感情タグBEST3
Posted by ブクログ
多くを望まないのに、ただただ穏やかに生活したいだけなのに、生きていくってなんでこうも思い通りにならないんだろう。愛してるはずの家族を思う気持ちにさえ気づけないほど、余裕のない毎日を慌ただしく過ごしていくだけ。優しくなれない自分自身にも傷つきながら。
早くいなくなって欲しいと願う冷酷な自分も、自己犠牲をいとわない優しい自分も共存する主人公は、まさに葛藤を覚えて生きる今の私自身でした。
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無職・無年金の夫と築45年の横浜の団地で倹しく暮らす59歳の私。遠い島根の実家で独居する我侭で惚けた父の介護に行き来する日々。
そんな矢先、夫に癌が見つかる。
還暦を迎える女のリアルな日常が胸を衝く、切実小説。
ろくに育ててもらった記憶もない、自慢話以外は何も出来ない元公務員の養父(母の再婚相手)と、陽気なお調子者を装っているが、仕事仲間の裏切りにあって以来、仕事どころか他人・社会と関われなくなってしまった、元クリエイターの夫。
冒頭のファミレスのシーンは吐きそうになるほど不快だったし、
養父:「おまえに迷惑はかけない。いよいよおいぼれても、おまえに迷惑をかけないだけの金はちゃんと用意してある」→ 無い(見栄と認知症による高額ショッピングや詐欺被害のため)
夫:「自分の身体のことは自分で分かってるんだよ。煙草くらい自由に吸わせてくれ」
→分かってない。結局肺癌になる。
という、二人のダメ男の王道パターンっぷりに腹が立って仕方なかった。
人はけっして自分の思いどおりは動かないし、その「ままならなさ」が誰かと共に生きる事という事なのかもしれないが、いい齢をした男の「頑なさ」ほど厄介なものは無い。
同僚との関わり・永久に終わらないんじゃないかと思うくらい複雑な役所の手続き・ネットで情報収集し過ぎて頭でっかちになる感じなど、「実録なのかな?」と思うくらいリアルな小説だった。これが介護か…。これが終末期医療か…。気が重くなる。
ただ、絶望ばかりでは無く、思いがけない助けや展開が用意されているのもまた人生なのだと思った。心穏やかに読める内容では無いが、読後感は悪く無かった。
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いろいろ考えた。
老いていく親、若いままではいられない自分。
文音は母の再婚相手である血の繋がらない父を介護することに。
若い時に華々しく働いていたらしい夫の和倫までもが癌になり、否が応にも死と向き合って行く。
愛する人の命にはもちろん、愛してはいなくとも、それなりに恩や情や、義理や人情で、どんな人の死も自分に関わっていれば見捨てるわけにはいかない。
シリアスなテーマだけど暗くならず、一気に読めた。
Posted by ブクログ
書評家、藤田さんのツイッターがきっかけ。
タイトルで当然、身構える。横浜と出雲を行ったり来たりのW介護。非正規雇用の職場では立場があやうい。
うまいなーと感じるのは、主人公が完全なる弱者ではなく、働き盛り時代は広告業界で華々しく活躍していた、というのをにおわせている点。読み手のスタンスが試される。
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ごめんなさい、お父さん。ごめんなさい、カズちゃん。人の心のことなんか、失ってからしかわからない。失ってもわからない。私の胸がもっと柔らかでやさしかったなら、あなたを抱きしめることができたのに。