安堂信也のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
今も色褪せない差別論の古典。差別は加差別側が生み出す。加差別と被差別の双方の人間を精緻に描出している。最後の社会主義革命によるユダヤ人問題解決の十分性への言及が唐突で、実効性に疑問が残るがそれ以外はどのくだりも傾聴に値する。
・反ユダヤ主義者は恐怖にとらわれ、それもユダヤ人に対してではなく、自分自身に対して、自覚に対して、自分の自由に対して、自分の本能に対して、自分の責任に対して、変化に対して、社会に対して、世界に対して、恐怖を抱いているのである。しかもかれは殺すときには群衆に紛れて、集団的処刑に加わるに過ぎない。
・反ユダヤ主義者は、ユダヤ人がユダヤ人であることを非難するのだが、民主主義者 -
Posted by ブクログ
フランスの哲学者、サルトルの反ユダヤに対する徹底的な批判。
哲学的な概念を使って記述している部分もあるので、やや難解に思えるところもあるが、論理は実に明快で、認識をベースにした物理学あるいは数学の証明を読んでいるよう。
「ユダヤ人」とか「ユダヤ人的」という見方を作り出したのは私たちであり、集団内の分断を回避するために、敢えて「ユダヤ人」と「非ユダヤ人」というカテゴリを作り出し、ユダヤ人を敵とみなすことで団結を図っている。
そして明らかな敵、明らかな悪を設定することで、自らが自らの「善」を積極的に探求することをしないでいられる。
とにかく痛烈。そして、私たちがなんとなく感じている違和感をきちんと -
Posted by ブクログ
ジャン=ポール・サルトルの「ユダヤ人」問題論。欧米社会に根強いユダヤ人差別問題を真正面から捉えた論文である。
「ユダヤ人」という存在について、社会における反ユダヤ主義の構造・心理・思わくなどをベースに分析するとともに、それに対するユダヤ人自身の受け入れの在り方をも考察し、その差別の本質をサルトル的な皮肉を交えた文学的表現にて説明、「ユダヤ人」問題は非ユダヤ人自身の問題であり、われわれ自身の自由の問題でもあるとして、解決の道筋をサルトルならではのアンガージュマンの見地(社会主義革命、連盟結成など)にて指し示す。
率直に言って「ユダヤ人」については日本ではそれほど馴染みのある話ではないと思われるが -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
世界中の人びとがユダヤ人に対して抱いている偏見は、実に古くかつ根強い。
サルトルは、まったく新しい観点から、数々の具体的事実をあげて、この根深い偏見の源をつきとめ、ユダヤ人問題の本質をはじめて明らかにした。
たんにユダヤ人問題のみならず、今日の人種問題に対して正しい解決の方途を示唆した画期的な書。
[ 目次 ]
1 なぜユダヤ人を嫌うのか(ユダヤ人を嫌うのは自由だろうか;嫌う理由があるのだろうか ほか)
2 ユダヤ人と「民主主義」(抽象的民主主義の弱味;抽象的人間と具体的ユダヤ人 ほか)
3 ユダヤ人とはなにか(人間の違いは、その状況と選択による;ユダヤ人の状況、人種、宗教、国 -
Posted by ブクログ
ユダヤ共同体は、国家的でも、国際的でも、宗教的でも、人種的でも、政治的でもない。それは、一つの半ば歴史的な共同体なのである。ユダヤ人をユダヤ人たらしめているものは、その具体的な状況であり、彼を他のユダヤ人達と結びつけているのは、状況の一致なのである。
・・・・・・『ユダヤ人』180頁
反ユダヤ主義、日本では馴染みのない問題かもしれないが、世界中に蔓延り、確実に存在している問題。ユダヤ人というものがいかに造られ、利用されてきたのか。その現実とその原因を知るためにとても役立つと思う。
理性的で批判的な態度は、ユダヤ人の特徴とされているらしい。だが、これも、非理性的な反ユダヤ主義者によって造られ