小笠原弘幸のレビュー一覧
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13世紀に生まれ、中世、近世、近代を乗り越えてわずか100年前に消滅したオスマン帝国。本書はその歴史を大まかに3つ、
①集権的帝国の時代
②分権的帝国の時代
③近代化の時代
に分類してテンポよく記述し、600年以上続いた帝国の飛躍、安定、衰亡を新書一冊で上手く纏めてくれている。
通史なのでスレイマン1世の栄光もすぐに過ぎてしまうが、逆に無名のスルタンも飛ばさず、一人残らず紹介してくれる。(もちろん情報量に差はある)
①集権的帝国の時代
「壮麗なる時代」のはるか前の、帝国立ち上げ話や途中でティムールに敗れて国家崩壊する局面が一番面白かった。中世だけあって負けるとあっさり部族がバラバラになり、勝 -
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いわゆる、あの「ハーレム」です。
女性が男性を取り巻いているようなアルファオスの象徴というか、破廉恥な文脈でもありそうな、あの現象?について。その語源を歴史を紐解き真面目に解説したもの。
ハレムは、オスマン帝国のスルタン(君主)がトプカプ宮殿に構えたもの。アッカド語のハラムが語源。シュメール語には、女性たちの家と言うハレムを指す単語がある。一夫一婦制を規範とするキリスト教以降、ハレムのような慣習は徐々に失われていったが、イスラムは、妻の数は4名まで。君主でもこれを破ることはできなかったが、所有する女奴隷と性的関係を結ぶにあたっては、数の制限はなかったから、ハーレムに住む寵姫たちは、基本的に奴 -
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トルコもオスマン帝国もほとんど知らないよ〜な完全初心者が読んでみた。
いやぁ、面白い!
同名の人物が出てくるのに最初は苦戦したけど、地図や家系図、索引も活用して読み進めていけば全体的に優しく解説してあるので、難しくはなかった。
はしがきに「時代ごとに違う国家があったよう」とある通り、区分通りの4つの時代で王権や政治体制が異なっている。それに至る経緯や事件などを流れとしてみると、なるほどなるほど…。
様変わりしていく様子や過程も興味深い。
たとえば、近代化に近づく政策が進められていったと思ったら、その直後に「王位を継げる唯一の男子になれば廃位されない」と古来からの「兄弟殺し」と同じ継承者の殺害 -
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オスマン帝国の君主がトプカプ宮殿に構えた、ハレム。
それは帝国の国政と文化を担った場所であり、組織だった。
第一章 ハレム前史―古代よりオスマン帝国初期まで
第二章 ハレムという空間の生形―トプカプ宮殿の四00年
第三章 女官たち 第四章 王族たち 第五章 宦官たち
第六章 内廷の住人たち 第七章 ハレムと文化
第八章 変わりゆくハレム 終章 ハレムの歴史的意義
コラム1~11、注、図版出典一覧有り。
主にトプカプ宮殿を中心にハレムの存在意義と、
住まう人々について、分かり易く、かつ詳細に説明している。
身分は非ムスリムで非帝国臣民の奴隷たちが大部分。
それぞれの事情、ハレムでの職階 -
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ネタバレ様々な角度からハレムが考察されていてとても興味深かったです。
以下簡単な内容メモ。
・ハレムは構造が果たす役割が大きい
・王子はスルタンになるまで鳥籠の間で暮らす→ほぼ幽閉(至高の存在に至近するものでありながら、制限されている)
・王子は即位の機会がなければハレムにずっと軟禁される
・兄弟殺しが通例だった
・母后の権限がとても強い
・女官はピラミッド型の統率された社会
・白人宦官と黒人宦官がいた
・去勢の過程で化膿もろもろで四分の一が死亡するため、宦官は他の奴隷よりも高値で取引された
・各役職がしっかりと統制されていて興味深い
・「我が獅子よ(アルスラヌム)」→某戦記を思い出しました。 -
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世界史とってなかったこともあって知識がまだらなので第一次世界大戦の敗戦国のうちにオスマン・トルコが含まれていることを知ってちょっと驚いてその歴史に興味を持ったので。日本だと鎌倉時代から明治にかけて実に36代、600年続いた王朝の通史を新書にコンパクトにまとめたものなのでかなり大雑把ではあるけれどかえって大きな流れが理解できてよかった。まずタイトルがオスマン帝国とあるけれどそれはオスマン家という実は出自のはっきりしないトルコ系の遊牧民が王様(スルタン)を務めてはいたものの政権の中枢を担っていたのはアルメニア人やクルド人など多岐にわたる民族であってトルコ帝国とはいえないということらしい。更には宗教
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ネタバレ13世紀末から20世紀まで長期にわたって存続したオスマン帝国の通史。
ヨーロッパ史とイスラム史を繋ぎ止める重要な立ち位置であったにも関わらず、今まであまり顧みられてこなかったこの国を非常にわかりやすくまとめ切った本書。
世界史を授業で学んだ限りでは当初は興隆を見せるも、近代には帝国主義とナショナリズムの流れについてこれなくなって遅れた国という認識に留まる。
しかし、600年以上続いた背景には変革と反動を繰り返しながら時代に順応していった歴史があり、
現代の問題を解くヒントを得ることができるという、
歴史を学ぶ意義を改めて思い出させてくれた。 -
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オスマントルコという国は歴史上の古い、しかも縁遠い国というイメージがあった。東ローマ帝国を滅ぼし、更にウィーンなどの欧州を脅かした敵方というイメージもあった。それを相手方から見ることによって全く知らなかった世界を学んだ気がする。それも既に19世紀のうちに立憲民主主義を確立し、ケマルによるアタチュルク革命後の共和国に連続している部分もあるとは、再認識である!この国の起こりが、彼らそのものがトルコと呼んだことがなく、国の名前さえなかったことにもビックリ。そしてスルタンという言葉も実は確立していない!本の中では「オスマン帝国」「スルタン」と呼ぶことに最初に断りがあるのだ。そして名君が多く登場する輝か
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以前からトルコ建国の父でありトルコの世俗主義の方向を定めたムスタファ・ケマルに関心があり、読んだ。読む前はトルコの英雄としての側面しか理解していなかったが、ムスタファ・ケマルを取り巻く人間関係と政治的な歩み(そしてそれはトルコ共和国の歩みと重なっていく)を感じることができた。歴史の流れとしてざっくりと知っていたことを、改めてひとつの視点から学ぶと、歴史・政治はタペストリーのように重なり合い影響し合い、簡単には断ずることのできない複雑な要素が影響し合い現代に繋がっているのだと理解できた。
登場人物は多く混乱もするが、後ろに簡単な一覧もあるので親切な構成だと思う。私は全部読んでから気づいたので、今