冨士本由紀のレビュー一覧

  • 圏外同士

    Posted by ブクログ

    自分しか見えていない、タイトル通りの圏外同士な二人だったためか、ひとつ間違えば痴情の縺れからなる傷害事件のひとつやふたつも起きかねない展開ながら、お互い淡々と本来あるべき道へとシフトしていくエンディングに物足りなさ感とホッとした感を同時に与えられた。

    0
    2025年11月03日
  • 愛するいのち、いらないいのち

    Posted by ブクログ

    多くを望まないのに、ただただ穏やかに生活したいだけなのに、生きていくってなんでこうも思い通りにならないんだろう。愛してるはずの家族を思う気持ちにさえ気づけないほど、余裕のない毎日を慌ただしく過ごしていくだけ。優しくなれない自分自身にも傷つきながら。
    早くいなくなって欲しいと願う冷酷な自分も、自己犠牲をいとわない優しい自分も共存する主人公は、まさに葛藤を覚えて生きる今の私自身でした。

    0
    2023年03月10日
  • 愛するいのち、いらないいのち

    Posted by ブクログ

    無職・無年金の夫と築45年の横浜の団地で倹しく暮らす59歳の私。遠い島根の実家で独居する我侭で惚けた父の介護に行き来する日々。
    そんな矢先、夫に癌が見つかる。
    還暦を迎える女のリアルな日常が胸を衝く、切実小説。


    ろくに育ててもらった記憶もない、自慢話以外は何も出来ない元公務員の養父(母の再婚相手)と、陽気なお調子者を装っているが、仕事仲間の裏切りにあって以来、仕事どころか他人・社会と関われなくなってしまった、元クリエイターの夫。

    冒頭のファミレスのシーンは吐きそうになるほど不快だったし、
    養父:「おまえに迷惑はかけない。いよいよおいぼれても、おまえに迷惑をかけないだけの金はちゃんと用意し

    0
    2021年01月31日
  • 愛するいのち、いらないいのち

    Posted by ブクログ

    いろいろ考えた。
    老いていく親、若いままではいられない自分。
    文音は母の再婚相手である血の繋がらない父を介護することに。
    若い時に華々しく働いていたらしい夫の和倫までもが癌になり、否が応にも死と向き合って行く。
    愛する人の命にはもちろん、愛してはいなくとも、それなりに恩や情や、義理や人情で、どんな人の死も自分に関わっていれば見捨てるわけにはいかない。
    シリアスなテーマだけど暗くならず、一気に読めた。

    0
    2021年01月30日
  • 愛するいのち、いらないいのち

    Posted by ブクログ

    書評家、藤田さんのツイッターがきっかけ。
    タイトルで当然、身構える。横浜と出雲を行ったり来たりのW介護。非正規雇用の職場では立場があやうい。
    うまいなーと感じるのは、主人公が完全なる弱者ではなく、働き盛り時代は広告業界で華々しく活躍していた、というのをにおわせている点。読み手のスタンスが試される。

    0
    2020年04月13日
  • 愛するいのち、いらないいのち

    Posted by ブクログ

    遠距離介護、親子の確執、パートナーの闘病…主人公・文音の疲労や焦燥・苛立ちがヒリヒリと伝わってきて、その先が気になって、一気に読み終えた。最後に救われる出来事があって本当に良かった。

    0
    2025年09月10日
  • 愛するいのち、いらないいのち

    Posted by ブクログ

    ごめんなさい、お父さん。ごめんなさい、カズちゃん。人の心のことなんか、失ってからしかわからない。失ってもわからない。私の胸がもっと柔らかでやさしかったなら、あなたを抱きしめることができたのに。

    0
    2023年06月21日
  • 愛するいのち、いらないいのち

    Posted by ブクログ

    内容(「BOOK」データベースより)

    元クリエイターで無職・無年金の夫と築45年の団地で倹しく暮らす59歳の私。遠い実家で独居する我侭で惚けた父の介護に行き来する日々。入退院、施設探し、説得、契約、実家の管理。時間に、お金に、人間に、振り回され、仕事は、定年は、介護の終わりは…。そんな矢先、夫に癌が見つかる。神は老いた父の死を願うような不埒な私に、罰として私の一番大切なものを奪うことに決めたのだ。還暦を迎える女のリアルな日常が胸を衝く、切実小説。

    0
    2020年02月28日