があるというメッセージがあるように思った。

    ジウの名前の由来の「消す」という意味は空間を作ることであり、その出来た空間をチェウンの名前の由来の「空間を埋める」という言葉に繋がっているように思う。それをソリの名前の由来である「手」でその喪失を埋めることが出来る、それが絵であり、言葉であり、物語なのだろう。

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    2026年07月19日
  • どれか一つは嘘

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    自己紹介の内容に「どれかひとつは嘘」を混ぜ込むという独自のゲームを軸に、様々な事情で親をなくした3者が、再度の喪失を経験しつつも事実を受け入れ乗り越えていく様が描かれる。文体は淡白ながらも手応えを感じた。

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    2026年09月23日
  • ひこうき雲

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    「裏切り。罪。喪失。悲しみ。
    韓国文学の旗手が贈る、
    哀切な8つの物語。」

    韓国で実際に起きた出来事、事件をモチーフにしているということで、一話読み終わる度に、心にずんと重いものが。
    生きるって苦しい、と思う。
    でも、登場人物は自分の人生をリアルに生きていて、その描写が重苦しくなりすぎず、テンポが良くて、すぐそばで起きていることのように自然に感じ、入り込めました。

    「この空の向こうに、幸せはきっとある」
    ‥とは私には思えないようなストーリーだったけど、そうであって欲しい。

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    2024年10月31日
  • ひこうき雲

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    どの短編も格差社会で必死に生きてきたけど、どうしても這い上がれないことを知りたくない気持ちが漂ってくる。「三十歳」:先輩にあててに書いた手紙。若いうちは人生はなんとか切り開いていけると考えていたが、三十歳になるころには、それは間違えだったと分かってくる。マルチ商法に絡めとらてなんとか逃げ出したが、後輩を誘ってしまい、その後輩が借金で自殺しようとした。自分は、家族の問題でもっと借金を抱えてしまった。人生を生きていくのは辛いな。

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    2023年07月23日
  • ひこうき雲

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    ネタバレ

    最終話の「三十歳」が強く印象に残る。必死に努力しているのに報われず、どうしようもなくなって最後にたどり着くネットワークビジネスの販売員という、過酷な仕事。そこでは人間性が奪われ、人間関係が壊れ、主人公は深い深い傷を負う。どうにかしてその状況を抜け出したものの、大きな罪悪感を抱えて生きる主人公が懐かしい「先輩」へ宛てた手紙で淡々と語る形式だが、その物語はとても胸を打つ強烈なものだった。
    実際の社会問題を題材にして、短編小説として鮮やかに切り取り、しかもあの結末は…とあれこれ考えずにいられない深い余韻を残す、印象深い物語だった。

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    2023年03月25日
  • ひこうき雲

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    表紙めくってあらすじ読んで、著者の「日本の皆さんへ」って丁寧なメッセージ読んで、勝手に「少し切ない物語」期待していたら、全く違った。なんていうか、俗に言う負け組の話?貧乏、貧乏、赤貧ってくらい希望が持てない。韓国で自殺がものすごく多い理由がわかるような。明日あなたは死にますよって言われたら、良かったってほっとするんじゃないかって読後感。なんでだろう、著者は優しそうなのに。まじめに働いてるのに生きていくのがやっとってなんでなん?生きていくのが辛い世界に、子供が生まれてくるはずない。少子化問題、当然の結果だけど上は多分ずっと気づかない。

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    2026年10月03日