高野光平のレビュー一覧
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中村草田男が「降る雪や明治は遠くなりにけり」という句を詠んだのは昭和6年、1931年のことだったとのこと。明治が大正になった変わったのは1912年だったので、29年前を憶う俳句なのでした。明治百年、1968年ぐらいからの振り返りなのでは?と勝手に思い込んでいたので、戦前の句であることにビックリしました。第二次世界大戦を経なくても三十年近くの明治、大正、昭和の移り変わりは市井の人々につっては十分に激動だったのでしょう。元号がふたつ変われば「一番新しい歴史」になるのかも知れません。翻ってこの5月に改元し、昭和、平成、令和という時間経過を持って令和にとっての昭和は、昭和にとっての明治と同じ近接ヒストリーになりました。今、我々がなんとなく持っている明治イメージが司馬遼太郎なり、大河ドラマなりで形成されたファンタジーであるのと同じように、昭和ノスタルジーも作られた記憶であることを丁寧に論証するのが本書です。「ALLWAYS〜三丁目の夕日」とかナンジャタウン、新横浜ラーメン博物館がどんどん出来ていった頃のなんとなくの共通イメージとしてのCGっぽいロケセットな昭和感が現在放送中の朝ドラ「なつぞら」などのビジュアル、トンマナを決めていることを思うと、江戸時代とか明治時代と同じように昭和時代もひとつの鋳型に流し込まれるような気もします。そういった大雑把な流れだけではなく、本書のユニークさは、著者の執筆動機が90年代の「渋谷系」のレトロ感がどうしてあんなにカッコ良く感じたか?という個人的な好奇心を起点としているので、論点視点の細かさ、幅広さ、深さです。そこら辺がこの本を、「あるある」読書でも満喫出来る仕組みにしています。由紀さおりのピンクマルディーニのみならず、竹内まりやの「PLASTIC LOVE」(ずぶずぶに昭和ではないけど達郎が昭和から一貫して算出してきたポップスとして…)が世界に発見されたりして、昭和、あるいは昭和が産み出したサブカルチャーは今や、日本の資源になっているようにも思え、とても満喫いたしました。
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番組を録画しているハードディスクレコーダーではCFが来るとスキップしてしまうし、YouTubeのプリロールの動画もスキップしてしまうし、最近はすっかり邪魔者扱いのコマーシャルフィルム。先日、若い人から自分の大切な時間を見たくないコンテンツに奪われるくらいだったらポイントぐらいつけるべき!という意見を聞いて、こりゃ広告業界の人たち、大変だわ…と思いました。でも、本書に取り上げられているのは見たくないコンテンツじゃなくて見たいコンテンツだった時代のテレビCMアーカイブスです。その見たい、はタレントやストーリーや成熟したCF技法の結果としての面白がりかたではなくて、取り上げられている製品や生活そのものに対する欲望によるもの。そういう意味で、今だに記憶の隅に引っかかっている名作ではなく、忘れ去られていく無名テレビCMに目をつけた切り口が鋭いと思いました。今までのテレビCMアーカイブスは賞を受賞したものや有名クリエイターの手になるものとか作品としての価値を記録することに目的をおいていましたが、この無名作品群は、時代の空気のタイムカプセルなのでした。それだけに、権利関係クリアしてぜひ動画として鑑賞し、昭和30年代の空気吸ってみたくなりました。作者は「ノスタルジー解体」を書いた大学研究者。もっとも近い歴史ほど、フィルターかかって記憶の捏造が起こるという、主張を展開していましたが、本書はそれをテレビCMで軽く実証していて、一貫したものを感じました。
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<目次>
はじめに
第1章 最古のCMたち~アニメ編
第2章 最古のCMたち~実写編
第3章 今はなきCMたち
第4章 ちょっと気になるCMたち
第5章 伸びゆくニッポン産業~高度成長とCM
第6章 便利な生活
第7章 楽しい子どもたち~おもちゃ、お菓子、おまけのCM
第8章 外国と外国人
第9章 こんな映像もありました~お宝アラカルト
おわりに
<内容>
現在立命館大学アート・リサーチセンターが所蔵するアーカイブ「20世紀のテレビCMデータベース」の豊富なデータから抜粋した本(もちろん、本なので動画はない)。CMは昔から興味があり、協会で賞を取ったCMのDVDを買ったほどだ。授業でもちょっとだけ生かしている(もっと生かしたいが、なかなかうまい手を思いつかない)。有名なCMの話はないが、この本はそういうヒントも隠されている気がする。